【感想・ネタバレ】宇宙【そら】へ 上のレビュー

あらすじ

第二次大戦後、巨大隕石落下により環境の激変が起こると判明した。かくして人類は生き残りをかけて宇宙開発に乗り出すことに。星々を目指す女性パイロットたちを描く改変歴史/宇宙開発SF

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Posted by ブクログ

ネタバレ

そもそもこの本が目に留まったのはタイトル『宇宙(そら)へ』
竹宮惠子の絵が、ダ・カーポの歌声が、瞬時にして脳内で再生されたわけよ。
『地球(テラ)へ…』
よく考えたら、方向逆だけどね。


巨大隕石が地球に落下。
地球に到達するまで気づけなかったの?
ミサイルか何かで隕石のルートを変更させるとか、粉々にするとか、できなかったの?
って思ったのですが、舞台は1950年代のアメリカなのでした。
つまりアポロ計画の前なのです。

IBM(つまりコンピュータ)がないわけではないのですが、巨大すぎるしそもそも使える人がほとんどいない状況で、難しい計算は、人が計算尺を使って計算していた時代です。
でも、隕石落下の影響で、地球は数年寒波に覆われたあと、人類が生きていけない程の温暖化に見舞われることが計算で明らかになり、人類は宇宙を目指すことになる。

ここで、1950年代が効いてくる。
この時代のアメリカは、人種差別、男女差別がまかり通るというか、一体何の問題が?ってな時代だ。
避難民が運ばれてくる飛行機から次々に降りてくるのは白人ばかり。
作品中には出てこなかったが、津波が起こったということは、海沿い川沿いの低湿地帯にしか居住を認められていなかった南部の黒人たちは、真っ先に流されていっただろう。

主人公は元従軍パイロットであるにもかかわらず、宇宙への移住に先立つロケットに乗り込むことができない。
女性が宇宙飛行士?ダメ、ダメ。
女は非力だし、知能も男より低いし、何よりヒステリーだから。
という、男性側のヒステリックな論調により。

主人公はロケットの軌道を計算するかたわら、女性にもチャンスを!と声をあげるのだけど、彼女にも問題がある。
幼いころから優秀だった彼女は、飛び級をするたびに男性たちから嫌がらせを受けたり無視されたり心無い言葉を浴びせられたりし続けた。
だから、人前に立つと震えが来て、吐き気がする。
精神科の受診を進められるが、「私は病気ではない!」と頑なに受診を拒み続けるのもまた、現在の読者の目から見たら病的である。
でも、そういう時代だったんだよね。

航空ショーを見た少女たちは、主人公・エルマに憧れ、女性でもパイロットに、宇宙飛行士に、博士になれるのだと夢を語る。
そんな少女たちの後押しもあって、エルマたちは女性も宇宙飛行士にさせろと運動する。
「だって、移住した先の宇宙で子どもを産むのは女なのよ」

ところが、宇宙なんぞに関わるまえに被災地の復興が大事じゃないかという声も高まりつつあり、不穏な空気のまま下巻に続く。

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2022年07月22日

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