【感想・ネタバレ】つくられた格差~不公平税制が生んだ所得の不平等~のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

30代男性
アメリカ大統領選挙を再来月に控える現在、コロナ渦の株価高騰で格差が生じているとされていて、その実情を知るために読みました。
アメリカの税制の歴史や著書が調査した各年収に対する現在の実際の税率、そして格差を是正するための提案が記載されている。
どの年収でもほぼ同等の税率であり、さらに富裕層は幾分低い結果に、読み間違えかと思うほど驚いた。ぜひ日本版があれば読んでみたい。

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2020年09月27日

Posted by ブクログ

格差の原因は、税制にあり。
この切り口ほぼ一本で、深く深く掘り下げる。お陰で物凄く良くわかった。

議論のスタートは、トランプ大統領の演説。自身が税金を支払っていないことを認め、それを追求する声に対し、自らが賢いからだと返した。アメリカ社会は、富裕層が税金を支払わないのは当然となっている。結果、大統領候補がそれを堂々と認め、対立候補も明確な解決策を打ち出せない。

金持ちはあの手この手で、税金から逃れている。
その印象は、ボンヤリあるが、具体的にはよくわからなかった。
少しずつ明らかになる。勘違いをしていた。

元々、アメリカは民主主義国ではおそらく世界一累進性の高い税制を導入していたのだという。1930年代には富裕層の最高限界税率が90%だった。1970年頃が50%前後、2017年は21%と下がってきた。所得税の累進性が高かった理由は複数ある。まずは第一次世界大戦による不当利得行為を防止したいという狙い。南北戦争中も、戦争を利用した不当利得行為により多くの人が大金を手にしていた。こうした成金が再び現れるのを防ぐため、対戦中は超過利潤税が課された。これは当初軍需産業のみを対象にしていた。さらに、アメリカで累進課税が台頭したのは、戦時状況の結果というだけではなく、1880年代から90年代にかけて始まった思想的、政治的変化が関係している。アメリカがヨーロッパのように不平等化するのを拒否する人々は増えつつあった。

最も大きな理由。アメリカは所得税に対して100%近い最高限界税率を採用したのは、格差を縮小するためであって、税収を確保するためではなかった。つまり1百万ドル以上超えた所得が没収されてしまうなら、1百万以上の給与契約は結ばれなくなる。故に、給与の上限が設定される。

では、なぜこれが崩れたのか、だ。

数十年にわたり超高額所得に90%もの税率を課していたアメリカの政府が1980年代半ばになって、なぜ28%の方が望ましいと考えるようになったのか。この歴史的な方針転換には、レーガンを大統領選挙勝利に導いた政治的な変化が関係していると本著は言う。1986年の税制改革法。累進課税が大幅に後退するパターンとして、まずは租税回避が爆発的に増え、政府が富裕層への課税は無理だと諦める。そして税率を引き下げざるを得ない状態になるというプロセスだ。

租税回避するから、税率を下げざるを得ない。
しかし、それを取り締まる法律はそれなりに機能していた。レーガン以降、急速に租税が機能しなくなっていく。

税率が低く、会社法の適用がゆるい場所に外国同族持ち株会社を設立する、国外にペーパーカンパニーを設立し、株式や債券の所有権をそこに移すような租税回避に対して、政府はすぐに法律を改正し、この行為を違法とした。また1937年からはアメリカ人が所有する外国同族持ち株会社が得た所得はそのままアメリカで課税されることになった。同様に1960年代には事前寄付が課税控除の対象になると言うことから、私立財団を運営する租税会費が増えた。これも1969年の税制改革法により自己取引行為が厳しい取り締まりの対象になったため、私立財団の数が1968年から1970年には80%も減少した。

1981年のレーガンによる就任演説で、課税は窃盗だ、租税回避は、道徳的な行為だとも発言した。自由主義のアメリカには、確かに儲けたものが儲けを獲得できる社会の方がイメージに合う気もするまた、現在の国際協調は、この非民主的な租税競争の問題に取り組んでいないばかりか、それを正当化しているところに根本的な問題がある。租税回避や脱税をそそのかすのは、納税者ではなく、租税回避産業である。租税回避が横行する背景には、租税回避サービスの爆発的増加がある。また、現行法には抜け穴が無数にある。

世界全体で抜け穴を塞がねば、幾らでも漏出してしまう所に難しさがある。そんなに稼いでどうするのだ、と思うし、大衆層が一定程度の生活水準を確保できなければ、大衆層が形成するはずの娯楽を、富裕層も享受できないと思うが。

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2024年05月16日

Posted by ブクログ

この本は、タックスヘイブンの説明や、大企業、超富裕層がどうやって貯蓄をどんどん増加させていくのかを分かりやすく説明してくれている。
そして、このタックスヘイブンも富裕層に有利な税制も、政治家に働きかける能力・知恵(いわゆるレントシーキング)であるとか、税制の抜け穴を提供するノウハウを持つ税理士や大手会計事務所の存在であるとかが機能した結果であるので、超富裕層の力をまざまざと見せつける感じでもある。
この本は、後半はかなりのページを格差を縮小させるための処方箋・改善案が書かれているようだ。
本書にある多国籍企業・超富裕層に有利な現税制を改善する対案に関してはおそらく、賛否両論だと思われる。
いずれにせよこの対案を元に日本でも議論してみる価値はあると思うし、この対象読者には政策立案に関わる人や政治家などもぜひ読んでみてほしい。

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2023年10月19日

Posted by ブクログ

内容としては一貫して税金の話。今の税制が如何に富裕層に向けられて作られているのかを数値(グラフ)で見せつけてくれます。
資本主義が行き過ぎた現代において、資本家は特別強大な富を保有するに至り、その結果として政治においても発言力が強まり、彼らにとって有利な税制になっています。
「所得」に対する全税金比率は富裕層の方がすでに低くなっています。低所得者は所得に対して高い税率のためさらに困窮し、富裕層は低い税率で痛くもかゆくもなく資産は守られ、殖産が加速していく実態に驚愕。
タックスヘイブンが問題だと分かっていても抜本的な対策を取れないのも、富を集中させる資本家たちが強くなってしまったせい。

個人的には、昨今の資本家に対する超累進的な課税、または富裕税の議論には一歩引いた立場でいたのですが、これだけの不都合な事実を見せられ、資本家に富が集まることで労働階級に富が降り注ぐというトリクルダウンは、日本においてもすでにアベノミクスで妄想・煙に巻く虚言でしかないことが実証されているので、社会保障を充実させ、一度リセットする方向で進められるのであれば、現代における唯一の解決策なのだと思うようになりました。
ただ、そのためには、正しく税金が使われていることを監視すること、そういう政治を選択することが国民の義務として多くの人に理解してもらう必要がありますが。

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2021年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【感想】
軽い気持ちで手に取ったら、税制について無知の自分には少し難しかった。しかし、視覚的にわかりやすいグラフが豊富にあり非常に読みごたえはあった。

読破して、富裕税の導入はアリだと思った。これがどこの国でも(導入している国もあるかもしれないが)導入されていないのは利権だけなのか?何か重大な課題があるのでは?とも感じたが...。
育休も幼稚園もないなんて、日本に生まれてよかったとつくづく実感。

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2021年02月14日

Posted by ブクログ

アメリカの税制と貧富格差が主題。
21世紀現在において、人口の上位0.1%が富の20%以上を占めており、格差が広がっている。その原因として著者は政府による富の再分配、つまりは徴税方式に問題があると提言している。労働者階級と資本家階級ではそもそも収入の得方に違いがある。労働者階級は給与所得や消費税などによって、所得のほとんどが控除なしに課税対象になるのに対して、富裕層は利益収受、配当、サービスの消費など非課税の対象となる要素からの比率が高い。したがって、いくら累進課税が導入されていたとはいえ、富裕層は逃れる道が多くある。実際、超富裕層の所得のうち課税対象は40%程にしかならない。

法人税の減少にも大きな問題がある。以前は40%近い税率であった法人税も現在は20%少々。これはアメリカに限らず、世界中で法人税の下限競争が起こっている。なぜだろうか?多国籍企業への忖度である。社会にお金を生み、雇用を創出する企業は国にとっての原動力であるため、どこの国もその基盤が強い方がもちろん好ましい。税率を限りなく下げて活動基盤にしてもらえば、企業も国もウィンウィンである。そして、その株主などはタックスヘイブンとしてさらに租税回避をすることができる。

富の集中は権力の集中になることが民主政治においては当然問題される。あらゆる手段によって低減税率を得た富裕層は政治権力との結びつきもおこり、さらにその悪循環がおこる。

では、どうすればよいのか。
それを、本書の後半でじっくり解説している。
疲れたのでこの辺で。

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2020年09月20日

Posted by ブクログ

ピケティの先生である著書が書いた本で、経済についての知識がほとんどない私が読むとピケティが言っていることと何が違うのかよくわからなかったけれど、超富裕層になればなるほど課税額が少ない現状があるのだと知った。

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2022年01月14日

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