あらすじ
織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼。
戦国時代を駆け抜けた6人の真の姿を描き切る。
『天地明察』『光圀伝』と傑作を残してきた著者の、新たな代表作。
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Posted by ブクログ
目次
・覇舞謡(はぶよう)―織田信長
・五宝の矛(ほこ)―上杉謙信
・純白(しろ)き鬼札―明智光秀
・燃ゆる病葉(わくらば)―大谷吉継
・真紅(しんく)の米―小早川秀秋
・黄金児(おうごんじ)―豊臣秀頼
すっきりと短い文章がリズミカルに続き、とても読みやすいのだが、逆に文章がつるつると滑り、血は沸かず、肉踊ることがない。
どの主人公も同じ論理を内包し、一人それを抱えて戦に向かう姿には顔がない。
よくできた講釈を聞かされたようで面白くはあったが、心が震えるまではいかなかった。
冲方丁ってこういう文章を書く人だったかなあ。
隠しテーマである『道』にとらわれ過ぎたのではないか。
戦の要は道である。
軍団を素早く安全に運ぶための道は、物資を運ぶ道となり、その道を通って人が集まり、集落ができる。
戦の先を見据えた武将たちの物語。
元々は講談社の歴史アンソロジー企画「決戦!」シリーズとして書かれたものを、一冊にまとめたのが本作。
ばらばらの短編をつなぐのが、『道』ということなのだが…。
この中では、本能寺の変を扱った「純白き鬼札」が面白かった、
そう、本能寺の変の時、光秀は当時でいうともう老将なのだった。
見たいものだけを見、見たくないものを避けて信長に付き従った10年。
齋藤道三亡き後頼った朝倉氏を見捨て、将軍家をも切り捨てて従った信長に自身の老いを突きつけられた時、光秀は何を考えたのか。
これがしみじみ理解できる年齢に私もなったということか。
Posted by ブクログ
明智光秀の話がお気に入りです。お話の構成が巧みで、ミステリーを読んでいるかのような爽快感がありました。
本能寺の変を前にして、明智光秀が過去を振り返ります。
一切ハゲてないのに日常的にハゲ呼ばわりされたこと、過酷な環境で超大変な任務を任され苦労したこと、仏教施設でジェノサイドを命じられたこと、近頃信長の子供たちばかりひいきされるようになってきたこと、重要な戦から外されて手柄をあげにくくなってきたこと。
果たして、一体どの要素が謀反への決定的なトリガーとなったのか。何が光秀をここまで駆り立てたのか…。
ラストで明らかになる光秀の激情と、炎上する本能寺がとても美しいと思いました。
教科書で習った「三日天下」だと、秀吉に美味しいとこどりされた哀れな光秀という印象でしたが、本書を読むと大分かわりますね。
信長に「もうお前とは同じチームで遊んでやらねぇよ」と言われた。だから遊び仲間から対戦相手にシフトチェンジした。そんな風に読めました。