【感想・ネタバレ】年月のあしおと(下)のレビュー

あらすじ

文芸評論家となる切っかけとなった「洪水以後」入社前後から、小説を書き始めた頃の滝田樗陰との出会い、尾崎士郎、宇野千代との大森馬込時代、関東大震災後の市井の不穏、プロレタリア文学抬頭期の本郷菊富士ホテル周辺、畏友・宇野浩二の病、芥川龍之介の自殺、葛西善蔵の死、父・柳浪の他界など、自伝的要素を加えた屈指の文壇回想録。野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作品。正篇上下2巻完結。

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Posted by ブクログ

文アルに出てくる人の本読んでみようシリーズ。著者の自伝的文壇回顧録の下巻。
こちらでは文芸評論家になるきっかけや、小説を書き始めた頃の話。そして広津和郎の周りに広がる人間関係などが多く書かれている。
文アルに登場する人もしない人もいるが、たくさんの作家の他、芸術家、出版関係者の名前が出てきて驚く。様々な人が東京近郊に住んでいて、もちつもたれつの時代だったんだなと感じた。ちょっと絵を描いてみたら思いがけず売れたりして嬉しい小説家たち、みたいなエピソードにほっこりしたり、菊池寛の喧嘩っ早さや直木三十五のネジの外れた人間像などが伝聞も織り交ぜながら生き生きと書かれていて面白く感じた。
ただ、関東大震災に関連した出来事や、朋友・宇野浩二の精神病。芥川龍之介、そして父・柳浪の死など、時代としても文壇としても、そして広津和郎個人としても影が落ちる話もある。解説も合わせて読むと、軽快さも重苦しさも経験しながら、それでも明治大正昭和と生き抜いてきた著者の感性が見えてくる。
また、この『年月のあしおと』は、文芸雑誌「群像」に2年半弱連載されたものだそうだが、さらに3年弱続いた『続 年月のあしおと』もあるらしい。読んでみたい。

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2023年05月22日

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