あらすじ
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ヘンな動物の代表格・カモノハシ。
関西のicocaカードのキャラクターでもあり、巷ではけっこうな人気者。
そのわりになぜだか情報が少ない・・・。
理由はいたって簡単。
原産地オーストラリア以外で全く飼育されていないので、現地に行かないと観察できないから。
このおかげで、人気のある動物なのに類書が全くない状況。
専門書を除くと世界的にもオーストラリアに数冊あるのみという惨状。。。
一体カモノハシはどんな動物なのだろう?
カモノハシはどうやって進化してきたの?
そんなカモノハシの不思議に、気鋭のカモノハシ研究家がぐっと迫る。
謎多きカモノハシ、その魅力にぜひふれてほしい。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
哺乳類の歯の研究が主で、幼少の頃からカモノハシを愛して止まない研究者がカモノハシについての本を出版されました。おそらく、国内では唯一のカモノハシ研究書でしょう。こういった詳細な本を待っていました。カモノハシの記述といえば「卵を産む哺乳類」でありせいぜい「単孔類という分類」くらいしか記述されない珍獣です。その詳しい生態については子ども向けの本では得られず。この本はカモノハシの祖先にあたるオブドゥロドンとの生態や歯の構造比較により、カモノハシは進化の過程で歯を失い、代わりに嘴の感覚器官を進化させたという研究成果を出した素晴らしい内容でした。それのみならず、カモノハシにまつわる人類史も記述したまさに「博物誌」。どこをとっても浅原先生のカモノハシ愛が感じられます。先生自作のカモノハシイラストも(Too fatかもしれないけど)お上手でかわいい。なかなかお目にかかれない珍獣ですが、もし会えた際には「正しいカモノハシの持ち方」を思い出し、接したいと思います。
Posted by ブクログ
哺乳類でありながら卵を産むという,特別に変わり種。
しかも,哺乳類にしては珍しく,毒を持っている。
とても独特だが,見た目は地味で,人目につかないように生きている。
こんなカモノハシに魅せられた著者が,形態学・生態学から,哺乳類の進化との関わり,そして人間とカモノハシの関わり合いまで,広く熱く語ったもの。
カモノハシ好きには垂涎の一冊。
そして,カモノハシのことをあまり知らない多くの人には,ぜひ読んでカモノハシ好きになってもらいたい一冊。
Posted by ブクログ
本屋で手にとって開いたところ、著者の先生が子供の頃に作ったというカモノハシ便箋が目に入りました。これは良い本に違いないという直感で購入しましたが、間違いなかったです。
カモノハシの驚きの生態と形態の解説、進化史における位置づけ、化石単孔類、ヒトとの関わりや文化史などなど、テーマが多岐に渡っていて飽きません。
著者の先生の個人的なお話も、とても含蓄に富んだもので、豊かな読後感が味わえます。
先生の描くユルいイラストもかわいいですね。
Posted by ブクログ
カモノハシという生き物を通じて、哺乳類の進化の歴史や分類学という学問について、環境保護などについて解説されている端々ににじむ著者のユーモアが楽しい
お子様にもおすすめできると思う
Posted by ブクログ
くちばしがあって、毛皮ももっていて、みずかきがある、哺乳類と爬虫類の特徴をもったエキゾチックな動物、カモノハシの本。
英語も”duckbill”、あひる+くちばし(他にも呼び方ははあるようでしたが)。ハシビロコウは Shoebillでしたか。くちばしめだちますもんね。両方とも。
研究的な面だけでなく、文化史的な面や現在の保護活動など多角的な観点での記載があります。
哺乳類なのに、卵を産む、毒を持つ、電気を受信して餌を探すなど摩訶不思議な性質はもちろんのこと、脂肪の40%は尻尾にあり、「カモノハシ取り扱い方法のガイドライン」に、その尻尾を持って逆さづりにするのが正しい持ち方など知識が満載です。
カモノハシを研究する意義は、哺乳類の進化を歴史を知ることにつながる、と書かれていましたが、純粋に面白いから、でいいのではないかと思います。こういった基礎研究が好きにできるような環境に日本がなることを切に願いますね。
Posted by ブクログ
カモノハシをご存知だろうか。
大きなくちばし、櫂のような尻尾、水かきのある足。
独特な風貌は、水鳥とビーバーをつなぎ合わせたようにも見える。
変わっているのは見た目だけではない。
カモノハシは哺乳類ではあるが卵を産む。尿や糞、卵を1つの穴から出す単孔目の仲間である。単孔目にはカモノハシの仲間のほか、ハリモグラが現存するのみである。
本書はまるごと、そのカモノハシを紹介する1冊である。日本語で書かれた最初の「カモノハシ本」とのこと。
著者はカモノハシ好きが高じて研究者となった。カモノハシや哺乳類の進化、特に頭骨や歯の形の変遷が専門である。
カモノハシの生物学的な話から、カモノハシの先祖にあたる化石単孔類の研究や著者の研究者人生のお話まで、カモノハシをディープに知る1冊となっている。
哺乳類でありながら、卵を産み排泄孔が1つである(=鳥類や爬虫類に似た性質)というカモノハシについて考えることは、すなわち、哺乳類全体の進化を考えることである。
子育てはいつから行われてきたのか。母乳を与える系はどのように発展してきたのか。胎盤はいつできたのか。体毛や恒温性はどの時点で獲得されたのか。
そうした「境界」となる事象を考えるうえで、カモノハシは格好の対象となるわけだ。
著者は特に頭骨や歯の形を元に、哺乳類の進化を考察する。これらは化石として残っていて研究しやすいという利点もあるのだろう。
爬虫類と異なる哺乳類の特徴の1つは咀嚼をすることであり、一般にはそれに適した臼歯を持つ。だがカモノハシは咀嚼をするのに臼歯を持たない。祖先は臼歯を持っているのになくしてしまったのだ。どうやら、採餌にあたり、くちばしの感覚器官を発達させるために、歯のスペースが限られていったということのようなのだが、このあたりの仮説の立て方、検証の仕方がこの分野の研究を垣間見させておもしろい。
後半はカモノハシ研究全般の歴史について。
カモノハシの生息域はオーストラリアやタスマニアに限られる。彼らがどのように発見され、受難の歴史を経て、今に至るのか。カモノハシ切り口の近現代史がなかなか読ませる。
その他、オスにしかないという蹴爪の毒の話や、動物園でのカモノハシ飼育の苦労、カモノハシ保護活動など、1種の動物からこれほど多様な世界が広がるのか、と楽しく読ませる。
まさにカモノハシの「博物誌」!