あらすじ
多くの死傷者を出し、アニメ界のみならず日本社会に大きな損失をもたらした「京アニ事件」。この事件は何を露わにしたのか。アニメ史の専門家が独自の観点から分析する。
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Posted by ブクログ
事件自体は痛ましいもので言葉にならない。著者も哀悼の意を評しながら、状況を整理してくれている点にはありがたく思う。事件についてだけに留まらず、第3章京アニがどんな会社なのか、第4章アニメ関連の過去の事件、実名報道について、第5章スタジオ跡地について、原画の保管についてなど、周辺の事情についても触れられている点が価値があると思う。
Posted by ブクログ
事件の経過を追った本だが、客観的に経過が書かれており分かりやすかった。京アニが日本のアニメ史の中でどのような役割を持っていたのかもニワカの自分にも分かりやすく書かれていて興味深い。
マスコミや世間と「オタク」の対立構造を煽りたがっているのは誰なのか、それをする事でどんな得があるのか。そういった点からも興味深い本だった。
Posted by ブクログ
大学の先生が書いた本は感情が排除されたものが多く、また、事実か著者の考えなのか読み取れるようになっているのでとても読みやすく理解しやすい。
戦後最大の大量殺人となった京アニ事件。その内容や経緯など多角的に知ることができた。京アニ自体のこともたくさん書いてあり、同社の起りを知ることができたのは良かった。
Posted by ブクログ
2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件について、アニメーション史研究者の立場から総括した書。事件の展開過程のみならず、京アニの業界における特異な立ち位置(地方を本拠とする、正規雇用原則による長期の人材育成システム、「家族主義」など)、実名公表是非を含む報道倫理をめぐる議論、過去のアニメ関連の刑事事件の影響など、論点は多岐にわたる(ただし犯人については慎重に分析・言及を避けている)。京アニが他社に比べて従来から「秘密主義」であり、事件後も厳しい「箝口令」を敷いているという指摘や、事件時にアニメ関係者や専門家がメディアで沈黙しがちだったのは、「宮崎勤事件」以来のメディア不信が影響しているという指摘は珍しい。京アニ作品の「内容」を語る者は多いが、作品を成立させている「条件」「構造」を歴史的経緯を踏まえて語ることのできる者は少なく、本書はその数少ない例と言える。
なお本書では、仕上(彩色)の下請会社から元請になり「ブランド」に発展したのは「他に例がない」(p.87)としているが、「ブランド」かどうかはともかく、仕上専門の下請から元請になった会社は他にもスタジオディーンやシャフトがあり(創業時期も近い)、正確な記述ではない。京アニの「特殊性」を歴史的・構造的に分析するためには、東映アニメーションや虫プロダクションなどよりも、起源の近いこれらとの比較が必要となろう。