あらすじ
これからの企業・組織の盛衰は「デジタル人材」が握っている!
「with コロナ」を生き抜く人事戦略の決定版、待望の刊行
SAP、サイバーエージェント、コニカミノルタ、大日本印刷など主要企業の事例を紹介
日本企業は経営・事業のグローバル化や低成長経済下における事業構造改革の各局面において、抜本的な人材マネジメントモデル変革を先送りしてきた。その結果、IT やデジタルに限らず優秀人材の獲得・リテンションについては、グローバルIT プラットフォーマーや魅力的な仕事を提供する国内スタートアップ企業に対しても大きく劣後する結果となってしまった。
本書は、デジタル時代を迎え、日本企業が立ち向かうべき、人事・人材マネジメントの変革を先進企業の取り組み事例を交えながら紹介をしていく。日本型人材マネジメントモデルを維持してきた日本企業が、今後デジタル化を進める上でどのように人事・人材マネジメントモデル変革を進めていくのかを、コンサルティングの経験も交えて示していきたい。
20 ~30 年間その会社でキャリアを重ねないと一人前と見なされない、といったような日本型マネジメントモデルはあらゆる業種・業界におけるグローバル競争において苦戦を強いられている日本企業の状況と無縁ではない。逆に言えば、デジタル時代の到来はこれまで日本企業が何度も挑戦し跳ね返されて来た日本型人材マネジメントモデル変革の絶好の機会となる。今こそ、人事・人材問題を先送りした過去の経営からは決別すべきである。(序章より抜粋)
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Posted by ブクログ
端的に言えば「デジタル人材」は以下の理由から、日本型の人材戦略とオペレーションシステムでは到底管理できないタイプの人材であるからである。
▶デジタル人材は専門人材であり、ゼネラリスト型育成は不適合である
▶デジタル人材には外部市場価値が存在するため、「長期決済型の賃金システム」は適用しにくい
▶デジタル人材は会社都合で異動や職種変更できる「無制限社員」ではない
デジタル時代に求められるミドルリーダー像
・デジタル人材とビジネス人材をマネジメントできるスキル
・デジタルビジネス特有のスピード感を持って意思決定できるスキル
サイバーエージェントでは、子会社社長でなくともITエンジニアとビジネス人材を一緒にまとめてマネジメントするスキルが必要となる。その理由は、同社の組織体系そのものがエンジニアとビジネス人材を混在させた体系となっているからである(図表3-23)。
多くの企業では、デジタル系の人材は「デジタル開発事業部」や「DX推進部」あるいは「情報システム部門」等、一つの組織にまとめられ、その他の部署にビジネス系の人材がいるという構造をとっているケースが多い。しかし同社ではプロダクト・サービスベースでの組織体制を採用しているため、必然的に同じ組織の中にフロント営業を行うビジネス系の人材と実際にデジタルやITでモノづくりをするITエンジニアが共存することとなる。これらの組織をマネジメントするのは、ビジネス系の人材の場合もあれば、ITエンジニアの場合もある。これは創業当初から藤田社長が意識して行ってきた組織編制ではないかと石田氏は推測する。
同社はインターネット広告事業会社として設立されたが、スマートフォンの普及をきっかけにスマホ向けサービス事業の開発にもいち早く舵を切った。その企業転換の際には、スマホ向けサービスを100個作る、というようなハイスピードでの新規事業開発が行われたが、このように、ITエンジニアとビジネス人材が「ワンチーム」となった事業推進が効果を発揮した。
技術人事本部による横串機能
一つの組織の中にITエンジニアとビジネス人材が混在しており、組織長がそのどちらかの出身であった場合には、チームメンバーの全員に対して適切な評価や処遇が行えるかという問題が出てくる。そのための工夫として、同社ではITの技術・スキルを熟知する「技術人事本部」が横串機能を果たしている20(図表3-24)。
現場の組織長も評価を行うが、ITエンジニアに対しては、この技術人事本部も加わって専門スキル・知識的な視点からも各メンバーの評価を行う。評価の際には、スキルベースで各職種を1~21のグレードに分けたジョブグレードを基にしながら、技術・スキルだけでなく、チームにどの程度貢献したかという組織貢献等の側面も合わせて評価を行っている。
このようなジョブグレードも技術人事本部によって、市場動向に合わせてアップデートされる。具体的には、技術の専門性に長けた技術人事本部が、そのときどきに合わせた市場価値や動向を適切にくみ取り、どのような人材が今のサイバーエージェントに必要かという予測をしながら、エンジニアの採用から育成までを一気通貫で行えるよう、綿密な計画を立てている。
改正労働契約法に基づき、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約は、このルールが適用され、有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申し込みをした場合、無期労働契約が成立するというものである。無期転換=いわゆる正社員の制度を適用しなければならない、と言う法律はないが、有期雇用契約の形で獲得した人材については5年を超過した場合の対応について、事前に検討しておく必要がある。
一方、機能や事業、役割を細分化する弊害も存在する。機能や事業、役割を分け、責任に応じた能力の発揮や成果を明確にすればするほど、個々人は自分の責任範囲のみにコミットメントが集中してしまう傾向にある。いわゆるサイロ化(タコツボ化)と呼ばれる現象であり、他の部門との連携や協力が少なくなり、部署長が優秀社員の転出に抵抗するようになるなど、組織ごとに個別最適視点が強化されてしまう。
デジタル化の推進は組織ごとの専門性を高める可能性があり、このことは、こ記のサイロ化をさらに促進しその結果、個別最適視点はさらに強まっていくだろう。
Posted by ブクログ
現在、もっとも流動性の高い職種が「デジタル人材」ではないだろうか?
ここ2~3年で、勤める会社にも取引先にも、「○○で△△やっていた」という人材が、“鳴り物入り”で転職してくることが増えた。。
流動性が高く、賃金水準も(、そして気位も高い)デジタル人材をどう処遇していくべきか、組織づくりをしていくべきか、を考えるうえで役に立つのが本書だ。
人材のタイプ、雇用制度の作り方、組織のあり方、人材配置、モチベーションの与え方といった、デジタル人材に関わるさまざまな論点を体系的に整理している。
たぶん、一つの正解はなくて、本書にあるようなケースから取捨選択して、自社や部門に最適な形を選んでいくしかないのだろう。
納得感があったのが、「マネジメント側は、有期雇用契約社員との対話の中で常に『本人の興味関心を満たせる仕事が付与できているか』『退屈していないか』等を考察する必要がある」というくだり。
ちょっと前に、優秀な派遣のデジタル人材がやめちゃったのも、たぶんモチベーションが下がったから。
人材という意味では、非正規の社員も同じだ。急にやめたりがしやすい分だけ、事業上のリスクにもなり得る。
今や非正規の人に頼らざるを得ない構造になっている会社は多い。正社員ばかりに偏った人材マネジメントの考え方、議論を改めるべきだろう。
ただ、最も変わらなきゃいけないのは、DX、DXと旗を振りつつ「なんでもいいからデジタル買って来い!」とばかりに指令を発する会社の偉い人たち(SDGsでも同様のことが起こっているとか 笑)。
デジタル人材の話す専門用語に圧倒され、おかしな人材を採用してしまったり、どうみても無理なプロジェクトを進めてしまったり。
少しは自分でデジタルツールでも試してみればいいのに。。。