【感想・ネタバレ】天の魚 ―続・苦海浄土―のレビュー

あらすじ

「苦海浄土」に続き、魂の詩人・石牟礼道子が、生死のあわいにある人々へむけて綴った、現代の鎮魂の記。――豊饒なる不知火海から、天の水と天の魚を奪い生活を破壊し、やがて20数年にわたって人間の命を破壊しさった、世紀の受難というべき水俣公害。ついにチッソと直接交渉を実現、解体する日常との闘いが残された患者漁民の観たものは何か? 「東京の空の美しゅうございました……」は、誰でも望む言葉であって、誰でも云えない言葉になった。80年代の日本の現実、必読の一冊。

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Posted by ブクログ

水俣病の被害を直接訴えるため、東京丸の内のチッソ本社に赴いた川本輝夫たちの行動を追い、チッソとの交渉の様子を克明に記しています。

『苦界浄土』にくらべると、患者たちの苦しみとその活動の困難さを、いい意味でも悪い意味でもジャーナリスティックな側面が強い印象を受けました。もちろん著者は、どこまでも川本たちに寄り添う観点に立って、彼らの活動の実情をていねいにえがいているのですが、水俣病をめぐるさまざまな立場からの働きかけが錯綜している状況についても触れざるをえず、そのことがこうした印象をあたえる原因になっているのかもしれません。

あるいは、病と世間の無理解に苦しめられてきた患者たちの時間の長さとくらべて、本書でえがかれている過程が限定されていることが、上述の印象につながっているのでしょうか。

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2021年02月03日

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