あらすじ
1937年の大晦日。25歳の本好きな秘書ケイティは、下宿先のルームメイトのイヴとともに繰りだしたグレニッチ・ヴィレッジのバーで、完璧な服装と振る舞いの若き銀行員ティンカーと出会い、友達になる。この一夜が、3人を上流階級へと導く1年間の幕開けとなる──ウィットと教養に溢れた会話、ディケンズ、ソロー、クリスティーといった往年の作家の名作、20代の万能感と残酷な喪失……夢に向かって登ってゆく者たちの青春のきらめきをすべて詰め込んだ1冊。
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Posted by ブクログ
世界恐慌や第二次世界大戦といった歴史的出来事の影響を受けた1930年代のニューヨークが舞台。
現代とはかけ離れた世界の中で(煌びやかであり貧しくもある)、人々がどんな考えをもち、暮らしを営んでいたのか垣間見ることができて、面白かった。
育った環境や性格の違う登場人物たちが下す、人生の選択。イヴの性格に憧れ、ティンカーの人生に共感した。
Posted by ブクログ
前に読んだ『モスクワの伯爵』と同じ作者。『賢者たちの街』の方がデビュー作だけど、自分はデビュー作の方が好きかも。
装丁といい、主人公が上流社会にお邪魔するところが『グレート・ギャツビー』ぽいと思ったけど、それみたく作中モヤモヤすることはほぼなかった気がする。
ヒロインは周りの玉の輿を狙うDreamy Girlsとは一線を画した自立系女子。『モスクワの伯爵』の伯爵同様、どんな相手の言葉も知的にかわし、スマッシュもばっちり決める。上流社会を垣間見る時も(驚いただろうけどそれを顔にも文章にも出さず)読書家の彼女らしい豊かな表現で、冷然と観察している。
友達に一人は欲しいタイプ。自立系女子は今でも男性に人気っぽいから作中の男性陣(ボンボンたち)が追いかけたくなるのも納得できる。
手をそこまで伸ばさなくともイヴみたくチャンスを簡単に勝ち取れたであろうに、傍から見ると回くどくも見えるやり方で彼女なりの幸せを見出そうとする。
実際に開催された写真展にフィクションの人物を置いて始まりの舞台にしたのにも面白みを感じたけど、何か伏線があるのかな?と余計なことを考えていた。
度重なる出会いと別れで人生の機微を味わった自立系女子が冒頭の‘66年ではどのような成熟を見せているのか。結末に直結する類の伏線は(恐らく)なかったけど、彼女の生き方と写真展での反応が全てを物語っていたのかなと今になって思う。