あらすじ
『帰ってきたヒトラー』の著者が6年の沈黙を破ってついに発表した小説。数年後の欧州を舞台に、押し寄せる難民と国境を閉じるドイツ。何が、なぜ起こるのか、満を持して問う問題作。
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Posted by ブクログ
難民、政治家、ドイツのテレビクルー、ジャーナリストなど、様々な立場の人間の視点で描かれているところが面白かった。
難民を被害者や弱者に仕立て上げ、遠く離れた所からドラマを見るように傍観する、全てのふつうの人たちに向けた痛烈なメッセージを感じた。
ドラマを仕立て上げるのはメディアだとしても、それ望んでいるのは世間なのだから。
難民もこの小説では単なる被害者として描かれてはいない。この小説に出てくるどの立場の人間も、究極的に最終的には自分のことしか考えていない。
それがすなわち自分も含めて人間の本質なのだと思う。読んでる間中何度も「どうしょうもないじゃん」「そうするしかないよね」と脱力してしまった。
傍観していた「他人事」が、ゆっくり時間をかけて自分の生活圏に近づいてくる恐怖。
本国ドイツの読者とはまた感じ方は異なると思いますが、クライマックスがどうなってしまうのかというハラハラ感と共に、あらゆる立場の人々にシンクロしながら読み進めることによって、新たな視点を獲得したり、人間の普遍性を感じたりできる作品だと思った。
Posted by ブクログ
ドイツのドキュメンタリー番組「苦界に天使」がキッカケとなり、天使ナデシュを先頭に15万人の難民達がドイツに向けて行軍を始めた。
この一文だけ見ると、ナニソレ?ってなる。
けれど、15万人が「出来うる限り安全に」歩き続ける方法に関しては、可能かどうか検証して欲しいほど面白くはあったんだけど。どうかな。
食事と行軍ペース、排泄物や出産。当たり前だけど、収入がなければ一日だって保たないわけで。
軍隊とかって、どんな風に補給してるんだろう。
それはともかく。
他の国にとっては、こんな規模の集団、例えば殺すにしたって手間がかかる。そんなわけで自国の難民のオマケ付きで、どんどん通す通す……。
そうしてドイツとしても黙ってられない。
しょーもないドキュメンタリーのせいで、国に15万人の難民が押し寄せることになったとな。
もちろん国内に、彼らを匿う土地などない。国民からも暴動が起きる。
かくなる上は、壁を築くべし。
大挙した難民たちは開かぬ壁に押し寄せる。
そして。地獄の業火に全て焼き尽くされた。
終わり。
15万人の難民も、その旅の終わりも。
救いがあれば良いというもんじゃない、だけども。
いつだって、大いなる力を身勝手に振りかざされるのは弱者なのかよ。
苦い。苦すぎる。
より良き未来を望むことが、人間にとって「当たり前」になることは、あるのだろうか?