あらすじ
『帰ってきたヒトラー』の著者が6年の沈黙を破ってついに発表した小説。数年後の欧州を舞台に、押し寄せる難民と国境を閉じるドイツ。何が、なぜ起こるのか、満を持して問う問題作。
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Posted by ブクログ
難民、政治家、ドイツのテレビクルー、ジャーナリストなど、様々な立場の人間の視点で描かれているところが面白かった。
難民を被害者や弱者に仕立て上げ、遠く離れた所からドラマを見るように傍観する、全てのふつうの人たちに向けた痛烈なメッセージを感じた。
ドラマを仕立て上げるのはメディアだとしても、それ望んでいるのは世間なのだから。
難民もこの小説では単なる被害者として描かれてはいない。この小説に出てくるどの立場の人間も、究極的に最終的には自分のことしか考えていない。
それがすなわち自分も含めて人間の本質なのだと思う。読んでる間中何度も「どうしょうもないじゃん」「そうするしかないよね」と脱力してしまった。
傍観していた「他人事」が、ゆっくり時間をかけて自分の生活圏に近づいてくる恐怖。
本国ドイツの読者とはまた感じ方は異なると思いますが、クライマックスがどうなってしまうのかというハラハラ感と共に、あらゆる立場の人々にシンクロしながら読み進めることによって、新たな視点を獲得したり、人間の普遍性を感じたりできる作品だと思った。