あらすじ
ちょっとだけ背中をおしてくれる物語。
学校で友だちとケンカしたのをきっかけに登校できなくなった美桜里。
祖母に連れられていった町内会の「手作り市」でカレーのキッチンカーを出していたおじさんと少年に出会う。ユニークな二人と、すっかり意気投合してカレー作りを手伝うことに。この二人も訳ありのようだ。
対人関係では、人との距離感がとても重要だが、いつでも“イーブン”でありたい、そのためにはどうしたらよいのかを問う、少女たちの成長物語。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
DV、女性被害、離婚や虐待やトラウマなどの複雑な環境や過去など難しい題材が散りばめられていて、考えさせられる。でも重くなりすぎず、読みやすいストーリー。
主人公の美桜里は友達のある行動や言葉に傷ついて不登校で、論理論破気質のママがうっとおしいと思っていた。けれどある日キッチンカーを手伝うトムに出会って話すようになって、視野も心の器も少し広くなって、話すこと・話を聞くこと・尊重することの大切さに気づくー。美桜里が変わっていママとの関係も良い方向に向かうのがよかった。
感情に流されず言葉にする努力って大切だと思う本。
Posted by ブクログ
日野美桜里(みおり)、中学1年生、両親は離婚して今は母と二人暮らし。学校では友達とのあるいさかいから不登校になっている。お母さんは、学校カウンセラーの仕事をしていて、さらに苦しんでいる女性の助けになる活動を始めたりして毎日忙しい。理屈っぽいところもあるけど、美桜里を小さな子ども扱いしない。
お父さんとは時々会って話をする。
物語冒頭から、母の留守の時に空き巣が入った。美桜里が一人でいるのは危ないという事で、学校に行かない代わりに昼間はおばあちゃん家にいく事になった。
そこで、おばあちゃんの友達の、貴夫ちゃんというおじさんと16歳の登夢(トム)という少年がやっているキッチンカーを手伝う事になった。テーブル設定、カレーの仕込み、仕事をしながら、トムは美桜里の話を聞き、相談に乗ってくれた。
トムも学校には行っていない。今はキッチンカーの仕事をしながら、高校卒業の資格を取るため勉強している。好きな事を見つけて、知りたい事ややりたい事をして、いろんな人と出会う。貴夫ちゃんからの受け売りと言いつつ美桜里にアドバイスしてくれる。イーブン、自分のことを話てから、相手の話を対等に聞くやり方で。
美桜里の両親の離婚の原因、父親のDV。それは母親の合理的で理屈っぽい物言いや忙しさからきていた。今も、美桜里と母とのギスギスした感じが、トムからのイーブンで話すというやり方を試してみて、少しづつ、母と話せるようになってきた。
そして定期的に会う父とも話をしていくうちに、母も父も、それぞれが自分のことを語ってくれるようになっていく。
中学1年生にしては、美桜里はしっかりした考えを持っているように見えて、幼い所もある。物語が進む中で、美桜里とトムだけでなく、大人達の過去が今につながっていることがわかる。
そして、主人公達が、話を聞き、自ら語り、話し合って、前に進む姿がいい。重いテーマを扱っているけど、希望が持てる物語。