【感想・ネタバレ】天地に燦たりのレビュー

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ネタバレ

豊臣秀吉が天下を取り、朝鮮出兵を行った頃。朝鮮国の卑賤の身である明鐘、島津に属する武士である大野久高、琉球国の商人(密偵)である真市のそれぞれが、朝鮮出兵での倭と朝鮮・大明との戦争、そしてその後の倭・琉球との戦争に巻き込まれていく。それぞれの文化や思想に触れながら、人として生きるとはどういうことかを儒学思想をベースに描いていく。

卑賤の身でありながら、幼い頃から良い師の元で儒学を学び、そして己の身分や触れる文化が目まぐるしく変わっていくが、全て自ら選び取ってきた明鐘。常に侵略する側として人の上に立ちながら、国や家の方針に従い、人を殺し続けてきた久高。この二人の心理の対比が面白い。
また、王とは、礼とは、人とは、生きるとは何かを、侵略をする側・される側という舞台装置の中で描いたのも、登場人物たちの心情や葛藤が分かりやすく、見事。

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2021年08月12日

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物語は、薩摩の島津家が豊後の大友家との争いを制して九州全土を傘下に収めようかというような時期から起こる。九州での戦乱は豊臣秀吉の「鎮西入り」で収束する。そして朝鮮出兵の凄惨な戦いが在り、豊臣秀吉が薨去して収束する。やがて関ヶ原合戦を経て徳川家康が天下を取るが、薩摩の島津家は琉球国へ侵攻する。そういう1580年代後半から1600年代頃が物語の背景だ。
そして物語は、1580年代後半から1600年代頃を各々の地で生きている3人の主要視点人物を据えている。
1人は薩摩に在る。島津家の重臣ということになる、樺山家の次男で大野家に婿養子に入った経過が在る大野七郎久高である。
もう1人は朝鮮国に在る。被差別身分に生まれたが、小さな出会いを契機に儒学を学ぶことになる若者の明鐘(めいしょう)である。
更に1人は琉球国に在る。外交や通商のために、情報収集を行う役目に就く王府の官人ということになる若者の真市(まいち)である。
打ち続く戦乱という時代に「人と禽獣とを分かつのは何か?」と3人の主人公は各々に模索し、行き当たるのは「礼」という概念である。
若年の頃は書物に親しんだ他方で、武功を競い続けた侍大将の久高。被差別身分に生まれた不条理の中で、人として在りたいと学ぶ明鐘。古くから大切にされている価値を大切にしながら、方々の現実に向き合おうとする感の真市。そんな3人が“時代”の中で邂逅することとなる。
表紙イラストの「守禮之邦」の額が掲げられた門へ至るまでの物語ということになってしまうかもしれないが、壮大な舞台背景であり、凄絶な戦いが活写され、3人の主要視点人物達が各々に気付き、変わる様の物語は非常に興味深い。

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2020年06月30日

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章立てがコンパクトであり、小さな話のまとまりで読み切りやすい。これは現代的な読み手への工夫か。ややあらすじの先を読みやすい印象

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2023年11月12日

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守礼之邦。理想を掲げた国づくりがその通りにいかないのは、いつの世も同じと改めて思わされた。久高の男気、明鐘の生きる力に魅了されたが、この物語は真市たち琉球の人々が主人公だと思った。

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2022年07月31日

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清々しいエンディングだった。
それぞれの生を必死に生きた3人の心の共鳴を感じた。
著者はこれが初作で2作目が直木賞を取った「熱源」と知って驚き、その才能の今後を楽しみに感じた。

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2022年07月14日

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熱源で川越さんのファンになり読んでみた。

琉球王国、朝鮮、日本の歴史が重なり、
それぞれの視点から自国に対する思いや攻める国に対する怒りが伝わってくる。

漢語がでてきて難しい部分もあり、読み進めるのにちょっと苦労はしたものの、それぞれの視点が交互に入ってくるため面白く読み進められた。
礼を知ることが人であり、日本は禽獣。礼をテーマに戦を読んだのは初めてだったと思う。

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2021年06月12日

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薩摩と朝鮮と琉球。この三者を礼という儒教視点からこう描くことができるのかと感嘆した。確かに侵略される朝鮮や琉球王朝から見れば、薩摩を含めた倭(日本)の武士はただの禽獣。実力主義の戦国時代から武断の江戸時代への変遷を知っているとこの視点は非常に示唆的で興味深い。

琉球の謝名親方の言葉、戦に敗けても国は亡びぬ。国が亡ぶのは民が国を厭うた時だという言葉は非常に印象的。高橋克彦氏の『炎立つ』での藤原泰衡の、民が忘れぬ限り蝦夷は滅びないといった言葉を思い出した。歴史が過去から紡がれるものだということを改めて思い出された。

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2021年01月03日

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「熱源」で直木賞をとった作者の第一作ということで手にとった。面白い。参考文献18冊を元にして史実を交えながら、想像上の人物を加えて、戦いの場面、種々の人物が相対する緊迫する場面等、楽しく読めた。主人公は、武士道を求める島津の家老武士と、朝鮮の若き儒学者と、明国に冊封を受けて貿易で生きる礼の国の沖縄の密偵。時代は秀吉の朝鮮出兵時。3者の異なった生き様が面白かった。孟子のことば『人は覇の力ではなく王の徳に服す』、および『天地に参たり(天地と並び立つ崇高な人としての存在)』という問いかけは、答えがあるような無いような、余韻を持った終わり方だった。

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2020年12月10日

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「熱源」の著者である川越宗一氏のデビュー作。戦国~江戸時代にかけて、豊臣秀吉の朝鮮出兵を島津、朝鮮、琉球それぞれの場所で生まれ育った三人の視点で描いた歴史小説。
朝鮮人からの視点での文禄、慶長の役を描くというのがまず斬新だし、薩摩の島津と琉球王国の関係も非常に興味深かった。
島津家家臣の樺山久高、朝鮮の名もなき白丁である明鍾、琉球の官人である真市、同時代を生きた3人の人生が交錯するラストが痺れる。

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2020年10月26日

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豊臣秀吉の朝鮮出兵により侵略の嵐が吹き荒れる東アジアを舞台に、儒教思想をテーマにした歴史小説。
↑ 『解説』より… 丸パクリです(笑)

んーー難しかった〜。
始めは…完読できるのか?とも思った。
何とか完読しました。

難しすぎて読んでる時は★3ぐらいだなーって
思ってましたが…
最後の章でグラグラと感動でございます。
読んでよかった〜、読めてよかった〜。

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2020年09月11日

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最後の描写には心を打たれた。
表紙はどの描写なのかと考えながら読んでいたが、最後の描写やったんか。
戦乱が止まない時代、何が正義で何が悪か分からない。
そんな時代だからこそ「礼」が異なった価値観をなんとか繋ぎ、禽獣を人にする。
主人公の久高と明鍾。
2人は最悪の出会い方をしたが、真市がいてこそ、最後違う形で再会出来たと思う。 
一瞬の再会だろうこの後3人は別々の道をゆくだろう。久高は史実によると地頭となる。他の2人は実在者では無いが、おそらく明鍾は朝鮮の故郷に戻り、真市は琉球王国の官人を続ける。だが、3人の心の中の何かは必ず変わった。
特に明鍾は出会いに恵まれている。

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2020年09月02日

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「熱源」で直木賞を受賞した作家・川越宗一氏のデビュー作にして松本清張賞受賞作。日本、朝鮮、琉球。東アジア三か国を舞台に、侵略する者、される者それぞれの矜持を見事に描き切る歴史大作。

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2020年07月10日

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 「熱源」で直木賞を受賞した著者のデビュー作。
 豊臣秀吉の島津征伐から、文禄・慶長の役、琉球侵攻までの戦乱を、三人の視点から描く。


 島津の家臣、樺山久高は儒学を学びながらも、戦乱の世では学は意味がなく、人は禽獣と変わらないと考えていた。
 そして、戦乱の世に身をやつしていた


 朝鮮の被差別階層、白丁の明鐘はあるきっかけで儒学者の下で学を学ぶことになる。
 白丁の出自でありながら儒学により聖人を志す。

 真市は商人を装い、倭にも朝鮮にも足を運ぶ海の民たる琉球の密偵だった。
 大国の間で琉球が生き残るため、飄々とした性格の裏には強烈な愛国心があった。

 戦で敗ける者と、勝つ者。
 敗ければ全てを失うのに、礼を失っては人ではなくなる。
 
 天地に参たる人として、禽獣と分つものは礼である。
 礼を主題に置き、一時代を違う国で生きた三人の視点の違いを描く。


 文禄・慶長の役は「星夜航行」で、琉球侵攻は「テンペスト」で予習したので、歴史小説を読んでおくと、いつか別の作品での理解が深まる。
 
 本作品では、それぞれの戦乱を詳しく描くというよりは、戦乱の中での人の生き方を三人の視点を通して描くことに主眼が置かれている。

 ラストシーン、今まで敵同士だったが三人が一堂に会したとき、戦の勝ち負けを越えたものを感じた。

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2020年06月28日

Posted by ブクログ

沖縄に行きたくなる!
旧時代の真ん中に生きていた人たちは、時代の変わり目で頭の中の変換を求められるので、大変だよね。

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2024年05月19日

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秀吉の唐入りが物語の舞台となる。

主人公は島津の武将【樺山久高】、靴作りの仕事に着く朝鮮国被差別階級の青年【明鐘】、琉球国の密偵【真市】

この三人の話が順番に回り次第に絡まり合っていく事になる。


秀吉の朝鮮出兵について考えさせられた。
太閤立志伝に感心するものがあったとしても、大義無き侵略戦争について日本人はもう少し考えるべきだと思う。併せて秀吉を英傑、偉人として扱う事は控えるべきかと思う。

琉球には良い言葉が沢山あるなぁと思った。島津に侵略されてしまったが良き風土の良き人達のいる国でした。

島津家は中ぐらいの暴力を持ち合わせ、秀吉という暴力の頂点に屈服させられた。どちらにも正義は無い。

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2020年10月12日

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