あらすじ
何たることだろうか。
私は確実に退行しているのだった。
(中略)
奈緒が童話を読み、女の豊かさの象徴とも言える大きな乳房で
私のモノを愛撫するようになってから、自分はさらに退行していった。
――本文より
音楽プロデューサーの塩原達也はバツイチ独身の五十歳。
良き友人となった前妻と、セックスを愉しむ関係の人妻の愛人がいたが、
ある日、「母親の行方を探している」と奈緒という女性が突然訪ねてくる。
二十九歳の彼女と出会い、急速に惹かれていく塩原。やがて関係を迫る彼に対し、
奈緒が望む性愛の形は変わったものだったが、徐々に甘美な毒にとらわれていく――。
“禁断の純愛小説”問題作が文庫化!
解説 村山由佳
※この電子書籍は2017年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
村山由佳さんが解説していたように、読み初めと読後では印象の違う物語になっていました。
作中に出てくる、女性は男性の持つ少年と言うか子供の部分を感覚として理解してしまう。というのはよくわかります。
男性というのはどこかしら母性を求めている部分があるようで、心を許している、または許してもいいと思える相手に対して、内側を素直に晒してしまった時、その少年が現れるのだと思います。
奈緒という女性は、現代において本当に居るのかどうかわからない感覚を持っていますが。
全てにおいて理解できないというわけでもありません。
自分の中にある母性を相手に対して現すことで、自らの存在意義を見出しているのでしょう。
ただ、彼女が翔大くんの父親と、この先本当にうまくやっていけるのかが疑問です・・・。
翔大くんはいつまでも子供のままではありませんから、子供が成長していくにつれ、二人の関係が変化していく事は否めないでしょう。
そういった中で、彼女の男性に対する想いがどう変化するかで、二人の関係が終わるか続くか決まる気がします。