【感想・ネタバレ】果てしなき輝きの果てにのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年12月09日

麻薬ビジネスの横行するペンシルベニア州ケンジントン地区では、クスリを手にする金を求めて路上で身売りする女も数多。
この地区のパトロール警官ミカエラは妹のキャシーをこの界隈でよく見かけときには連行する場に居合わせることも。
そんな日常の中、商売女ばかりを狙った連続殺人事件が発生し、ミカエラは次は妹の番...続きを読むなのではと身を案じる。

幼少期に育まれた姉妹の絆の消失と再生、幼い息子トーマスとミカエラで奮闘する母子家庭の苦悩と希望。
犯人を突き止めるミステリというよりは、家族の物語の色が強い。

姉と妹の気持ちが次第に離れていく様、純粋無垢な少年の素直さと大人の勝手な都合が招く不条理なシチュエーションがたまらなく切なく、読むのが辛くなることすらあったが、その湧き上がる感情こそが読書の醍醐味。

いやあ、そこはかとなく心を昂らせる描写がうまい。
読み応えありました。

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Posted by ブクログ 2020年10月13日

ドラッグ、セックス、腐敗警察という語りつくされた感のあるミステリの題材ではある。けれども、古都フィラデルフィアの荒凉たる街をパトロールする毎日を過ごし、自身の苦悩を抱え込みながらシングルマザーとして幼い息子を育てている主人公の懸命な努力がつぶさに描かれている。過保護なまでの育児の裏の真実が徐々に明か...続きを読むされていく過程は痛々しくもあるが、やがて静かな感動を呼ぶ。

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Posted by ブクログ 2020年07月13日

 暗い話は苦手だという方にとっては、本書は忍耐を強いられる物語である。そもそもこの作家にとってはミステリーが初チャレンジだそうだ。これまで数作の私小説的な、あるいは社会問題をテーマにしたヒューマンな作品で評価されているようだし、ミュージシャンであり、大学の先生でもあるらしい。多くの顔を持つ作家の初の...続きを読むミステリー・デビューということである。

 ヒロインのミカエラはフィラデルフィア市警24分署のパトロール警官である。ある日、通報によりリ、連続殺人事件の被害者である若い娼婦の遺体に遭遇する。パトロール警官の身には、捜査権限という点で相当のハンディを抱えているばかりか、捜査状況の進捗すらまともに読み取れない立場なので、ミステリーとしての物語をこの書がどのように進めてゆけるのかなと要らぬ心配で頭をいっぱいにしながら、読者としてのぼくはミカエラとその妹ケイシーの物語へと導かれる。

 ミカエラの独白は語る。そのケイシーが薬物中毒で娼婦へと身に落としているかもしれないこと。そしてここのところ街から姿を消し行方不明になっていること。連続殺人事件の被害者として未発見の遺体と化している恐ろしい状況を、姉は心配するのだ。

 本書の主人公は二人の姉妹で、彼らの恵まれない現在と過去を行き来しつつ、ミカエラは一人称で語る。現在にも過去にも、冷たくて意地悪で逆境を作り出しているかのような人物がいて、ミカエルは苦しみながら、ケイシーの行方だけに心を捉われゆく。

 もう一つの主人公はここフィラデルフィアの最も荒れ果てた街ケンジントンだと言っていいだろう。犯罪の横行する、貧しく荒んだ街を流れるデラウェア川を、示したような原題"Long Bright River"は、一方では姉妹たちの、どうにもならない宿命を表しているかにも見える。

 薬物被害の横行する街、遺伝的に依存症傾向のある(とミカエラが信じる)彼ら一族の血、依存症の女性から生まれる新生児のダメージと、そこから救われるための苦しみ、依存症患者へのヘイトに満ちた社会の眼差し等々を見ていると、本書はストレートな社会派小説であるとも見える。

 それでいて、姉妹の隠されていた秘密、連続殺人の意外な犯人像、などなど、ミステリーとしての驚愕に満ちた仕掛けもしっかり用意されてる、ある意味とても精緻で完璧な作品でもある。

 読中、ヒロインの悲劇につきあうのはとても苦しい体験なのだが、果てしなき輝きの果てにミカエラが見つけ出すものを知るところまで是非、このいたいけなヒロインにおつきあい頂きたい。この作品の素晴らしさを必ず感じ取れる時が必ず来ると信じて。

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Posted by ブクログ 2020年06月25日

妹を探すパトロール警官のミッキー。薬物、売春が当たり前のようにあるなかで小さな手がかりから追う。そのなかで見えてくる問題。薬物、貧困、犯罪。そこで生活すること、子供を持つこと。社会問題を見せつつ物語は進む。姉妹の関係性や複雑な感情、子育てや家族のこと。生きていかなきゃいけない孤独とともにあるわずかな...続きを読むでも確かな幸福。とても印象的な作品。

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Posted by ブクログ 2021年12月20日

全米の平均数値以上の犯罪率を持つフィラデルフィア。婦人警官ミッキーの語りで広がって行く家族絵図・・とりわけ実妹ケイシーとの軋轢~生い立ちから現在までの語りと状況が軸となり7割ほどが進んでいく。
酷似の内容の繰り返しは過去と現在をない交ぜにしており、泡立ち、潰れて又 泡がというエピソードは正直倦んでく...続きを読むる。

後半の100頁、それまでの経緯をなぞるかのような出来事があたかも追認作業の様に雪崩の様にどっどっと。そこからは面白みが高まり、もの悲しい地域性が背景となった薄暗さにほのかな光が点滅、そして肝心のサスペンスの部分が解決へと運ばれる。

薬物依存、廃屋が立ち並ぶ風景と薬を買うお金欲しさからたむろする街娼、小競り合いの果ての暴力・・

4作目となる筆者、30歳代後半と脂が乗り切った当作は家族、孤独、それをひっくるめての縁をシンプルながらも抑えた筆致でダイナミックに謳い上げている。

当作でも語られるミッキーの出自のオブライエン家の血を語る中で「プホワイト」との近接的な色彩を感じさせられた。

内包された蜜柑を覆う皮・・一袋ごとは種々のコンテンツ~仕事・セックスと恋愛・家族(何世代も繋がって)・同僚との軋轢と友情・妹の仕事仲間も含めた地域社会の繋がり等々ともするとごった煮になりそうな些事をムーアが「伝えたい」と願うメッセカラー(皮)で包含しきった秀作、快作だった。

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Posted by ブクログ 2021年06月08日

複雑な家庭環境で育ち、自らもシングルマザーであるフィラデルフィアの女性パトロール警官ミッキー。ドラッグ中毒の妹探しと連続女性絞殺事件を追うのだが…。パトロール手順とか捜査方法とかがwireや BOSCHで見たのと全然違うぞっていう違和感があり、本当に危なっかしく、なおかつ心配した通りの最悪の状況に陥...続きを読むったりする。根っからのネガティヴ思考と心配性と若干の浅はかさ、おそらく警官にはもっとも向かないタイプではないか。
それはともかくリーダビリティのある物語、時折発する息子トーマスの発言、一族の物語、フィラデルフィアの荒廃した街の雰囲気と蔓延するドラッグなど魅力的な要素とリアリティはたっぷり。警官辞めちゃったのはいいけど、この物語は続くのかな。そしてよみたいかなぁ、と言う感じ。3.6

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Posted by ブクログ 2021年05月12日

感情のプラスマイナスで言うと、ずっとマイナス側の感情で読んでいて辛いんだけど、ありがちな展開から微妙に逸れたストーリー展開に、次第にページをめくる手が止まらなくなった。

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Posted by ブクログ 2020年12月28日

”本の雑誌”年間ランキングから。”ザリガニの~”と双璧をなす、的な批評がなされていたから、同作を楽しんだ身としては、こちらも是非ということで。結果、個人的には”ザリガニ”の方が好きでした。動的要素は本作の方が大きくて、エンタメ的盛り上がりはこちらが勝るんだけど、独創性とか結末の意外性はザリに軍配。も...続きを読むちろん本作も、そのボリュームに関わらず、かなり一気呵成に読み進められたし、求心力はたっぷりでしたが。

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Posted by ブクログ 2020年07月27日

フィラデルフィアを舞台に女性巡査が主役の警察小説。TVドラマの「コールドケース」と同じ街。短く的を得た文体。リアルな表現。まさに映像の世界まんまの描写で1ページ目で夢中になった。売春に、ドラッグ、救いようのない街で幼い子を抱え音信不通の妹を探す主人公。ミスリードのあらしあらしで、ミステリーは思わぬ方...続きを読む向に。この著者は好きかも。サイモンはおとがめなしなのが嫌だ。

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Posted by ブクログ 2023年01月31日

貧困、麻薬、シングルマザー、失踪が大きな流れ。
警官が犯人である連続殺人はミステリーである本書の主要では無い。
悲しみと後悔、可能性を秘めた小さな救いがこの本の全体に流れている。
楽しめたが貧困描写に量を当て過ぎてだらけてしまう。

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Posted by ブクログ 2020年11月12日

現地を知らない私には、ちょっと読みにくかったかなあ。
最近のアメリカの小説の特徴なのか、物語の流れにあまり関係しない場面の細かな描写が多いように感じました。現地の様子を良く知っているアメリカの人たちには、物語のディテールがより味わえるのではないかとは思うのですが、そこまでアメリカを知らない身には上手...続きを読むく整理してもらえた方がストーリーを楽しめたような気がします。
また、女性の主人公は、とんでもない苦労人だとは思うのですが、言動は好みではなかった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年07月25日

警察小説。女性のパトロール警官が主人公。
とてもよくできていて面白いのだが、家族(特に姉妹)、地域、子育て、貧困とドラッグ、もちろん犯人探しと警察内部の問題…他、著者初のミステリ作品にありがちな盛り込み過ぎで疲れる問題が。

ケンジントンと言っても、フィラデルフィアの地域の名前で、アメリカの今を描い...続きを読むているので、アメリカ好きな方にはオススメかな。

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