あらすじ
“善良な”犯人たちの完全犯罪に隠された綻びを、福家警部補はひとり具に拾いあげながら真相を手繰り寄せていく――。未踏峰への夢を息子に託す初老の登山家・狩義之は、後援の中止を提言してきた不動産会社の相談役を撲殺、登り慣れた山で偽装工作を図る(「未完の頂上」)。動物をこよなく愛するペットショップ経営者・佐々千尋は、悪徳ブリーダーとして名を馳せる血の繋がらない弟が許せず、遂には殺害を決意する(「幸福の代償」)。――ふたりの犯人を追い詰める、福家警部補の決めの一手は。「刑事コロンボ」の系譜に連なる倒叙形式の本格ミステリ、シリーズ初の中編二編からなる第四集。/解説=西上心太
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倒叙ミステリーの傑作です。
短編が多いですが、今回は、
・未完の頂上
・幸福の代償
の中編の2編です。
短編より、じっくり読めますね。
福家警部補と接した事件関係者が、彼女の一言で前向きになって行くのは良いですね。
読んでいて、ほんわかします。
Posted by ブクログ
大倉崇裕さんの『福家警部補』シリーズ第4作。最初に第5作『福家警部補の考察』を読んだが、第4作は倒叙ミステリとして文句なしに面白い。
第4作は中編2編という構成だが、真犯人の人物像といい、動機といい、緊迫感といい、いずれも十分に長編化可能だろう。敢えて中編に留めているために、内面を見せない福家警部補のキャラクターが生きているし、切れ味も鋭い。
「未完の頂上」。息子の未踏峰挑戦を控えた著名登山家が、支援を止めるという有力スポンサーを撲殺する。登山のロマンは認めるが、山を愛する男が山で偽装工作をするとは。登山家としても経営者としても、早々に読者に見限られるだろう。
偽装工作はことごとく福家警部補に見抜かれるが、何よりも興味深いのは、真犯人の男が自らのエゴに対峙させられる展開だろう。命がけの挑戦は、成功すれば賞賛されるが…。それは誰のための挑戦か? こんな男にも、親子の情はあったか。
「幸福の代償」。動物愛護に取り組む女性が、悪質ブリーダーの義弟を殺害する。ペット業界の闇はニュースでもよく聞くが、もちろん殺していい理由にはならない。登山家の男と似たような人物と思考回路だなあという印象を受ける。
初対面時、明らかに福家警部補を見下していたのも、登山家と同じ。結局、能ある鷹は爪を隠していたことを思い知らされることになり、同じ道を辿るのだ。動物愛護活動家だけに、頭に血が上ってかっとしたのが致命的だったねえ。
2人とも芯が通った人物だし、知性もあるのに、自らの正義の名の下に、短絡的な手段に走ってしまった。他に手段はなかったのかと思ってしまうが、犯人が短絡的だからこそ、ミステリーは成り立ち、我々読者は楽しめるわけで。
本作が倒叙ミステリの傑作であることは、疑う余地がない。とりあず、第1作まで順番に遡ってみよう。新刊で福家警部補の前に強敵が現れるのも期待したい。
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いやぁ、面白い。
この福家警部補福井シリーズは、短編が多いのですが、本書に収録されているのは中編で、二つの作品になります。
作者の大倉崇裕は、元々刑事コロンボの作品が大好きだという話もありますが、この福家警部補も刑事コロンボに負けず劣らず素晴らしいですね。ちなみに、刑事コロンボでは、日本語では“警部”とされていますが、実際にはlieutenantという階級なので、日本の警察の階級に直すと警部補なんですよねぇ。
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福家警部補シリーズ第四弾。今回は中編ニ編、登山家が犯人の話とペットショップの女性店長が犯人の話。倒叙ミステリー、面白いです。さらに前作まではオタクのような博学ぶりを見せていた福家警部補が、実はアスリートとしても秀でていることが判明。ロープワークを駆使して下山したり、ボルダリングまでやっちゃいます。
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今回は初の中編集でしたが、ページ数が多いだけに後半の犯人を追い詰める過程に迫力が出ていたように感じます。事件そのものは決してインパクトがあるものではないので、プロセス重視の本シリーズにはこちらの方が合っているようです。
福家警部の警視庁内における信頼性が向上し、また素晴らしい身体能力も披露され、彼女の存在感が増すばかり。
次は長編にもチャレンジして欲しいな。
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暫くご無沙汰でした福家さん。やはり親近感をまとう敏腕刑事と再会できたのは素直に嬉しい。
事件現場での初対面では、変わらずの反応。絶対に捜査一課の刑事とは見られず、相手の質問にも素直に答えてすれ違う会話は微笑ましい定番のシーン。
「警視庁いきもの係」の須藤刑事が登場?偶然にも次に読もうと積んである1冊とのリンクがあったとは、読む楽しさが増した。
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福家警部補四作目。
いやいやいやいや。
福家警部補、オタク全開なのはいかにもだなと思っていたが、
山登りが出来て、クライミングもプロ並み?
さすがにそれはないでしょう。
「犬が怖い」のもちょっと違うかなー。
普通過ぎるというか。
登山がらみの事件の方が面白かったかな。
出逢う人々の人生を変えてしまうのは相変わらずだけど、
とうとうコーヒーメーカーを壊しちゃいましたか。
それにしても福家警部補に「腕利き」と言われる弁護士は、
どんな弁護士なんだろう。
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シリーズ第4弾。
2編とも福家警部補の意外性を楽しめる場面が描かれていて、それだけでも満足。
「未完の頂上」では驚異的な福家警部補に興奮を。
「幸福の代償」では今まで見たことがない可愛らしさに興奮を(笑)。
「未完の頂上」みたいな親子の話を読むと、子どもは親の操り人形でも親が夢を託す存在でもなく、「一人の人間・個である」てことを改めて認識する。
子どもが大人になっても弱音や本音を吐いて貰える。そんな親でいたい。
Posted by ブクログ
未踏峰への夢を息子に託す登山家が、後援を止めようとする会社の相談役を撲殺、登り慣れた山で偽装工作を図る「未完の頂上」。動物をこよなく愛するペットショップ経営者が、動物を金儲けの道具として扱うブリーダーの義弟を許せず、遂には殺害を決意する「幸福の代償」。完全犯罪を目論む“善良な”犯人ふたりを追い詰める、福家警部補の決めの一手は。
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福家警部補が益々超人化しているような気がする。
本作では、捜査にかかわる人に数々の予言めいた忠告を与える。登山の心得があり、ボルダリングの才能もある。
犬が苦手、ということを初めて知った。
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未登峰への挑戦という夢を守るため。悪質なブリーダーから動物たちを守るため。
切実さから犯行に踏み切った二人の犯人という設定が新しく、しだいに追い詰められていく犯人の心情もしっかりと描かれ、読みごたえのある1冊だった。
ただ、このシリーズ(あるいは作者の持ち味?)は短編のほうが合っているように思う。基本的には短編と構成が変わらないため、中編だと若干中だるみした印象を受けた。
Posted by ブクログ
未完の頂上(ピーク)
夢を追い続けるのも真っ直ぐ向かうのも良いけど、押し付けるのはいけない。
本人の意思を確認して、本当に行くなら応援して、不安があるなら止めて。
お前のため、は全然通じない
自分がこう思うは伝えても良いけど、一番優先されるのはあくまでも本人の気持ち
それが通じていたのが親子じゃなくて仲良しになった他人なのがショックではある…
幸福の代償
幸せとは 人によって違いすぎてそれぞれの答えしかないけど、人と動物の扱いが違いすぎるのが悲しい派には心にずーんときた。
人に疲れて、信じられなくて動物に癒しを求めたり本当に救いたいって思ってる人はたくさんいて
自分が何もしてないのに言う資格なんてないけど
たくさんの想いが読めるのがこのシリーズが好きなところ
捉われずにあくまでも仕事を真っ直ぐにする福家警部補も尊敬
見逃してあげて、って思っちゃうこともあるくらい犯人に感情移入することもあるし、犯人のことを思っていそうな描写も感じることはあるけど、あくまでも刑事としての仕事を全うする警部補はかっこいい
ただ、二岡くんは振り回されてかわいそうすぎる!
Posted by ブクログ
お約束ですが今回も
福家警部補の行動にイラッとする( ̄▽ ̄)
中編がふたつ入った文庫化です。
最初の『未完の頂上』は
犯人が自己チューな親父で
ちょっと肩入れできなかった代わりに
周囲の関係者がそれぞれ福家の言動に巻き込まれて
新しい一歩を踏み出すところがほっこりできたわ。
次の『幸福の代償』は
確かに被害者がひどいヤツですが
身代わりの犯人を仕立てたのがねぇ。
気のせいか福家も手厳しい。
単に犬嫌いの八つ当たりだったりして。
ニューフェイスのミステリもいいけど
シリーズキャラものも
安心して世界にひたれますね。
Posted by ブクログ
10月-11。3.0点。
福家警部補シリーズ。中編二編。
今回も、しつこく容疑者を訪れ、追い詰めていく。中編だけに、じわじわ追い詰めるプロセスが良かった。