あらすじ
自分の内面に目が向かうようになる青年期。誰とも違う個別性の自覚とともに、痛切な「さみしさ」が生まれてくる。わかり合える友だちを求めながらも、心の中をのぞかれることへの抵抗感や比較意識からくる不安も強い。自立へと歩み出すために、さみしさの意味を見つめなおす。
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この本はさみしさの根源にあるものに注目している。榎本博明氏のさみしさに対する考え方を文学や哲学などから考え、その根源にあるものを指摘している。
人生の在り方にも関わることが載っているので、寂しく感じていない人でも読んでみて欲しい。
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【目次】
はじめに
第1章「さみしさ」を感じるのは自立への第一歩
自分が嫌になることがある/親の言葉や態度に、なぜかイライラする/もう言いなりではいられない/秘密をもつ/わかってほしい、でも見透かされたくない/依存と自立の間で揺れる心/タテの関係からヨコの関係へ
第2章 自己の個別性への気づきがもたらす「さみしさ」
自分と向き合うことで芽生える自己意識/自分だけみんなと違うように感じる/自己の独自性の意識と孤独/自分はどこに向かっているのか/自分の人生は自分で背負っていくしかない/だれともわかり合えないさみしさ/孤独だからこそ自意識を麻痺させることも/間柄の文化の住人だからこそ切実な孤独感/幼い頃を懐かしむ心理の意味するもの/出産外傷説/胎内回帰願望
第3章 つながっていても孤独
仲間といると気が紛れる/つながっていないと不安/盛り上がった後のさみしさ/一人でいられない症候群?/社交のもつ本質的なむなしさ/一緒にいてもさみしい/道化のペルソナが外れない/社交家のさみしさ/群衆の中の孤独/SNSが助長する浅いつながり/浅いつながりの世界から脱したい
第4章 孤独だからこそ,人を切実に求める
世界からの疎外感/さみしいからこそ、人と深くつながりたい/恋愛は幻の橋かけ作業/さみしさの足りない時代?/自立に向けて突き放してくれない親/子どもを呑みこみ,自立を許さない母性/秘密をもち,反抗して,自分づくりに向かう時期
第5章 一人を持ちこたえる力
さみしさを取り戻す/一人でいられる力がないと不毛なつながりに縛られる/見捨てられ不安を克服する/強すぎる甘えを克服する/一人にならないと心の声は聞こえてこない/ときには退屈な時間を過ごすのもよい/一人でいられるのは成熟の証
おわりに
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社会の問題はこういった見方があると実効的に考えられると思う。多様化「してしまったら」心を不安にする面もある。その多様化も消費者・顧客の多様で、一市民としては心理的に、むしろ皆同じ求めをするようになっている。では、それの解消はどうしたらよいのか。大人が自己の不安を解消して、下の世代の助けになっていけたら、社会を問題社会にしている世代間断裂が薄れていくかもしれないと思った。
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「さみしさ」を肯定的に捉える思春期の生徒に伝えたこと
高校生に勧めたいと思い購入。
つい不安があると群れてしまう生徒のことがちらつく。生徒に紹介して、図書の購入希望を今年は出したい。
心理学や文学作品を援用して、不安定な思春期の心を解説していく。少し説明にくどいところもあり、読みにくいところもある。
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ちくまプリマー新書、面白い!
まさに、ここ数年の私自身の状態について書かれていた。中学生の頃の私、同年代の子よりも結構ノーテンキだったのかも…と思う。
萩原朔太郎の「さびしい人格」、改めていいな…と思います。
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現代人の弱さの一つは安易に人とのつながりを求めることかもしれない。画面上のアイコンをタップしさえすれば何らかの交友関係が始められると幻想している。その安易さは、そのまま関係解消にもそのままつながる。
他方、孤立や孤独に対しては極端に恐れる傾向にある。衝突や対立を避け、自己を相手に合わせていこうとする。そこにまたあたらたな苦しみが生まれることもある。
本書はそうした喪失感が決して無意味なものではなく、自立のための大切な段階であるということを様々な例から説明している。プリマ―新書の対象である中高生には読ませた方がいいかもしれない。
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あっさり読み切ってしまったが、改めて「さみしさ」について自問しながら考える。振り返ると、友だちはいらないとか、友達幻想というような本を読んできたが、実際、長い人生においていつでも誰かと友人関係を築けるなんて事はないのに、社会には「友情」をモチーフにした物語が多く、その刷り込みによりプレッシャーを感じたり、もしかしたら、そのせいでも「さみしさ」を感じているのかも知れない。
本書のデータではないが、友人が1人以下の60歳以上の男性の割合が57%という調査もある。より若い世代でも独身者ならば休日を一人で過ごす事も多い。周りも同様だし、無理に関係を築く必要もない。何かに所属すれば、質はどうあれ、望まなくとも人間関係はついてくるものだ。焦る必要はない。
本書は、心理学的アプローチで「さみしさ」について考えていく。
ー 親しい友だちに対する自己開示が、とくに青年期を生きる者にとってもつ意義…第一に、親しい友だちに自己開示し、相手から受容的な反応を得ることは、自信につながる。親はまったく違う人生のステージにいるが、友だちは同じような内的経験をしていることが多く、共感的なやりとりになることが多い。それによって、自分はおかしいのではないかといった不安が低減し、気持ちが安定する。第二に、親しい友だちに自己開示することは、自己への洞察につながる。自己に意識を集中したり、相手からフィードバックを受けることを通じて、今まで気づかずにいた自己の新たな面に気づいたり、もやもやしていたものがはっきりと見えてきたりする。反対に、自己開示できないでいると、非現実的な不安や妄想に脅かされることになりがちである。
ーペルソナの形成に力を入れすぎ、それとの同一視が強くなると、ペルソナはそのひとの全人格をおおってしまって、もはやその硬さと強さを変えることができなくなり、個性的な生き方がむずかしくなる。いつか、マルセル・マルソーのパントマイムを見たとき、ある男がいろいろな面をかぶって喜んでいるうち、道化の面をかぶると取れなくなってしまって困る場面の演技があった。面を取ろうと苦労して、身体はもがき苦しむが、どんなに苦しんでも、ずっと顔のほうは道化の笑い顔で、この相反するものを表現してみせるところにマルソーの演技が輝きを見せる。これは、まさに硬化したペルソナの悲劇を演じているものと感じられたのだった。こうしてみると、周囲にうまく溶け込むためにはペルソナは大事だが、ペルソナを脱ぎ捨てて本来の姿をあらわす場をもつことも必要であり、自分の出し方を調整するという意味で、適度な柔軟性をもつことが大切だとわかる。
ペルソナを外すことができず、ペルソナに同化した生き方をしていると、ときに窒息しそうな息苦しさに襲われることになりかねない。
大小はあれど、他者からの期待に応えようと我々は演技や気遣いをしている。実際には期待されていなくても、忖度して演じることさえある。その演技を含む他者への行為こそがさみしさを埋めるものなのかも知れない。
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こんなさみしさを感じるよという紹介の本
色んな所で色んな人がさみしさ感じてるというのがわかる
またそれが成長のために必要なシステムなことも説明している
親からの自立には不安と孤独、無力感が伴う
個別性の自覚:自分は誰とも異なる独自な存在、完全にはわかりあえない、人生の責任を自分で持つ
自伝的記憶、バンプ現象
人間は自意識を麻痺させるためのありとあらゆる道具を開発してきた
社交で大切なのは話されている内容ではなく話されているという事実
母性①慈しみ育てる②狂乱の情感性③冥府的な暗さ
見捨てられ不安を克服する:気にしすぎ、合わせる、疲れる
退屈は知的な面で陳腐となってしまった視点や概念への不満を育てる。
自己開示により親密な関係を築く