あらすじ
野兎やカラス、トウゴロウ、ツチクジラなど、かつて私達が享受した自然の恵みと原風景
「蓼食う虫も好き好き」。
蓼の葉や実は苦く、多くの動物は除けているが、それを好んで食べる虫もいる。
転じて「好みは人それぞれ」、「普通には食べないものを食べること」の意として使われる。
本書では「人は何をどう捕って、どう食ってきたのか」をテーマに、
野兎、鴉、トウゴロウ(カミキリムシの幼虫)、岩茸、野鴨、鮎、鰍、山椒魚、スギゴケ、スガレ(スズメバチ)、ザザ虫、イナゴなどの食材について
その狩猟採集シーンを描き、また民俗学的な考察を加える。
日本各地の猟師・漁師による手に汗握る狩猟場面や軽妙洒脱な採集場面、
さらに各食材には著者による「民俗学的考察と独断的私見」が加えられ、
自然の豊かな恵みと人間の食材への慎み深い向き合い方を考える狩猟捕獲ノンフィクション。
日本人が生きてきた歴史に触れられる史書。
■著者紹介
遠藤ケイ(えんどうけい)
1944年新潟県生まれ。長年、自然の中で手作り生活を実践しながら、民俗学をライフワークとして、日本各地や世界各国を旅して、人々の生活や労働習俗を取材している。
主な著書に、『「男の民俗学』(山と溪谷社、小学館文庫)、『熊を殺すと雨が降る』『鉄に聴け・鍛治屋列伝』(ちくま文庫)、『こども遊び大全』(新宿書房)など多数。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
令和である今でも食の現地報道として相応しい一冊でした。
単なるゲテモノ食いを紹介した本ではなく、実際に現地の人々との捕獲・調達し、"生き物とは""食とは"という考えに向き合った実録です。
文明が発達した現代でも「生きるために食う」人々のリアルが描かれています。
食うために生きるのも悪くはない気はしますが、何かにすがって生きているのではない現地人の生き様が格好良かったです。
割と流通していたり情報がある食材もあれば、縁もゆかりも無い食材や特殊な調達方法もあり、興味深く読めました。
食い散らかしの飽食文化に突き刺さる。
Posted by ブクログ
「蓼食う虫も好き好き」ということわざにちなんでつけられたタイトル。筆者は野ウサギ、岩茸、サンショウウオ、カラス、熊、トドといった動植物を食す人達について一緒に猟をし、解体し・調理して食べる。獲物を得るためのプロセスはいずれも命懸けで、そこには獲物との命の駆け引きが感じられる。そのため解体の場面の描写は生々しく、どこか厳粛な感じを受ける。
「食うために生きる」ではなく「生きるために命を頂く」行動が、飼育されたものではなく野生の動植物相手に展開される。取り上げられている食物はどれも一般的にはゲテモノの類に入ってきそうだが、貴重な命を美味しく、余すところなく頂く様に、「生きるために食う」とはどういうことかを突きつけられる。なかなか面白い本だった。