【感想・ネタバレ】私の考え(新潮新書)のレビュー

あらすじ

「人生は一回限り。人間、迷ったら本音を言うしかない」――常に冷静に、建設的な議論を求めるスタンスで言論活動を続けてきた著者が、思うままに本音を語る。「“リベラル”にも女性憎悪は潜んでいる」「『性暴力疑惑』を報じる価値」「政治家が浮気してもいい」「怖がっているだけでは戦争はわからない」「恋は本当に美しいものだから」etc. 政治について、孤独について、人生について、誠実に書きとめた思索の軌跡。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

バランスをもつこと。
冷静に伝わるよう、表現すること。
そうしたことに長けた人だと感じた。

「女性であること、自由であること」が興味深かった。
「だから#MeTooの人民裁判は終わらない」の
「どれほど罵倒され軽んじられ、べっとりとした性的な加害の欲望につつんで支配欲をおしつけられても、わずかでも反応することで相手と交信することの方が耐えられない。
それでもうちへ帰ると悔しくて、自分が汚れてしまったような気がする。記憶を払い落としたくてビールを呷っても、頭を掻きむしっても、脳裏にべっとりとくっついて離れない。そんな経験をしたことのない人たちが、人口の約半数を占めている。」(p109)
職場で起こること、上下関係、他部署、あるいは取引先との関係。そうした場では、「性的な加害の欲望」こそ、男性である自分に向けられたことを意識したことはないが、「自らの欲望・意思を通すことのため、理不尽を押し付けられる」ことは日常茶飯事だと感じる。
こうしたことに起因する悔しさに特に男女差はないのではないか。そうしたことから類推して、少なくとも、この文章が男性である自分の胸に届いたと思う。
基本的には、女性ゆえの生きづらさを強く主張されると、男性ゆえのそれはないのか、あるいは容姿、健康、年齢、貧富、才能その他もろもろの属性をどう考えるのか、どれに対するどこまでの態度表明が正当、不当であるのかなど、が気になり、ご都合主義に感じてしまう場合が多い。
しかし、三浦さんの文章にはあまりそれを感じない。
なぜなのか、もう少し考えてみたい。

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2022年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【世界について、日本について、の見方について、論じ方について】
国際政治学者の三浦瑠璃さんが2017年から「週刊新潮」で執筆していた連載エッセイをまとめた本。

・平和と戦争
平和を実現するには戦争について考え語ることは避けられない、
2012年の著書、『#シビリアンの戦争』で、著者は文民が軍の暴走を抑える、という一般論を問い直す。

現実主義、つまりそれは、物事の二面性を見ることなのだ、と改めて学びます。

「日本人はこういうジレンマを正視するのが不得意なのだろう」。

安全保障を語る人は、結論を先取りしてプロセスの議論を怠る、
民主主義を語る人は、プロセスを踏み誤るといかに危険かしか語らない、
といい、
そして議論はいつまでも平行線をたどってしまう。

平和学、という学問の名があるけれど、
Peace and Conflict Studies。

平和について研究することは、戦争について研究することでもあり、
私もつい陥りがちな理想主義や偏った考え方を省みつつ、
読み進めていました。

そして、物事の二面性は、このテーマ以外のエッセイにもちりばめられていました。

グローバルとローカル、成長と分配、という、国家主義、資本主義といった対立軸の座標。

自由と規律。
「集団行動や規律は、私たちの自由を明らかに制限してしまうが、同時に「自由」を際立たせてくれる。日常生活に張りを与え、そこで初めて非目常に意味が与えられるからだ。
だから、ほんとうの自由と規律というものは、両方とも手間暇をかけないと育たないものだと思う。」


・大学
大学無償化についてのお話も興味深かったです。
国の発展に資する大学にするには?という視点。
競争の圧力を受けているのは学校よりも進学塾だと指摘されていましたが、
無償化による影響をどうシミュレーションしているのかが気になりました。

日本では、2025年から、子ども3人以上世帯の大学・高等教育授業料を「無償化」する方針だという。
これは家計の話だけではなく、
日本の発展の話でもあることを忘れずに、議論・政策を注視していきたいと思います。


・権力の敵は笑い
「権力者は笑われるのが嫌い」だ、という。
独裁国家では、独裁者を笑うことが許されない。そんな余裕のない環境で生きることを強いられないようにしたいし、
批判するにも、抵抗するにも、権力という力に力で抗うだけではなく、力が抜けるような笑い、ユーモアを忘れないようにしたいと思いました。

「権力や戦争、革命にとって共通の敵は、笑い。笑いとは、一歩引いて世界を見る余裕の上に成り立つもので、みんなで同じ方向に突っ走るのを阻止するだけの破壊力を持っているからだ。」

著者の山猫総合研究所の名前は、宮沢賢治の寓話から借りたもの。
自分が何かを伝えたい際にも、第三者的な立場から、例え話で語ってみる視点。
自己主張でいっぱいになっているときに、忘れないようにしたいです。

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2024年06月08日

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