【感想・ネタバレ】銀河鉄道の父のレビュー

あらすじ

第158回直木賞受賞作、待望の文庫化!

『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』など数多くの傑作を残してきた宮沢賢治。
清貧なイメージで知られる彼だが、その父・政次郎の目を通して語られる彼はひと味違う。
家業の質屋は継ぎたがらず、「本を買いたい」「製飴工場をつくってみたい」など理由をつけては、政次郎に金を無心する始末。

普通の父親なら、愛想を尽かしてしまうところ。
しかし、そんなドラ息子の賢治でも、政次郎は愛想を尽かさずに、ただ見守り続ける。
その裏には、厳しくも優しい“父の愛”があった。やがて、賢治は作家としての活動を始めていくことになるが――。

天才・宮沢賢治を、父の目線から描いた究極の一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

明治版「ハロー!ちびっこモンスター」。

…いや、全然違うのですが、お父さんの悪戦苦闘ぶりがなんだか微笑ましくて連想してしまいました。共働きが当たり前になって家でも休む間もない令和の父親も大変ですが、明治・大正となるとなによりまず家長としての威厳を保たねばならず、子供かわいさとの間で密かに揺れ動く父の姿は現代人から見てほぼコメディーです。

そんな父の愛を一身に受け、宮沢賢治は人格そなわった大先生に育ち…などという事はまるで無く、嗚呼、現代の子育てがそうであるように親の心子知らず極まれりなのです。河原でボヤは起こすわ、謎の商売を始めようとたくらむわ、そのくせ金はいつも父頼み。宮沢賢治、こんなにダメな人だったのか。

父と子が本当に理解しあうのが賢治の死の淵という顛末には哀しみしかありませんが、なんとも人間味に溢れるこの父子像、他人事と思えぬ部分もあって時代を超えて共感した部分もありました。

ちなみに私、この2冊前に恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読んでいますが、順番は逆の方が良かったかも知れません。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮沢賢治の父親のお話ですが、この本を読むと、宮沢賢治の印象も変わりました。なんだかんだと甘い父親ですがそこが、またよかったです。妹や賢治の死の場面はとても涙がでました。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画で原作が気になって読んでみた。
断然原作のほうが好み。
まず父親の内面描写が丁寧で、政次郎をぐっと好きになった。
おそらく私がオッサンになっている頃合いだからというのもあるだろうけれど。
で、筆は大抵政次郎に寄っているが、三人称で、賢治にも寄る。
そこで父が知りえない生活や、内面が多少描かれるが、ここもまたぐっときて。
正確な意味で、ファザーコンプレックスと、インフェリオリティコンプレックス。
法華経がらみも、おそらく映画よりは事実に近いんだろう。
親子を描くと同時に、政次郎の父喜助と、次女シゲや次男清六の子ら(政次郎の孫)を描く。
それを、食卓の座席配置に厳密であることから、新時代の卓袱台を囲んで配置にこだわらない風潮で表現しており、すごく射程が広い。(太宰治や、「サザエさん」など連想。)
20代で亡くなった賢治や妹トシが、家父長制の時代や認知フレームワークの中に、生まれ落ち、生きて、苦悩していたのだということを、前後を示すことで強烈に照射している。
やはりトシまわりでは涙腺がゆるんで。
映画の感動路線よりむしろ小説のほうが、想像することで感情が動いた。
よかったポッドキャスト:「吾輩は文豪ラヂオ」の宮沢賢治シリーズ。

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

直木賞受賞作品。

宮沢賢治の父に焦点をあてた作品。面白くて一気読み。
この父がとても過保護。明治の父なので厳しく接しようとはしているが、子にも「隙だらけ」と思われるくらい子に甘い。息子が入院するたびに周囲の反対を押して泊まり込みで看病し、自分も罹患してしまう。

宮沢賢治については「雨ニモマケズ」の印象が強くて貧しい農民出身なのかと思い込んでいたけれど、実は実家はかなりのお金持ち。質屋で儲かったお金で何不自由なく生活できたことに対する負い目はあるのだが、その割には、その実家に金の無心をしたり、父に改宗をせまったり、妹に禁断に近い愛情をもってしまったり、「ん?思っていた人と違うな・・」とオロオロしながら読んだ。

でも破滅に向かわなかったのは、家族に愛情深く育てられたという基本的な背景があったからかもしれない。純粋で優しすぎるほどで、弱い立場の人に心を寄せて誰かの役に立ちたいと思うような性格でもある。さらに最愛の妹の死、自分の病気などを経て、生きることや死ぬことの本質を問うような作品が、あのような文体で生まれたのかもしれない。「銀河鉄道の夜」もう一回読んでみよう。

ちなみに賢治の父は賢治より長生きするが、最終的には賢治の信仰していた宗教(法華経)に改宗までしている。うーん、すごい。

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

胸を打つ渾身の父親像を政次郎に見ました。
どうしようもなく甘いけど、それだけじゃなく人物として立派で、賢治と似ている部分、似ていない部分の対比が秀逸。
幼い頃から息を引き取るまで何度も賢治の看護をしているシーンは穏やかながらも悲しさが付きまといます。涙の別れではなく、遺言を聞き取ろうと最後まで父親であり続けた様に背筋が伸びるような思いになりました。
賢治が父のようになりたくてもなれなかった葛藤も胸に刺さりました。何とか自分に出来ることで必死に生きようとしている所が、痛いほど共感出来てしまいます。
ひとつの親子の形として、完璧じゃないかと思えるお話でした!

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2024年12月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 宮沢賢治という天才がこの世に生を受け、
旅立つまでを見守り続けた父政次郎の視点で描かれた父子、家族の深い愛の物語。

 本書を読んで多くの人が宮沢賢治の人物像のギャップに驚かされたのではないだろうか?
(勝手に人格者と思い込んでただけなんたけど)
まさに私もその一人で、成績は優秀だけど、家業を手伝わせても役立たず、引きこもりで親からお金を無心したりと今でいうとニートだったなんて信じられないですね。
しかも政次郎は超が付くくらいの親バカぶり!
祖父の喜助からは「父でありすぎる」と苦言をいわれてしまうほど子煩悩。
でも、当時の父親像からすると「甘えるな、自分の力で生きてみろ」とか言われそうだけど、
政次郎は少し過保護過ぎ。
まぁ宮沢家の経済力があってこそなんだけど。
本当は喜助のように厳格でありたいと思いつつもついつい甘やかしてしまい、反省したりと息子へのあたたかくて深い父の愛情が伝わってきます。  
まるで37才の若さで逝ってしまうのが分かっているかのような愛情の注ぎぶりに感じました。

本書で一番印象的なのは、7章の「あめゆじゅ」
最愛の妹トシとのお別れのシーン。
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」
この台詞はトシが賢治にたのんだ最後のお願いで『永訣の朝』の一文。
この言葉の意味を知った後、何度も読み返し
涙腺か緩みっぱなし。

『銀河鉄道の夜』の最後にカムパネルラが「本当の幸いは一体なんだろう」という台詞があるのだけど本書を読んで何か分かったような気がします。
政次郎が賢治や家族に無償の愛を与えてくれたように賢治は読者は童で自分は政次郎のような父親と言っていた。
トシの最後の遺言にも次生まれてくるときは…
「本当の幸い」とは皆が幸せに暮らしていくことではないでしょうか。
政次郎が家族の幸せを願ったように。

 事前に銀河鉄道の夜を読んで予習したのだけど、あまり登場しなかったのが残念、というより本書を先に読んだ方が楽しめたかも。
作家や作品の背景が分かるとこんなにも重みが増すのかと改めて思い知らされた作品。
そして宮沢賢治の著書が読みたくなってしまう力のある1冊、とても素晴らしい本でした。
「ありがとうがんす」

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2025年06月24日

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