あらすじ
徹夜明けの仕事帰り、俺はビルの屋上から飛び降りてきた男となぜか目が合った。男はすぐに目の前のアスファルトの上でぐちゃぐちゃになった。警察の取り調べを受け、男の側頭部に3センチくらいの穴が開いていたと聞かされる。警察から解放された俺は、着替えを持ってきてくれた会社の同僚と地下カジノ「freeze」に繰り出すことにした。早速ルーレットへ。初日は負けたが俺はルーレットが気に入り、しばしばfreezeを訪れるようになる。300万円近く負けて俺は勝負に出た。そして預金のすべてを失った。会社にも行かず、俺は借金をしてルーレットに賭け続けた。ルーレット台にかじりつきホイールを凝視していると、突然影が落ちてきて数字の形になった。頭蓋骨から焔がこぼれ「26」という数字が見えた。一数字賭けに勝った。その後俺は家に戻らなくなった。カネは狩るものだと理解し、勝つことに徹底した。俺は賭けて、生きのびることができる。なぜなら、頭蓋骨のなかに「数」を飼っているからだ。あの男と目が合ってから……。
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Posted by ブクログ
佐藤究のデビュー作。
あまり有名ではない?し評価も高くなかったので正直あまり期待していなかった。
が、他の作品同様かなり読み応えのある作品で佐藤究作品の狂気が溢れている。
主人公が賭博にのめり込み、どんどんと狂気にまみれていくわけだが、読んでいるこちらまで頭がおかしくなるような読むドラッグのような作品。
特に後半、薬師寺やスキンヘッドの男との会話のシーンは殴られてるかのようなヘビーさとテンポ感で中弛みすることなく世界観にのめり込んだ。
特にこの作品から何かを学んだりすることは少ないかもしれない。
ただ、エンタメという観点で言えば最高にエキサイティングでスリリングなエンタメ作品だ。
Posted by ブクログ
アンク以来の、1年越しに佐藤究さんの作品を読んでみた。
この作品がデビュー作とのこと以外はほとんど何も知らない状態で読みました。
深夜3時でも新たに仕事が舞い込んでくるような、ブラックな職場で働いている主人公。
ひょんなことで同僚から裏カジノに誘われ、そこで行われている「ルーレット」に心を奪われる。
頭の中に数字が浮かび上がる能力がわかった時点では、これはギャンブルで勝負していく展開の話なのかな?!と思いきや、全然違いました。
まあひたすらに荒れ狂った世界が淡々と描かれていました。
主人公が”ギャンブル”を通じてどんどん破滅へと向かっていく姿が終わりまでひたすら続きます。
怒涛の展開!みたいなものはあまりないのですが、淡々と描かれている分「ギャンブル」というものへの恐れが、読み終わってからは増しました。
何を見せられているんだ?みたいなシーンも沢山ありましたが、人間の理解を超えた部分が少ないページ数ながら満遍なく描かれていました。
Posted by ブクログ
いずれ文庫化する「テスカトリポカ」のために過去作をぼちぼち読んでいるが、これは2005年の群像新人文学賞の優秀作らしい。
純文学の章にしてはソリッド……当時の流行りだったのか。中原昌也とか。
しかしのちの「QJKJQ」「Ank: a mirroring ape」につながる衒学はたっぷり。
そして鏡のモチーフ。
思弁的作風も、デビュー当時から。
が、どうしても「ホムンクルス」(2003~2011)を思い出してしまい、ノイズに。
安易にいえばドストエフスキー「賭博者」だが、本作のハセガワという独特の人物は一歩抜けている。
が、そうはいってもさらに村上龍を連想したりして、既視感の糸にこんがらがってしまうのだ。