あらすじ
日経1面コラム「春秋」を執筆して15年目の記者が、わずか550文字で完結するコラムをどのように構想し、どう文章化しているのか、その内幕と苦心談を綴った書。
コラム書きとしての世相の「斬り方」を明かすとともに、読後感のよい文章の書き方、社会人や学生の参考になる文章作法にもふれ、実用性も加味した文章読本的な性格も合わせ持っています。
ユニークな読みどころは第4章。向田邦子、池波正太郎、永井荷風、太宰治、阿久悠……錚々たる名文家の文章がなぜ頻繁にコラムで引用されるのか、その実例を挙げて解き明かすことで、人口に膾炙する「名文」とはいったいどういうものかが、誰にでもわかる平易な言葉で具体的に可視化されます。
本書を読むと、その日本語による「名文」の系譜に連なる新聞1面コラムをより興味深く読めるようになります。また、ちょっとした手紙を書く時などにも「使える」一冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「春秋」は好きでほとんど毎日目を通しているし、どうやってネタを決めているか、文章をどう運びどうまとめているか、苦労話や手の内など惜しげもなく披露してくれていて、それなりになるほどと思うことは多かったのだが、引き込まれるような新しい発見はなく…。そういうところも春秋的と言えば春秋的なのかもしれない…。
Posted by ブクログ
日経新聞朝刊1面のコラム「春秋」執筆15年の記者が、自ら書いた「春秋」を引きながら、体験した呻吟やコラムについてのよもやま話を語る。
一般人が知れない話として、下記の事項について、特に新鮮な興味を感じた。
1 時事批評や社会評論としての社説が「大文字」のオピニオンなら、コラムはそこからこぼれ落ちたものを拾い上げる「小文字」のオピニオン。
「理」で「説く」のではなく、「情」を入れて「語る」
2 正岡子規、薄田泣菫、藤沢周平など、過去には意外な新聞コラムの名手がいた。
3 途中で▼、▲、◆などの記号を入れることで、接続詞を省略でき、改行なしで文を連ねていける。
4 風刺、アイロニー(反語)、品のよい揶揄といった形での批判精神がコラムの命である。
5 人間の心を揺さぶる「ユーモアとペーソス」を描くことがコラムでいちばん難しい。
6 同じような語尾がないか、漢字、カタカナ用語が使われ過ぎていないかなど、「推敲」することと、時には「捨てる覚悟」が必要。
ただ、期待していた実践的な文章術の本としての記述に関しては、短く伝える、語彙力が勝負、語尾に変化をつける、辞書を引くなど、ありきたりで内容が乏しく感じ、もの足りなかった。
第5章「社会の中のコラム」については、時代情勢の反映や人の心に「刺さる」コラムという視点から書かれており、重みや含蓄があった。