あらすじ
いまでこそ消費大国となった中国だが、1990年代半ばはまだ「未知数の国」だった。商慣習の違い、根強い反日感情、モラルの欠如、大地震等の災害……大きく立ちはだかる幾多の壁。それを乗り越えていくイトーヨーカ堂社員の姿は、やがて地元の人たちの心をつかんでいく。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
日本の大手企業の海外進出、しかも中国でどう成功したかということで、興味があり、読みたかった本です。
読みはじめたら面白くて、一気に読んでしまいました。
前半は、
物が売れない赤字の苦しみ、
「いらっしゃいませ」と言う習慣がなく、人に頭を下げることをしない中国人スタッフ教育の大変さ、
言葉の壁や文化の違い、
モラルの欠如・・・
中国で奮闘したイトーヨーカ堂社員のノイローゼになりそうな過酷な日々が描かれています。
その分、売り上げが伸びてきて軌道に乗り、現地の社員が理解を示してくれた瞬間など、なんとも言えない爽快感がありました。
四川大地震のとき、周りのお店が営業をしない中、ヨーカ堂だけは営業をし、支援物資を確保したといいます。
地元に貢献し、人々の生活に無くてはならない存在になっていることに感動しました。
反日デモで、店舗のガラスが割られたときも、翌日「私はイトーヨーカ堂のファンだ。」と激励に来てくれる地元の人がいたり、今まで反発していた中国人スタッフがデモ隊が店舗に侵入するのを一生懸命抑えていたというエピソードが好きです。
とてつもない苦労をしてきたからこそ、心に浸みるものがありました。
あきらめない粘り強さと、実行力、同じ立場に立って一緒に店を作っていく、何を大切に考えるか・・・など、大事なことがたくさん詰まっている本でした。
お客さまを大切に、社員を信じて、周りに感謝することを忘れない。
商売の基本的な心構えのようなものを感じさせられました。
何より、現地で代表であるポストに付いている人たちが率先して動き、現場に立つ姿勢が素晴らしかった。
どんなときでも、「自分が責任をとるから、やっていい」と言ってくれる力強いリーダーの存在はとても大きいなと。
中国で新聞の折り込みチラシを浸透させたのは、イトーヨーカ堂だったんですね!
Posted by ブクログ
イトーヨーカ堂の中国進出~2010年までの軌跡を追う、迫真のルポルタージュ。
社内の人間が書いたのではないかと思わせるような、生々しいエピソードに満ち、
中国ビジネス(特に現地社員の扱い)の難しさを垣間見ることができる内容。
特に印象的な論点は以下の3点。
①日本のプロ(≒日本のビジネスモデル)が現地で通用しない
日本のビジネスモデル(自社から取引先までを含む)が高度に組織化される中、
日本のプロはそのモデルにある種「過剰適応」している部分があり、
中国という異なるフィールドでは、必ずしもその能力を発揮できた訳ではない。
最終的には、自社のビジネスモデルの本質にまで遡り、その本質に、
中国仕様の枝葉を整備し、解を見つけるのは、流石イトーヨーカ堂社員といった印象。
・POSシステム
現地:1元の靴下なら、色が違ってもサイズが異なっても同じ商品コード
当初:単品管理ができなければイトーヨーカ堂のビジネスができない
解答:POSはビジネスの手段、まずは売上が管理できれば良し
(取引先まで含めてバーコードによる単品管理が浸透するのに2年)
②中国事業の成功要因は「日本人が頑張ったが一番」
日本人スタッフは、単なるサラリーマンという意識がない。
ゼロから会社作りに関わっているという参画意識、経営意識があった。
そして、イトーヨーカ堂流の流通業を中国に植え付け、
中国流通業の歴史を変えるという高い志があった。(P339)
③どこまでの現地化(人材/ビジネスモデル)を進めるべきか
他の外資が中国のビジネスモデル(≒現地パートナー)を尊重しつつ、
マネジメント面でグリップを効かす手法を取るのに対し、
イトーヨーカ堂は、あくまで自社のビジネスモデルの浸透を狙う。
最終的には、他社の追随を許さないビジネスモデルにまで昇華させるが、
当初はそれが原因でスタートダッシュで大きく躓く。
(人材育成&定着、取引先開拓など)
成功した美談として、非常に感動の深いものになっているものの、
そうした手法が果たして他の会社でも「正解」だったかどうかは議論が分かれそう。