【感想・ネタバレ】障害者差別を問いなおすのレビュー

あらすじ

「差別はいけないこと」だというのは当たり前の感覚である。しかし、なにが差別かを考えだすと、その答えは曖昧なものになりがちだ。多様性が叫ばれる一方で、実際にはマイノリティへの不寛容な価値観が噴出するなか、あらためて障害者差別に向き合う必要がある。過去と現在をつなぎ、何が差別とされてきたのか、そして対していかに異議を唱えたか。その過程は人間の尊厳に迫ることになるだろう。

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Posted by ブクログ

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ツイッター(現X)でおすすめされてたのをきっかけに読んだのだけど、とても面白かった。
障害者差別の話だから、青い芝の会の話はあるだろうなと思ってたら全部青い芝の会の話だった。

体を張ったすごい運動をしたことは知ってたけど、行動綱領や理念などはちゃんと知らなかった。障害者本人の視点から語られる差別、本当にまったくそんなこと考えもしなかった!みたいなことばかりだった。
例えば、障害児の子育てに疲弊した親が子供を殺してしまった時、その親にばかり同情が集まり、殺された障害児のことは置き去りにされてしまっているとか。車椅子でバスに乗るために介助者が必要な時、それはその場に居合わせたすべての健全者が介助者であるという視点とか。確かにそうだなと思ったし、障害者と介助者というものを自分とはまったく関係ないものとして捉えていたけど、健全者というのは須くすべて介助者なんだっていうのはガーンと響いた。一気に自分ごとになった。

どこか遠いところの、自分の知らない世界のこと、みたいに思ってたんだな。自分も。そして障害者差別というものをまるでわかってなかったんだな、と思い知らされた。正直一度読んだだけじゃそう思っただけで終わってしまって、全然身にならないなって感じる。
何度も何度も読み直して、噛み締めないといけない本だと思った。

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

※このレビューでは「障害」を「社会構造の側にある問題」と捉える考え方に沿い、「障害者」という表記をしています。


昨今の社会的なトピックを目にするうちに個人的に学ぶ必要性を感じたことがあり手に取った本。

障害者差別を問い直す、というタイトルだけれど、この本では「日本脳性マヒ者協会 青い芝の会」の活動が中心となっている。
どれだけ差別問題に関心がある「つもり」で、自分は差別に加担しないように心がけている「つもり」でいても、彼らの語る「健全者」としてこれまでの人生を過ごしてきた私は、これまで無自覚に彼らに向けていた眼差しを彼ら自身の言葉によって自覚させられ突き返される。彼らの眼差しによって自分自身が障害者差別の当事者なのだと思い知らされる。背筋がひやりとする。「健全者」とは〈マイノリティの側からレッテルを貼り返すための言葉〉とは実に的確な表現だと思う…。

正直彼らの活動や発言の全てに賛同することは難しい(特にジェンダー観と生殖に対する意識のあたりには全く同意しない)。けれど彼らの活動がなければ変わらなかったものも多かろうと思う。主張の根底にあるものは理解できる、という部分についても、そこまで極端な言葉、強硬な手段に訴えることはないじゃないかと思ってしまう面がある。ただそれはトーンポリシングにあたるのかも知れなくて、彼らだけの問題ではなく、そこまでさせた社会の側の問題とも言える。それでもなおやり方……という感情がつきまとう。難しい。

一度目を通しただけでは明確に言葉にしてまとめられる気がしないので、マーカーを引いた場所から幾つか抜粋して並べておく。

・「マイノリティ」「マジョリティ」とは、その社会や共同体への帰属意識と違和感の濃淡の差を示す言葉
・「マジョリティ」とは「葛藤を伴うことなく、自分のことを『大きい主語』で語れる人」
・「マジョリティ」は、自分自身の価値観や考え方といった「個人的な見解」を「大きな主語」に溶かし込むことができてしまう。そうすることで、あたかも「一般的な見解」であるかのように語ることができる

↑上記3項はあらゆる差別に対して言えることだなと。

・障害者への「優しさ」や「思いやり」といった感情それ自体が「差別」
・あるいはこうした感情が「差別」を助長したり見えにくくしたりする
・青い芝の会は障害のある人とない人とが「仲良くする」「互いにわかり合う」といった考え方も拒絶した
・現状の社会において、両者の関係性が決して対等なものでない以上、障害者の側に「わかってもらうように努力すべき」「歩み寄って仲良くしてもらうために我慢すべき」といった圧力がかかることが明白だから

↑同時期に読んだ「いのちを選ばないで」の中に知的障害を持つ方に対する支援について「哀れみの政策ではなく彼らが生まれながらにして持っている人格発達の権利を徹底的に保障しなければならない(要約)」という言葉があって、通ずる部分があるなと思った。
(本書の中にも〈恩恵を施す慈善的態度〉を批判するくだりがある)

・誰かに対し、「生きる意味」の証明作業を求めたり、そうした努力を課すこと自体、深刻な暴力である
・割り切れない事情を力任せに割り切って「解決」させるような発想は、弱い立場の人に我慢や沈黙を強いたり、そうした「解決」に馴染めない人たちを排除したりする方向へと進みかねない

↑差別が根強く残る現代社会を生きる当事者として、強く意識したい言葉

立ち返って序章から
・私たちの社会は「障害者差別」を「解消」することを法律として掲げた
・議論し続けることを社会の約束事として共有した

現代を生きるひとりひとりが当事者として考え、議論し続けるしかないのだと思う。その手がかりとして考えるヒントが本書には多くちりばめられている。

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2021年06月15日

Posted by ブクログ

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差別について考える時、いつも浮かぶ私の実体験がある。
昔、3歳の娘と手を繋いで歩いていた時、向かいから黒人の方が歩いて来てすれ違った。娘は明らかに顔をしかめて通りすがり際にその方を避けて、ウェッ だったか なんだったか 侮辱的な反応をした。

私は ただただ ビックリして 落ち着いて娘と話ができる場所で先ほどの行為がどれだけいけない事なのか 混乱しながらも一生懸命幼い彼女に説明した。

3歳の娘はテレビ以外で見る初めての黒人が奇異に感じて反射的にそういった反応をしてしまったんだろう。「知らない」という事の恐ろしさ。そこから始まる差別的感情についてずっと考えていた。多くの差別は無知から始まっていると思う。障害者について考える時も私達は「知らない」からどう対応したらいいか分からないのだと思った。

だから、住む世界を分けるのではなく、一緒の社会でと思っていた。ただ重度障害者のリアルを知らない私が理想を発言したって浅はかでただの馬鹿だ。

紹介されている「しののめ」の詩に胸が詰まる。
これぞ障害者のリアルな感情だと思った。健全者だって心を痛め人生がままならないことがあるけれど、やはり経験体験実感できない感情だ。そこにどうしても大きな深い分断がある。私はあなたに決してなれない。

私達は対立する。しかし対立は、暴力を伴わなければ決して悪いことではない。違いと分断を自覚と理解をしながら対立して主張し合っていく事ではないかと思った。私も女という性というだけで実社会ではまだまだマイノリティだが、弱者側が大人しく我慢し続けた事で今の世の中がある。将来の子ども達の未来の為にきちんと主張し合っていく事が大事だと切に思っている。

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2020年12月04日

Posted by ブクログ

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一言で言うとめちゃめちゃ考えさせられる本です。
健常者の意見を聞いたあとに反発した障がい者の意見を聞くと納得する反面、頭がぐちゃぐちゃになります。
あとがきで作者が述べていましたが、この本に障がい者差別にどう対応していくべきなのか答えは無いので結局自分で考えなければならない問題になります。
正直しんどいです。3日くらいこの問題について考えふけってしまいそう。

このような障がい者差別等の問題は様々な視点からの意見があり、一概に自分の個人的な意見や感想をこの場で安易に発言することはできないので興味ある人は是非ご自身で読んで欲しいと思います。

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2021年12月09日

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