あらすじ
小松さん、なんかいいことあった?――恋に戸惑う52歳のさえない非常勤講師・小松と、ネトゲから抜け出せない敏腕サラリーマン・宇佐美。おっさん二人組の滑稽で切実な人生と友情を軽快に描く傑作。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
おじさんのあだ名がうさちゃんってところからほっこり。うさちゃんのシーンは主にネットゲーム
小松さんとみどりさんのとんとん拍子はすごかったけど、穏やかな話だから好き。
まさかみどりさんがうさちゃんのゲームの同盟だったとは、それも二役。さすがに出来過ぎだけど面白かった。
Posted by ブクログ
中編「小松とうさちゃん」
短編「ネクトンについて考えても意味がない」
掌編「飛車と騾馬」(小松とうさちゃんの前作)
たいてい読んだ小説に関しては、エバーノートや未公開メモに詳しめのあらすじを書くのだけれど、本作はその必要はなさそう。
50代冴えない男の、これが最後かもしれない恋を、40代のネトゲに嵌っている飲み友達が応援する。
実は相手にも事情があって……、という内容。
断章ごとに視点人物が変わる。それが3人、と思いきや4人。
タイトルふうに言い直してみれば「小松と、宇佐美と、みどりと、ほんのちょっとだけ八重樫と」というところか。
偶然が幾つか起こるが、それが虚構的に嘘っぽくなく、とはいえ事実のんべんだらりべったりの散文と違って、この偶然って面白いねーと思えるというくらいの絶妙なリアリティラインで成立している作品。
しかし個人的には、ラインを越えてあえてご都合主義的あるいは作者の恣意的、と見做せるレベル、に注目しておきたい。それでもいいのだと。
さらに俯瞰してみれば、語り手の中年女性みどりが、若者(八重樫)も少し年下(宇佐見)も、本命の同い年(小松)も3人全員、無意識的に手玉に取っておいて自分の術数にはまるで無自覚、というやや怖い構図になるが……そこまで深読みできながらも、する必要がない、という作り。
みなどこか、平均的・標準的・普通の幸せ(親世代の常識)を、掴み損ね、静かな諦観を感じながらも、自分の現状をさほど恨んだりしない。この、よさ。
掌編は措いておくとして、短編「ネクトンについて考えても意味がない」は……おお、私自身の小説だ。