【感想・ネタバレ】最後の社主 朝日新聞が秘封した「御影の令嬢」へのレクイエムのレビュー

あらすじ

日本のクオリティ・ペーパーを自任する朝日新聞社。その朝日株の6割を握っていたのが、創業者・村山龍平と村山家である。
そのため、朝日新聞は村山家を「社主」として手厚く処遇しつづけた。
その「最後の社主」となった村山美知子は、1920年、新聞王と呼ばれた村山龍平の孫として生まれた。母・於藤は龍平の孫、父・長挙は子爵・岡部家から婿入りした旧華族だった。
朝日新聞が生み出す巨大な利益と、華麗なる血脈――美知子は、妹・富美子とともに、神戸・御影の邸宅と有馬温泉の別邸を行き来しながら育った。日本舞踊、古式泳法、スキー、茶道、ピアノなどを学ぶ、日本有数の「深窓の令嬢」――それが村山美知子だった。
戦後、海軍大将の長男を婿に迎えるが、朝日新聞の経営に興味を示さず、離縁してしまう。傷心の美知子は、音楽の世界で活躍することになった。
朝日新聞が後援する日本を代表する音楽祭「大阪国際フェスティバル」の専務理事として、世界各国から有名指揮者、オーケストラ、将来有望な若手を招聘した。小沢征爾、カラヤン、ルービンシュタイン、ワイセンベルクらが美知子に深い信頼を寄せた。
一方、朝日新聞の経営陣は、株を握る村山美知子の機嫌を取ろうと奔走する。専任の「秘書役」をつけ、お気に入りの高級パンを届け、記者出身の役員は慣れない茶道に挑戦し足がしびれて昏倒した。
誕生会や村山家の祭礼には編集幹部がこぞって参加し、お祝いの言葉を述べた。
しかし、子どものいない美知子社主が高齢になるにつれ、朝日株の行方が焦点になる。朝日経営陣は、あの手この手を使い、美知子社主から株を奪おうと画策した――。
その最晩年に「秘書役」となった元事件記者が、朝日新聞最大のタブーを赤裸々に明かす。
朝日経営陣は、どうやって村山家から株を奪ったのか。
巨額の税金をどのように処理したのか。
朝日新聞株が外部に流出する可能性もあった、最大の危機とは。
新聞、メディア経営の深奥に迫る、驚愕の書。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2021.02.16 最後の社主
 樋田毅著「最後の社主」を読みました。著者は朝日新聞出身のジャーナリストで、タイトルにある社主・村山美知子氏の晩年に世話役をしていた方です。「虎ノ門ニュース」で上念司氏が紹介していたのが気になって手に取りました。

 村山美知子氏は朝日新聞の創業者・村山龍平氏の孫娘で、創業家として朝日新聞社の大株主でした。社主って言う言葉も、耳慣れない言葉ですが、創業家と経営を分割した朝日新聞独自の言い回しの様でした。美知子氏は、音楽をはじめとする様々な文化に精通されており、大阪国際フェスティバルという音楽祭を主宰されていました。無名時代の小澤征爾を見出したり、私でも存じ上げているカラヤン(凄さは理解しておりません)を招聘したりと、そうした功績は美知子氏の人柄によるものだとありました。小澤征爾は、若くしてN響の指揮者になるも、「若いのに生意気だ」ということでその立場を追われ、海外で目が出て「世界の小澤」と言われるまでになったとのことでした。このエピソードは全然知りませんでした。

 しかしながら、こうした事業はやっぱりお金がかかるもので、運営している団体も赤字です。朝日新聞の支援がなければ運営できないわけですが、読んでいて美知子氏は、その支援を当たり前のように思っているように感じられました。いや、大株主、創業一族というのはそれくらいの権限を持つものなのかもしれませんが、やっぱり仕事もしないでどうなのだろうという気持ちが出てきます。でも、そのあたりは貧乏性の私には理解できないところなのでしょう。

 晩年は朝日新聞の経営陣からひどい扱いを受けたとありましたが、出てくる話は株をどのように扱うかばかりで、それがどのようにひどい扱いなのかピンときませんでした。株の整理がついた後は、世間体を優先する朝日新聞経営陣によって確かにひどい目にあわされていたような描写もありましたが、その時、本人はもう自分の意思表示もできるかどうかという状況で、このあたりもなんともいえないなと思いました。

 でも、こうしたしっかりとした教育を受けて、お金に困らないような方こそが、公共の名誉職等にはふさわしいのでしょうね。期待した内容とはちがうものでしたが、「こういう世界もあるんだな」と認識できました。そして、業界団体の役職とかについては、ますますやる気が亡くなりましたとさ。

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2021年03月31日

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