【感想・ネタバレ】海の地政学 覇権をめぐる400年史のレビュー

あらすじ

地球の面積の7割以上を占める海。大航海時代以来、その覇権をめぐって、多くの国々が鎬を削ってきた。スペイン、オランダ、イギリス、二度の大戦を経て頂点に君臨するアメリカ。そして国際ルールへ挑戦する中国……。本書は、航路や資源、国際的な法制度など多様な論点から、400年に及ぶ海をめぐる激動の歴史を描き出す。各国の思惑が交錯し、形作られてきた海洋秩序を前にして、海に囲まれた日本はどう向き合うべきか。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルどおり、海上覇権を英・米が握ってきた歴史を時系列でおさらい。米が捕鯨から世界に乗り出すようになった事情、英から米へ覇権が移っていく過程などが、時系列でよく整理され、一般読者向きで、とてもわかりやすかった。
後半は、海洋ルール形成の顛末、国際ルールに挑戦する中国がやっていること、日本の海保の事情などと現在へつながってくる。

本書を読んで、
過去の流れからポイントをつかみ、現状ニュースで良く見る中国発の海上でのせめぎあいの背景を理解できる基礎知識を得られてよかった。

印象的だった点:
海洋ルールとは、歴史的に強国が決めたことが国際ルールになってきたことを改めて実感した。
結構、強国が自国に有利なことを手前勝手に決めてきたわけで、それを神聖なものと有難がるのは、あくまで国際的に支持されている状況と、その違反を防止する力がある、という条件を備えていなくてはいけない。

驚いたのは、国連の海洋条約をアメリカが批准していないこと! 理由は強国が途上国の深海資源を開発して何が悪い という、手前勝手なもの。

すると、中国が手前勝手な法律を制定し、国際社会に通告してきても、中国側に立ってみれば妥当ということになるではないか。だってアメリカだって勝手なこと言ってんじゃん……強国がルールを作れるんだよねえ、となる。

中国のやってることを、日本人は国際ルールに照らせば明らかにおかしい、と嘲笑う論調を良く見かけるけど、正しい主張がまっすぐ通るわけではない。
中国のやり方は力押しだけでなく、イメージ戦略やそのうち国際社会に黙認させてしまう既成事実つくりなど高度になっている。

最後の章は、海上ルールの順守は海軍によって担保されてきたが、現在は日本の海保が強化されているように、軍と別の組織が担うのが主流になっているとのこと。海保の手に負えない場合は海自に出動要請という流れらしい。
このあたり、微妙だと思った。海保はあくまでも軍隊ではないので、海自がどの時点で出動してくるのかなど難しいものがある。

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2021年02月07日

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