あらすじ
46歳の下田保幸は、プロのジャズクラリネット奏者。演奏に全てを捧げた若い日の情熱は潮が引くように褪せ、いまは音楽教室講師の僅かな収入で過ごす。そんな暮らしがギタリストの青年・音矢との出会いで動き出す。どうしても困ったら下田を頼るよう、亡き母に言われたという音矢の名字は佐久間。下田が昔愛した女性と同じだった……。人生の折返し点で迷う大人たちの心をはげます感動作。(解説・北上次郎)
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Posted by ブクログ
小野寺さんが描く中年が主人公の作品を始めて読んだ。
でもほかの作品の青年と同じように、内側に熱を秘めた静かに自分と周りを観察している人物で心地よい。きちんと自分の手の届く範囲を見て、自分の生活を「生きて」いる感じがして、不思議と安心する。
さて本作。
ジャズマンでクラリネット奏者の下田保幸のところへ警察からの連絡。身元引受を依頼してきたのは25年前の元彼女の息子・音矢だった。そこから始まる保幸と音矢の生活。繋いでいるのは音楽。
自分が一番大切にしているもの(=音楽)がはっきりしていて、それ以外(収入の低さ、不安定さなど)の不安は淡々と受け入れて生きる。食はシンプル、ファミレス朝食海賊は週に一度の贅沢。
その淡々とした生活と、ディキシーランド・ジャズへの強い熱い想いの対比がいい。
大切なものを大切にすることってかっこいいと思わせてくれる。
――――
ディキシーランド・ジャズというジャンルを初めて知った。
調べてみたら聴いてみたことはあったが、ディキシーと認識していなかった。
せっかくなので本作で紹介されている曲を流しながら読んでみた。これがよかった。
読み始め最初の数ページは30代の青年を想像し、その後、内容から40代だと認識を修正したが、曲を流し始めたら理屈抜きにその年代を生きてきた中年のおじさま像がはっきりと浮かんできた。
ノリがよく、明るく、でも懐かしいディキシーランド・ジャズ。ここから離れられないおじさまたち、新たに魅せられる若者たち。ジャズバー「ジャンブル」に流れる空気が少し想像できた。
Posted by ブクログ
人生を諦めて、世捨て人のような生活を送っている主人公。読んでいて前半は苦しかった。しかし、人との関わりの中で光が見えてきてほっとしながら、音楽のことは詳しくないので、最後は’do you know what it means to miss New Orleans?’を聞きながら読み終えた。ミュージシャンってやっぱギザだね。
Posted by ブクログ
下田保幸
クラリネット奏者。解散した『井村勝とロンサム・ハーツ』の元メンバー。四十六歳。
草木精二
カフェ『ジャンブル』のマスター。
佐久間音矢
警察に捕まり、身元引受人に下田を指名。二十二歳。ギタリスト。
佐久間留美
二十五年前に下田が大学生の頃に付き合ってた。十二年前に脳腫瘍で死んでいる。
野沢
男性警官。
小川栄
ロンサム・ハーツで下田の前にクラリネットを吹いていた。いわば下田の師匠。
鈴森朋子
下田の高校の同級生。ブラスバンド部。
薮内
下田の生徒。四十歳独身男性。
高倉乃々
フリーライター。下田が通う朝食バイキングの常連。
岸忠義
弁護士。
松江省吾
スカイマップ・アソシエイツのベース。
吉野叙安
スカイマップ・アソシエイツのドラムス。
須藤英春
トロンボーン。
竹岡文目
ジャズピアニスト。