あらすじ
ニュートンが大科学者たり得たのはなぜ? どうしてフランス革命時に諸科学が勃興した? 量子力学は歴史の偶然で生まれた? 国家の野心と研究者の探求が重なるところに、歴史の転機は訪れる。近現代史を陰で動かした諸科学の営みとそのダイナミズムを、文理の壁を超えてやさしく語る、あたらしい科学史入門。
第1章 イギリス王政復古と「学会」創設
──ニュートンはなぜ大科学者たり得たか
第2章 フランス革命と化学革命
──なぜ諸科学は動乱期に基礎づけられたか
第3章 普仏戦争と「量子仮説」
──量子力学は製鉄業から生まれた?
第4章 世界大戦と核物理学
──真理の探究はいかに歴史に巻き込まれたか
第5章 変貌する現代科学
──巨大科学は国家を超える
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Posted by ブクログ
人文系の歴史と理系の自然科学の融合の試み。科学の進歩と世界史をリンクさせた一粒で二度美味しい一冊。
科学の発展に居たら背景を歴史を基にして記述していくという独自のスタイルの作品。
イギリス王政復古の頃のニュートン、フランス革命期の化学革命、本書で取り上げる中で最も有名なのは第二次世界大戦とアインシュタインらによる核物理学の進展など。
中でも一番具体的で興味深かったのは普仏戦争に勝利したプロシア。あの「最後の授業」のアルザス・ロレーヌ地方を得る。鉄鋼や石炭の豊富な地域。産業革命に遅れたドイツは重工業特に製鉄業を振興させる。製鉄の工程で必要な高温の測定。これが十九世紀物理学とは大きく異なる量子力学を生み、アインシュタインにつながっていく。
文系の自分にもかろうじて理解できる平易な内容。世界史の知識と合わせて、目からウロコ、満足の一冊でした。
Posted by ブクログ
小山慶太氏の本は『異貌の科学者』、『若き物理学徒たちのケンブリッジ』と読んできて本書が3冊目である。
本書の出版は2020年1月。氏の膨大な著作の中で最も新しいのが本書である。毎年のように新刊を出し続けてきた氏の筆がぴたりと止まってしまったのは、奥様を亡くされたせいかもしれない。本書の「あとがき」に2019年11月に45年間連れ添った奥様を亡くされた旨の記述がある。
本書のタイトルは『高校世界史でわかる科学史の核心』。世界史に暗い私に読みこなせるかどうか若干の心配があったが、難なく読み通すことができた。それは、『若き物理学徒たちのケンブリッジ』を先に読んでいたからかもしれない。世界史のうねりの中に科学があり、近年においては逆に科学の進歩が世界史のうねりを生み出してきたことがよくわかる。
フランス革命は科学の世界にも波及し、科学が大きく進歩した。物理学の進歩が、莫大な研究費をつぎ込んだマンハッタン計画を喚起し、原爆という悪魔の兵器が戦後の冷戦を生み出した。
400年の科学史をわずか250ページに収めるのは至難であったに違いない。綿密な調査の上で、多くを捨てて絞り込んだ文章になっている。
新書には似合わないほど熟読した。本書も大変勉強になる素晴らしい一冊であった。
Posted by ブクログ
ニュートン、ラボアジェ、ハーバーが、世界史の政治や国の動き絡みでも意識される名前かな。アインシュタインに代表されるナチスからの亡命の話は、有名すぎるので。