あらすじ
いつも突然泊まりに来るだけの歳上の恵梨香
に5年片思い中の正臣。婚約者との結婚に自
信が持てず、仕事に明け暮れる津秋。叶わな
い想いに生き惑う二人は、小さな偶然を重ね
ながら運命の出会いを果たすのだが――。噓
と秘密を抱えた男女の物語が交錯する時、信
じていた恋愛や夫婦の真の姿が明らかにな
る。今までの自分から一歩踏み出す恋愛小説。
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Posted by ブクログ
その頃からだろうか。わたしは部屋に「不在」を感じるようになった。彼はいない。いないならそこにはなにもないはずなのに、「不在」はいつもそこにいた。毎朝起きるベッドの右側に、食事をするときはテーブルの向かいに、二人掛けソファの半分に。「不在」は、いつも存在した。その「不在」は彼の形をしていて、彼の話し方で話をした。彼のやり方でわたしを喜ばせたり悲しませたり怒らせたりした。
恋人同士は希望がなくちゃ一緒にいられないのかもしれない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ。
過去とともに生きる。そんなの当たり前だ。僕らは前へ進むけれど、その道は過去から続いているんだから。絶望も希望もぜんぶひっくるめて、僕たちは出会うのだ。彼女が、昨日までの僕をころした。そして今、新しい僕が生まれようとしている。僕は僕の誕生を、両手を挙げて歓迎したい。たとえその先に絶望が直結していたとしても。
Posted by ブクログ
やられた。。最初の方に出てきた、何もしてくれない、分かってくれない別れも考えてる婚約者は『不在』やったんやね。雑学王のくせに私のことは何一つ分かってないのは彼じゃなくて『不在』(じゃあ夢事典を手渡してくれたのは誰?)。何の仕事してるかわからん在宅警備の嫌なヤツって思ってたけど…そりゃ何もしてくれんわな。何の期待も出来ないけど居てくれないと生きられない。絶望が生み出した幻。
不妊治療の末、やっと授かった第一子を流産した自分を死んだことにして恵梨香として絶望と共に京都で生きる事にした香子さんを軸に、突然の事故で夫を亡くして空っぽになった津秋と、恵梨香さんが好きなどこか浮世離れした正臣がロシアへのビザ申請場所で出会うまでの物語。
なるほどみんな妙にボンヤリしてるし、フッ軽やねんけど、この世界に絶望しながらも他人の幸福を願える強さもある。これだけ絶望しかない中で最後に希望が見出せそうな展開で終わってくれたのは救いか。キムさんがええ味出してて、最後のセリフ「恋人同士は希望がなくちゃ一緒に居られないのかも知れない。けどな、一緒に絶望できるのが夫婦ってもんなんだよ。」がめちゃくちゃ今の自分には刺さった。深い。果たして私達は…一緒に絶望出来るのか?
Posted by ブクログ
第九話から始まるところから、驚いた。
最後まで読み終えて、もう一度、1ページ目に戻り、全てが繋がり、とてもすっきりしました!
題名を見た時、暗いお話?ミステリー?と思いましたが、全く違った!
読みやすくあっという間に読み終えました!
一話一話の題名も好きです。
面白かったー!
Posted by ブクログ
こんな始まり方でこんな展開の本は初めて読んだ。
こんなにもつよく読み終わった瞬間からもう一度分かった上で読みたくなる本は初めて。
タイトルの暗い重そうな感じはあまり感じず出てくる人も変わっているけどすごく好き。
雑学王がもうこの世にいないって分かった時から
私は全然わからず読んでいたんだと。
一見全く関わりもなくこれからも関わることのなさそうな2人が最後ロシアという共通の部分で出会うことになる。
こういうのを読むと運命ってこうやって見えないところで実はちょっとずつお互い関わっているんだと思った。