【感想・ネタバレ】OODA 危機管理と効率・達成を叶えるマネジメントのレビュー

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Posted by ブクログ 2020年02月08日

旧日本陸軍の大本営参謀を務め、戦後は第二次臨時行政調査会の委員などを務めた瀬島龍三氏は危機管理の極意をこう表現した。
「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」

(引用)OODA危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント、小林宏之著、株式会社徳間書店、2020年、124

ビジネスの世界では、PDCAサイ...続きを読むクルがよく知られている。しかし、OODA LOOP(ウーダー ループ)は、まだあまり我が国には浸透していない。以前、私もチェット リチャーズ著の「OODA LOOP」(東洋経済新報社、2019年)で初めてその存在を知った。

このOODA LOOPは、アメリカ空軍パイロットのジョン・ボイド大佐が考案したもので、

・観察(Observe)
・状況判断(Orient)
・意思決定(Decide)
・行動(Act)
の4つのフェーズを回していくものだ。

空軍兵士が考えたこともあり、当初は危機管理ツールという意味合いが強かったかもしれないが、次第にスピード重視のビジネスの世界にもOODA LOOPの考えが広まりつつある。

このたびの小林宏之氏による著書は、OODAループを「危機管理」中心に書かれてはいるものの、OODA LOOPの入門書としても十分活用でき、即断即決が求められるビジネス界にも応用が効くものとなっている。

先程の4つのフェーズごとで、それぞれ「何をすべきか」ということが最新の事例によって語られており、危機管理の出発点とされる「何を大切にするのか」といった視点をもとに、小林氏は、OODA LOOPを回していくことを分かりやすく教えてくれる。

最近では、湖北省武漢市が発生源とされる新型肺炎コロナウィルスの感染が広がりつつあり、中国を始めとした経済活動にも大きな打撃を与えている。このコロナウィルスは、もはや対岸の火事ではない。我が国も感染拡大防止のため、関係機関と協力し奔走している。なにも、コロナウイルスは、国に全てお任せではなく、県や市町村が危機の未然防止をし、危機発生時の最悪の事態を防ぐ被害極限対応できる体制を整えることにより、国民、県民、市民からコロナウイルスの感染拡大を少しでも防ぎ、発生した場合は速やかに適切に対処していくことが求められる。

OODA LOOPは、観察から始まる。そして、状況判断をして、意思決定をする。いま、「自分たちの置かれている状況はなにか」、そして、そこから「私達を守るには何をすべきか(危機管理の出発点である「何を大切にするのか」)」を考え、悲観的に(最悪のシナリオを想定して)準備していけばよい。そうすれば、もし、身近でコロナウイルスの疑わしき事例が発生したら、シナリオにそって(シナリオ通りにいかないケースもあるが)、落ち着いて行動を起こすことが肝要だ。

しかし、悲観的と言われれば、そこで終わらないのかもしれない。今後、県内で多数の新型肺炎に罹患した患者が発生した場合、最悪のケースといえば、武漢で見られるように交通機能封鎖の措置がとられ、生活必需品が手に入らなくなることなども想定される。また、学校や会社も機能停止し、病院には、患者があふれかえる。まさに、今、中国でおこっていることが、私達の身近で発生するかもしれない。そのため、私達ができることは、いまの状況をしっかり観察し、あらゆる悲観的なシナリオを想定して、準備し、意思決定をし、行動を起こすことだ。

私もかつて危機管理部署に所属したことがある。そのとき、東日本大震災が発生した。被災地に出向き、津波によって何もかも洗い流されてしまった跡を見て、人間の無力さを感じた。しかし、そんな状況でも、明るいニュースもあった。そのニュースは、いわゆる「釜石の奇跡」と言われ、当時、釜石市内の小中学校の児童・生徒たちは、地震発生時に自主避難して、学校管理下にあった児童・生徒らは全員助かった(生存率99.8%)。なぜ、津波を知らない子どもたちが悲観的な事態を想定して、命を守ることができたのか。それは、群馬大の教授だった片田敏孝先生が、津波からの避難訓練を8年にわたり続けてきたからだ。

その子達は、「率先避難者」として、まず子どもたちが避難することで、大人たちもそれに引きづられる形で避難を始めることもできたという。まさに、観察(大地震発生)、状況判断(津波が来るかもしれない)、意思決定(高台に避難しよう)、行動(周りの人を呼びかけて避難)といった、即時即決を強みとするOODA LOOPがうまく機能した事例だと思った。行動を起こす際、すでに準備ができているから、落ち着いて(楽観的に)対処できる好事例だ。これが、従来のPDCAサイクル、つまり、PLAN「計画」から始めていては、子どもたちは助からなかった。

危機管理は、なにもこのような大きな事例ばかりではない。私達の身近にも、危機管理事案は多く存在する。そのとき、OODA LOOPは最強のツールとなる。

もう一つ、大切なことは、「悲観的に準備」することは、無駄が多いことだ。それは、小林氏も著書の中で指摘する。準備しすぎて、結局、何も起こらなかったということだ。私も、かつて危機管理部署の先輩から「空振りは大いに結構」と言われてきた。つまり、準備しすぎて、何も起こらなかったこと(空振り)は、危機管理の最優先される「人々の命と安全を守る」ためなら、歓迎すべきことだと言われ続けてきた。

クドいようだが、私達が「何を大切に」し、それを守るため、常日頃から悲観的に準備し、いざというときには楽観的に対処できるようにしておくためにできることは、日常の仕事の中でも意識しておくことが必要だろう。

小林氏によるOODA LOOPの本は、私も共感することが多々あった。多くの人におすすめしたい。

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