あらすじ
「国際社会で人類の至宝を守り、後世に手渡す」の理想を掲げ、観光資源としても注目される世界遺産。だが、登録物件が増え続けるなか、いくつもの遺産が危機に瀕し、また各国の政治的介入が常態化するなど課題や矛盾が噴出し始めている。数々の世界遺産の現場を訪ね歩いたジャーナリストがその「光と影」に目を向けながら、文化遺産保護の未来について考える。
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Posted by ブクログ
世界遺産とは何か考えさせられた。
自分の「世界遺産」の認識は世界中誰もが認める歴史的遺産、実態として存在し、目で評価され、何年にもわたって受け継がれてきた価値される不動産のイメージが強かった。
しかし近年は動産や資産群、思想までが世界遺産として登録される過程の中にある審議の内容にも組み込まれ、「世界遺産」の複雑化が進んでいる。また、希少価値のある世界遺産だが、登録数の増加や観光客増加に伴い、劣化が見られたことによりその目的が失われかけているように思える。
登録されることがゴールではない、という認識は当たり前にあるが、管理体制が追いつかなくなってしまったり、登録される過程に至るまでには歴史認識のずれにより生じる隣国、他国との軋轢が国際関係の悪化を招きかねない。
人類が共通の遺産として登録される過程で対立が生じてしまっては世界遺産の真の目的は達成できないのではないかと考える。
Posted by ブクログ
世界遺産検定を受けるので読んでみた。
世界遺産と聞くと私の場合は、地域活性化や保護体制の構築など、メリットがまず思い浮かぶが、本書はデメリットにあえて目を向けた内容となっている。
負の観光圧力が加わる、地元の発展を阻害される、政治利用される、外交摩擦につながるなどなど。世界遺産条約にはたくさんの矛盾や課題があることがわかる。
そんな中で日本ができることは、世界遺産登録に向けて躍起になることではなくて、人類の至宝を後世に手渡すという、そもそもの世界遺産条約の目的を達成するためにユネスコをサポートすることではないかと著者はいう。世界の保護体制を整えることができれば、世界遺産が西欧に偏っている問題も解決できよう。全くそのとおりだと思う。
いつか旅行したときに楽しくなると思って世界遺産検定を受けようとしているが、この本を読んだことで、世界遺産を保有している地域がどう世界遺産と向き合っているのかという視点でも見ることができそうだ。