あらすじ
その犠牲者は、一〇〇〇万人──四〇〇年にわたり大西洋上で繰り広げられた奴隷貿易の全貌が、歴史家たちの国境を越えた協力によって明らかになってきた。この「移動する監獄」で、奴隷はいかなる境遇に置かれたのか。奴隷貿易と奴隷制に立ちむかったのはどんな人たちか。闇に閉ざされた船底から、近代をとらえなおす。
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Posted by ブクログ
奴隷船の世界史
著:布留川 正博
出版社:岩波書店
岩波新書 1789
奴隷とは、人ではなく、家畜である
家畜であれば、牛や、馬と同様に、商品である
なので、目的地に輸送するまでには、できるだけ死なないように、というか、元気でいるように、そして、反乱を起こさないように、つれていくことは当然の義務である
アフリカでの奴隷とは、いままでは、白人が嫌がる黒人を追いかけまわして捕獲して、それを船に乗せているとおもっていたが、まったく違う
黒人同士の部族間で負けたほうの部族を奴隷としてつかまえる
奴隷として捕まった数より死亡した数が高いとのこと、大規模な戦闘がアフリカで繰り広げられるようだ
勝った方は、いろいろなものをもってきた白人に、その物と奴隷を交換して儲けを得る
それが大規模になって、弱小部族は、強者に狩られて、奴隷として売られていく、というのが正しい
もともと、奴隷とは、欧州にも、イスラムにもいて、オスマントルコは海賊行為で捕まえたキリスト教徒を奴隷としてあつかっていた。それを、アフリカ大陸でやったとしても何の問題もないし、良心の呵責もない
だって、奴隷とは、家畜なので、人ではないから
三角貿易
①欧州で作った商品をアフリカにもっていて、酋長と奴隷と交換する
②北米、中米、南米に、奴隷をつれていって、そこの農場主に奴隷を売って、農産物や砂糖、たばこなどを仕入れる
③仕入れた農産物を、欧州へ戻って販売して利益を得る
という構図だ
17,18世紀の欧州の繁栄は、こうした、三角貿易で得た利益に裏付けらていた
キリスト教だのイスラム教だの、口ではきれいごとをいっていてもやっていることとはゲスの極みだ
奴隷船:浮かぶ監獄との別名がある
①雇われ船長 乗組員と、奴隷の反乱に気を付けながら、商人を売買ながら航海する
欧州にもどることできれば、いくばくかの利益をえることはできる
②投資家 数人であつまって、船を用意して、船長を見つけて、商売をさせる
海賊や、敵国の海軍につかまってしまえば、無一文になってしまう
③船乗り 安い賃金で奴隷を監視しながら、アフリカにつれていく
帰りの航路は、なにもないので、そこで解雇されるかもしれない危険性がある
④奴隷 死んだほうがましという状態で、アフリカからアメリカへ売られていく商品
奴隷解放の運動は早くからあったが、3者の利益を調整することはむずかしく、奴隷船の廃止、奴隷の廃止、公民権の保証といった方向で少しずつ改善していく
奴隷制を廃止した最後の国は、なんと、USA、自由の国というは、まったくの皮肉である
そして、今も、手を変え、品を変えて、弱者を奴隷と同様に扱う連中がのこっていることを最後に語っている
目次
はじめに――ロビンソン・クルーソーの奴隷貿易
第1章 近代世界と奴隷貿易
一 奴隷制の世界史的意味――エリック・ウィリアムズの問い
二 奴隷貿易の歴史的起源
三 明らかになる四〇〇年の貿易実態――歴史学の新たな挑戦
四 アシエント奴隷貿易が意味するもの
第2章 奴隷船を動かした者たち
一 「移動する監獄」――奴隷船の構造と実態
二 奴隷となったアフリカ人たち――人身売買,中間航路,叛乱
三 船長と水夫
四 奴隷商人とエージェント――奴隷船を操る者たち
第3章 奴隷貿易廃止への道
一 サマーセット事件から始まる
二 アボリショニズムの展開――クウェイカー教徒とイギリス国教会福音主義派
三 奴隷貿易廃止キャンペーンと砂糖不買運動
四 ハイチの奴隷叛乱
五 イギリスの奴隷貿易廃止
六 在英黒人とシエラ・レオネ植民地
七 奴隷貿易の終焉
第4章 長き道のり――奴隷制廃止から現代へ
一 奴隷制廃止へ
二 奴隷から移民へ――一九世紀の人流大転換
三 おわりに
あとがき
主要参考文献
ISBN:9784004317890
判型:新書
ページ数:260ページ
定価:900円(本体)
2019年08月22日第1刷発行
2020年07月06日第3刷発行
Posted by ブクログ
とても、刺激的な本であらためてよ見直してみたい。奴隷といえばアメリカ、というイメージは、ポルトガルブラジルの規模のほうがおおきいことでまず覆された。また、奴隷船のなかでの扱いがなんとなく想像した以上にひどい(死亡率など)こと、それに対する反乱もかあったことなど、しることができた。アメージンググレースの作詞社会主義が土鈴船の船長経験があり、かれなどが働きかけていくなかで徐々に奴隷貿易が廃止されていくことがわかった。やはり、運動は力を持つことが学べたし、砂糖ボイコットなど、イギリスという国家の二面性もルーツとして知れた。奴隷制廃止後は移民が増えていくわけだが、おわりにで現代にも奴隷制が暗に行われているこどが示唆される。とても心苦しいことである。
Posted by ブクログ
奴隷の歴史には、
奴隷貿易の歴史と奴隷制の歴史がある。
奴隷貿易が世界から廃止されても、
奴隷制が即座に廃止されたわけではない。
また、大西洋奴隷貿易400年間の間のアフリカ人人身売買の前にも、古くから地中海社会に奴隷制度はあった。
ポルトガルが先陣を切って大西洋奴隷貿易を始め、1888年にブラジルで奴隷制が廃止されるまでの400年間、アフリカの黒人奴隷達は家族と引き離され、捕獲され世界中に売りさばかれ、酷使された。
アメージンググレースという曲は、
元奴隷船の船長が自分の行為を深く後悔し懺悔して作った詩。
スピルバーグ監督は、奴隷叛乱から自由を勝ち取ったアミスタッド号事件を元に、アミスタッドという映画を撮っている。だがこれは非常に数少ない叛乱が成功した例。
フランス革命時の人権にも、奴隷はその中には入っていなかった。それの何が人権なのだろうか。
ハイチの奴隷は史上初、叛乱を起こし
黒人による国、ハイチが誕生した。
奴隷船にギチギチに詰め込まれた奴隷達の1割ほどが航路途中で死んだ。
奴隷牧場も登場し、奴隷を生み育て売りさばかれた。
これが、人間の一つの真実の歴史である。
Posted by ブクログ
この本、凄みがある
大西洋奴隷貿易が始まる前、12-13世紀にヨーロッパにはすでに奴隷がいた
非キリスト教徒なら奴隷にしていいという文化・制度であり、タタール人やムスリム、スラブ人などが奴隷だったと
奴隷(slave)の語源はスラブらしい、、
大西洋奴隷貿易以前の非黒人奴隷から19世紀の世界的奴隷制廃止まで、奴隷はかなり宗教と関連している
そして、砂糖とかコーヒーなど『〇〇の世界史』的な名著はたくさんあれど、奴隷にfocusするとその多くが網羅されてしまうのだな...
岩波新書らしく硬派な内容
Posted by ブクログ
奴隷貿易がどのように終焉したのかに関心があり、おそらくは経済的な要因があるのではないかと思うのだが、この本では今ひとつはっきりとしなかった、引き続き勉強。
Posted by ブクログ
奴隷船の実態を知りたくて読んでみた本。
紀元前以前を含む普遍的な話を知りたかったが、あくまで大航海時代以降のアフリカ三角貿易における「奴隷貿易」の話だった。
奴隷船での輸送は過酷であり、喜んで死を選んだというのは想像に絶する。また、水夫らもまた困窮者や犯罪者であり事実上の奴隷だった。
ただ、奴隷というと誘拐や人狩りのイメージがあったが、アフリカ内で行われた戦争により、アフリカ人により拠出されていたのは盲点。もっとも、そうした戦争も欧州人が仕掛けていたものではあるが。
その一方で、中国人移民の8割が騙され誘拐されて船に乗せられている。水夫も経済奴隷的な形だったり、やはり誘拐も多く、そうした暴力的手段もまた一般的だったように思える。それらは現代におけるシアヌークビルとかの話とも変わらず、普遍的であると思えた。
シエラレオネの植民地形成移民団の全滅の様子など、当時は何にするにつけ、市が隣り合わせだったことがわかる。
奴隷解放期について、フランス革命や南北戦争といった歴史に表裏して奴隷解放の歴史があり、またそのことが影響していたことも分かっておもきろかった。
奴隷解放を旗印に侵攻するイギリスや列強は、まさにポリコレ無罪の原型といった感じ。
Posted by ブクログ
少し前にロビンソン・クルーソーが話題になっていて、関連本を探していてこの本に出合いました。
20年近く前だと思うけど、映画「アミスタット」を観て衝撃を受けた記憶がある。
あの映画も、奴隷船の真実を突き詰めたものだった。
本書では、400年にもわたる奴隷貿易の実態を明かし、だれが利益をあげていたのか、どんな人たちが奴隷船を動かしていたのか、多角的に考察している。
砂糖やコーヒーが、奴隷の労働力によって生産されてきた事実。
日本では、「奴隷」と言えば、中学校の社会科でアメリカ合衆国の南北戦争のことやリンカーンの演説を学習する際に奴隷貿易に触れるが、実際はアメリカ合衆国だけでなく南北アメリカ大陸の広い範囲に奴隷は送り込まれている。キューバなどでの奴隷の叛乱や自由を獲得するまでの歴史、奴隷貿易の禁止や奴隷制度そのものを禁止することを目指して活動した人々のこと…。非常に興味深く勉強になる内容でした。
アメージンググレースを作詞したのは、奴隷貿易船の船長だった人(ジョン・ニュートン)だそうです。船を降りて、牧師になってから作った歌なのだとか。
最後に、奴隷は現代にも存在するのだという章があり、私たちの日々の便利な生活の陰に、犠牲になっている子供や、弱い立場の人たちがいるのだという現実に、目をつむってはいけないと思った。
Posted by ブクログ
高校の世界史の教科書で奴隷が船底っぱいに横たわった状態で運搬される絵を見て衝撃を受けた。
それがどこに所蔵されていた絵かは覚えていないが、本書第2章の扉絵でロンドンの国立海洋博物館所蔵の「奴隷船ブルックス号の構造図」がそれに近いのだろうと思っている。
本書では歴史家たちの協力によって新しい資料や、散逸していた資料がまとめられたことによって、より詳細な奴隷貿易についてがわかる。
驚いたのは、奴隷貿易の拠点港上位2位までがブラジルで、リヴァプールが第3位であることだ。
これまで大英帝国が最多の奴隷船貿易を行ったと考えられていたが、実はポルトガル船、ブラジル船が最も多いのだそうだ。(35~36頁)
また、南アメリカの各文明を滅ぼしたのはコンキスタドーレス、スペイン人という知識があるせいか、スペイン人も多く奴隷貿易に関わっていたのだろうと思っていた。
しかし、実は16~18世紀にかけては直接関わることは多くなかったようだ。(40~41頁)
奴隷船の積荷は奴隷そのものであるが、それと同時に船員、その中でも下位の船員である、水夫について触れられているのも興味深い。
船長にとっては水夫も同様に邪魔なもので、用が済めば鞭打ちや食事を抜いたりして逃亡するように仕向けたり、打ち捨てられたり、過酷な扱いを受けていたという事実は衝撃的だ。(81~96頁)
奴隷制廃止となってからも、実は現代も奴隷売買は続いている。
奴隷売買というと歴史の話、現代とは関係ないと思いがちだが、実はユニセフによると西アフリカでは子供が一人15ドル程度で購入され、ココアやコーヒー農場で働かせられたり、女子は性奴隷となっているという。(228頁)
私だって安くて良いものがあれば買いたい。
ココアやコーヒーといったプランテーション作物は好んで消費する。
しかしそれが誰かの犠牲のもとで安くて美味しいのならば、それは道義的に正しいことではないだろう。
企業の責任が問われる時代になってきた。
私が飲み、食べ、着るものがどうやって作られているのか、そこを企業は明らかにした上で、適切な値段での取引を是とする社会が求められる。
そして私たちもそれを良しとできる意識の転換、選択が求められている。
Posted by ブクログ
奴隷船という蛮行が、特別の悪意ではなく、純粋に経済的合理性に基づいて行われていたことに、単なる残酷物語以上の恐怖を感じた。
現在そして将来的にも、経済的合理性によって、容易に、人間の生命や尊厳がたやすく損なわれることがあるのは間違いなく、警戒心をもって生きていくべきと思った。現代でも奴隷的な児童労働もあるし、先進国でもブラック企業事例などは枚挙に暇がない、
Posted by ブクログ
大型機械のない時代、奴隷は「ヒト」ではなく、「モノ」であった。大量の商品を生産するために必要なのは、土地や工場、原材料、そして奴隷だ。奴隷は主にアフリカで調達され、大農場や工場に輸送され、消費される。
そんな奴隷貿易を担ったのが大量の奴隷を運搬することに特化した奴隷船。奴隷たちは鎖で繋がれ、立つことのできない高さの天井とまともな通気ができない船底に毎日16時間寝かされる。与えられるのは1日2回の食事と体操の時間だけ。
奴隷の死亡率や奴隷以上に過酷な扱いをされた水夫、船を乗っ取った奴隷たちなど、本書は奴隷船をめぐる数々のエピソードを紹介し、さらに奴隷制度の発達と奴隷解放の歴史を説く。
奴隷解放といえば、リンカーン大統領が頭に浮かぶ。が、彼が登場する前にヨーロッパですでに奴隷制度に反対する運動が起こっていたようだ。人間は同じ人間を虐げることを嫌悪する。人類にとって、奴隷船とは思い出したくない存在かもしれない。