あらすじ
鎮痛薬やワクチンなど、昔からある医薬品を中心に、その起源や薬の開発のいきさつなどを紹介しながら、その薬と社会とのかかわりが描かれています。現在の製薬企業のありかたや医薬関連の規制についての話や、とくに米国で社会問題となっている薬物依存症の状況も盛り込まれ、製薬をめぐる世界を俯瞰してみることができます。薬に関する科学的な説明部分もわかりやすく簡潔で、開発のいきさつは物語を読むようにドラマティックで興味を引き、しかも全体的にコンパクトにまとまっているので、一般の人も抵抗なく飽きずに楽しめる内容です。単なる薬にまつわる「小ネタ集」ではありません(もちろん、驚くべき小ネタもたくさんあります)。有史以来、ヒトはどのように薬と付き合い、法律を定め(そのことにより裏の世界が開花しました)、開発し、制度をもうけていったのか、そして、これからどうなっていくのか……。きっと世界史を見る目を変えてくれるでしょう。
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Posted by ブクログ
病院に行って、診察を受けたとき、特に何もするわけでもなく、聴診器を当てて、「はい、○○さんお薬出しておきますからね。お大事に。」
のような、治療(=薬をだすだけ)が多くなってきていないでしょうか。
SFのような時代になってきました。
もう糖尿病も薬だけで治る時代になるでしょう。
この本で、改めて感じたことをメモしておきます。
1.今までの薬は低分子薬。これからはまったくちがう高分子薬の時代がくる。
たとえばアスピリン、なんて超小さい分子構造。化学合成して作るもの、というのはそのようなものだった。これからはモノクローナル抗体(大きい)が癌などの特効薬として普通に処方される時代になってくる。特許が切れる2024年以降に本格化の兆し。
2.36%の人に効果がありました ← 疑ってかかろう!
宣伝は製薬会社が作ったもの(=彼らの言い分)。嘘ではないかもしれないけれど、故意に誤解させるような数字のトリックがあるかもしれない。
この本には、100人中3人に発生した心臓発作(偽薬グループ)に対し、2人の発作(当該薬品投与グループ)と改善され、3人→2人になったのだから1/3に改善効果があった、という事例が載せられています。
彼らの言い分は、36%の効果があるのだから、100人の人は一生涯薬を飲み続けることが望ましい、です。TV等で宣伝され、さらに数年すると飲み始めるべき基準値が切り下げられることでしょう。
3. 薬を飲むことで安心していませんか?
「俺さ、痛風の薬飲んでるからさ、ビール大丈夫なんだよね。」
「コレステロールの薬飲むようにしたんだ。だからステーキに厚くバター塗っても大丈夫。」
後者は米国人のようですが、薬を処方した結果、処方しなかったグループに比べて肥満度がアップした、と書かれていました。アメリカ映画を見る限り、さもありなん、と思いました。
薬を飲んで慢心するのではなく、その薬を飲む意味、意義、効果(費用、期間、効果、副作用、気持ちの持ち方)をトータルで考えて飲むことを決めないと。
製薬会社の言いなりになっている(この本を読んで、TV番組も製薬会社への忖度が相当入っているな~、と思いました)ところがないか、よく考えましょう。
飲むことで、結局お金かけて逆に体を悪くしてしまっていることも多そう。喜んでいるのは製薬会社だけ。
最後に。
この本に限ったことではありませんが、"X線回析" こんなことばはありません。
(とても気になったので書きました)
X線解析とは、X線の回折(かいせつ)現象を利用して、それを計測し、集計・分析して解析(かいせき)することをいいます。
Posted by ブクログ
鎮痛薬やワクチンなど、昔からある医薬品を中心に、その起源や開発の裏話、そして薬と社会との関わりが描かれていた。個人的に印象的だったのはスタチンの章。著者自身に届いた保健組合からの手紙がきっかけで自ら論文を調べ、コレステロール低下と心疾患リスクの関係を検証しているくだりは非常に興味深いものであった。また同章で紹介されていたジェレミー・A・グリーンの著書(Prescribing by numbers)も気になる。現時点では日本語訳版は未刊だが、出版されたらぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
・アヘンやモルヒネなど聞いたことのあるクスリの歴史と背景がよくわかる。
・薬がたくさんの研究者によって完成させられるものであり、知の集大成であることがわかる。
Posted by ブクログ
人類史に重要な影響を与えた10の薬が紹介されている。インスリンのような誰もが知る薬ではないがアヘンのように知る人が多いものからモノクローナル抗体のようなものまで様々だ。
米国のオピオイド汚染の話をある通り、生涯に薬摂取量はずば抜けている。一方日本はどうなのだろう。
こうした薬学、科学の進歩は見ていて面白い。
科学者の中にも魅力ある人が多く、レディメアリーの様な女性の社会進出の先駆けから、ミルスタインとケーラーの様な理想的な上司、友人関係もあるのだと驚いた。
薬学に興味があるならとりあえず読んでみると新たな発見があるのではないか。
ただ、勃起薬を確認するために聴衆の前でズボンを下ろすブリンドリーはやばい。