あらすじ
氷野照明に勤める奈良瑛子が近所で見つけたのは、カフェ・ルーズという小さな喫茶店。そこを一人で切り盛りしているのは、かつての同僚・葛井円だった。海外の珍しいメニューを提供する素敵な空間をすっかり気に入った瑛子は足しげく通うように。会社で起こる小さな事件、日々の生活の中でもやもやすること、そして店主の円の秘密――世界の食べ物たちが解決のカギとなっていく。読めば心も満たされる“おいしい”連作短編集。
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大好きな一冊です^^
近藤さんの本は初めて拝読しましたが、すっと物語が入ってきて、あっという間に読み終わってしまいました。沢山のスイーツが出てきますが、ついつい調べて自分も見たことない食べ物にワクワクしっぱなし!いつか海外に行ったら本場のツップフクーヘンを食べてみたい!短編集なので色んな視点から物語を見れるので飽きず、
読み終わった後はとっても幸せな気持ちになりました^^
本当に大好きな一冊になりました!
Posted by ブクログ
カフェ・ルーズという小さな喫茶店のお話( ᴗˬᴗ)
店主の円がときどき旅に出て出会ったメニューなどを提供していて、知らない名前の料理がたくさん出てくる!このお店のコンセプト通り、ほんと海外を旅してるかのような気持ちになれそう。居心地の良いカフェが近くにあるって素敵だなぁ(*ˊ˘ˋ*)
チーズケーキもココアも好きなので、話に良く出てくるロシア風ツップフクーヘンが気になる!(でも噛みそう!言いにくい!笑)
カフェ・グルマンも良さそうだなぁ♡思わず検索してみたけどこれは見るのも食べるのも楽しそう( ˶'ᵕ'˶)⸝♡
店主や主人公も言っていたが、ほんと世界は広くて、自分が常識だと思ってたことは全然違ったりする。お菓子1つでも色んなことに気付くことが出来るのは凄い。
殺人!とかじゃなくてこういうコージーミステリっていいな。それをスイーツで解決する。まさにカフェ店主⟡.·
近藤史恵さんは2作品目ですがサクサク読み終わることができました♡次巻もあるようなので早く読みたいですദ്ദി ˃ ᵕ ˂ )
Posted by ブクログ
いいなあ、私も近所にこんなカフェが欲しい。
自分の選んだもの、選ばなかったこと、その選択で自分の人生はできていて、選ばなかったことだってずっと付きまとう。主人公と同い年だからこそ、胸に響いた。
Posted by ブクログ
【苺のスープ】
瑛子と円の登場回。
瑛子がたまたま休日にポタリングをしている最中にカフェを見つける。そこは6年前に会社を辞めた円が経営する喫茶店「カフェ・ルーズ」だった。瑛子は円が退社する時に「飲食なんてやめた方がいい」と言っていた。
カフェ・ルーズは月の上旬は全て休み。そこで円は旅に出て商品アイデアを仕入れたり、店の仕込みをしたりするらしい。
中村あずさとその彼氏正彦の話。
正彦はあずさとの結婚を機にカレー屋をやりたいと言っていた。瑛子と3人でカフェ・ルーズに行った時、円は正彦の発言に引っ掛かった。
借りようとしているビルがあと1年で取り壊される事。また、彼氏がスパイスに詳しくない事。
結果正彦は結婚詐欺かどうかはわからないまでも、あずさの貯金目当てだった。あずさは正彦を叩き出して婚約解消するのだった。
【ロシア風チーズケーキ】
カフェ・ルーズは円の祖父母の家の跡地に作った。相続した土地を3分の2売却し、残った土地で経営しているらしい。
得意先のスルタナホテルの担当である上野から「酒は飲まないからお中元で酒を贈らないでほしい」と言われる。瑛子と亜沙実は不審に思うが、会社から酒を送った履歴はない。
そんな中、瑛子はカフェ・ルーズで上野とホテルの女性館山の不倫現場を目撃する。2人は酒を飲んでいる。
結果お中元で個人宛に酒を上野に贈っていたのは館山だった。アルコール依存症の妻がいるのを知り、氷野照明を騙って上野の自宅に焼酎を送りつけ、妻のアルコール依存を拗らせ上野夫婦を別れさせようとしていたのだった。
最終的に館山はスルタナホテルを退職する。
【月はどこに消えた?】
会社の同僚、宍戸が困って給湯室にやってきた。係長の岩井が娘の留学先である北京から月餅をもらってきた。8個あるから部署の8人で分けてくれと言われたが月餅は4つしかない。それを告げると岩井はカンカン。娘が嘘をついて数をごまかすハズはないと言う。
高級な月餅は中に塩漬けのアヒルの卵が入っている。大きいので2つに割ると1個につき2つ月が出てくる。娘からのメールは「月餅が8つ」ではなく「月が8つ」という詩的な内容であり、実際は月餅は4つだったのだ。
結局宍戸の月餅はカフェ・ルーズでみんなで分けて食べたのであった。
【幾層にもなった心】
中学時代の同級生の珠子が瑛子の家に遊びに来た。珠子は結婚して娘が1人。夫の恵輔はパティシエで京都のホテルに単身赴任している。
夜も更けて晩御飯をカフェ・ルーズに食べに行く事に。バングラディッシュカレーを食べて酒が回ってきた頃、珠子が夫の浮気を疑っている話が出る。
後日新幹線のチケットで恵輔の浮気?が発覚した。幼馴染みの女友達に会っていたのだと言う。浮気は認めず一旦離婚は保留に。
円は「お土産にはいつも色々なケーキを買ってきたのにドボシュトルタばかりになった」という証言から、日持ちのするケーキしかお土産にしないのは怪しいと踏んでいたようだ。
【おがくずのスイーツ】
カフェ・ルーズに招かれざる客がやってきた。
津島という背の高い女性で、円のことを「おがくずちゃん」と呼ぶ。良くないあだ名で円を呼び大声で話す女性に嫌気が差した瑛子は店を後にする。
店の前の駐車場で、先に店を出た2人の女性とすれ違う。その時に片方の女性が「殺してやりたい」と言っていたのを耳にするのだった。
次の日に瑛子からそれを聞いた円はハッとする。
津島は種﨑ハウジングという大会社の教育係だった。女性の2人組は宮本と山原といい、仲の良い従姉妹。宮本は新入社員研修で罵詈雑言を浴びせられ種﨑ハウジングを退社したのだと言う。
円は津島にスペイン語講座で一緒になり、クリスマス会で作っていったおかくずという意味のポルトガルのスイーツ「セラドゥーラ」を出してから辛く当たられるようになったという。津島はおがくずのような自分の存在を突きつけられる気がしたのだろうか。
【鴛鴦茶のように】
夜遅くカフェ・ルーズに背の高い、しかし若い女の子が入ってきた。瑛子は心配するも円に「さらに危ない所に行かれるよりは」と言われそっとしておく事に。
帰りにマンションで一組の男女が女の子を探しているのに出会う。声をかけると、思った通り結希という子を探しているらしい。2人はお互いにどこか他人行儀でよそよそしかった。
後日瑛子は母親?の香奈と近所のスーパーで出会う。先日のお礼にと二人でカフェ・ルーズに向かうことに。香奈は結希の母ではなく、大久保と結婚間近の結希の塾の先生だった。結希の深夜行動に悩む。
さらに別の日に瑛子と結希はカフェ・ルーズで出会う。結希は鬱になり離婚した母親に香奈を重ね、上手くいくか怖いのだと言う。円に出された鴛鴦茶(ユンヨンチャー)は紅茶とコーヒーのブレンド。鴛鴦茶のように合わせてみないと夫婦はわからないと円は結希に言うのだった。
【ホイップクリームの決意】
瑛子はカフェ・ルーズの店内で不審な噂話を耳にする。カフェ・ルーズが「ヴォワヤージュ」に似ているという話。調べてみるとカフェ・ルーズの駅を挟んだ近所にあるらしい。
瑛子が偵察に行ってみると店内は大きく広い。メニューはカフェ・ルーズと酷似している。だが食べてみると日本人の口に合うかもしれないが無個性でカフェ・ルーズには及ばないようだ。
後日帰ってテレビを見ているとヴォワヤージュが特集されていた。ザッハトルテが売りで、本場では生クリームを付けて食べるが日本人の口には甘過ぎて合わないとの話だった。
ヴォワヤージュをクビになったという若者が円に話しかけ、新庄というヴォワヤージュのオーナーが円を目の敵にして店を出したことを告げる。
一方カフェ・ルーズでも円が知り合いのケーキ屋からザッハトルテを仕入れて出してみようかと言う。生クリームを添えて出された瑛子は少し戸惑うが、砂糖の入っていない生クリームは濃厚なザッハトルテをさっぱりさせてくれる。
本場ではさっぱり食べるために生クリームを使うのだった。本物の味を追及することで円はヴォワヤージュと戦っていく事を決意するのだった。
【食いしん坊のコーヒー】
年末の忙しさにかまけて瑛子が久しぶりにカフェ・ルーズに訪れると店内は混雑していた。ヴォワヤージュに客を取られたと思っていたが「カフェ・グルマン」というワンプレートにコーヒーと一口サイズのケーキが複数乗ったプレートを始めてSNSで流行ったらしい。
それから数日後、ヴォワヤージュをクビになった若者(宮郷冬馬)に駅で声をかけられる。宮郷に「円に惚れたからカフェ・ルーズで働きたい」と相談されるが瑛子は一蹴。先に席を立ってしまう。
その足でカフェ・ルーズに向かうと、自分の指定席に見慣れない女性が座っている。彼女はベルギー在住の新庄遥という、円の親友だった。仲良く見えるが名字がヴォワヤージュのオーナーと同じなのには何かあるのだろうか?
【思い出のバクラヴァ】
年末、瑛子は風邪を引き体調を壊してしまう。病院に行くと、津島に出会う。津島は「円は前からあんなに毅然とした感じだったか」と聞いた。瑛子はそれで同僚時代、円が人との関わりを避けていた事を思い出した。
後日病み上がりのタイミングで同期で人事課の澤木亮子と出会う。うどんを食べに行くことになり、それとなく円の事を聞き、円が飲食店をやるからではなく介護の為に退職したと知る。
その後カフェ・ルーズに顔を出した瑛子は試作の「バクラヴァ」をいただく事に。円は幼い頃からお菓子作りが好きだったが、祖母以外は「甘過ぎるから」と食べてくれなかった。トルコに行った時、甘過ぎるバクラヴァと出会い「自分の常識」が間違っていなかった事を実感した。
そうしていると店にヴォワヤージュのオーナー新庄が現れる。新庄は祖母が亡くなった責任追及で円を訴えると言って去ってゆく。新庄は円の兄だった。
【最終話】
円は祖母の養子になったので「新庄」姓ではなかったのだった。祖母は円を可愛がり全財産を円に相続した。しかしそれ故に介護放棄を疑われることになってしまったのだった。
瑛子はその事実を一部冬馬から聞かされる。
後日瑛子が店に行くと看板が出ておらず開店休業状態。円と遥が一緒にいて米とミルクのデザート「アロス・コン・レチェ」を勧められる。甘いお米に違和感はあったが優しい味で瑛子は気に入る。祖母の好物だったらしい。
100円ショップの場所を教えてほしいからと瑛子は遥と連れ立つて店を出る。会話の中で遥は新庄の元妻だという事を知る。遥は元夫が円を訴える準備をしている事を知らなかった。連絡先を交換して二人は別れる。
数日後、遥の計画で瑛子、新庄がカフェ・ルーズに集められる。そこで遥は祖母が亡くなった日に介護していたのは自分だと告げる。円はそれを庇い、遥は当時新庄家に罵られるのを恐れ黙っていたのだった。既に遥は全て弁護士に話しており、訴訟は阻止された。
カフェ・ルーズの3周年パーティーが開かれた。少人数の中、瑛子も招かれて参加する。そこで円の恋人は女性なのだと知る。遥や瑛子もそれで好かれていたのだ。同性愛もアロス・コン・レチェみたいに最初は違和感があってもいずれ受け入れられるのだろう。
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瑛子の周りでちょっとした事件が起きて、カフェ・ルーズを通して事実が明らかになっていく流れ。
ちょっとミステリー要素のある短編集という内容。話の規模が小さいと読みやすくて助かる。
事件の内容もあまり重たい物はなく微笑ましい内容のものが多くて楽しく読めた。
食べ物を食べている時の食レポも良い。難しい言葉を使うでもなく美味しそうに表現されている。孤独のグルメみたい。カフェ・ルーズに行ってみたい。
終盤は円の生い立ちにまつわる話。ラストとしては相応しい流れだったけど、個人的には序盤から中盤の人間交差点的な話をもっと見たかったかな、と思った。
→と思ったら続編が出ていた。津島や冬馬は良い脇役だと思ったので、出てくるかわからんけど続編も楽しみですね。
心地よい読み心地
タイトル通り 瑛子さんと一緒にお菓子を通して知らない街へ旅に出たような爽やかな、ちょっと自分の心の隅に日の光を恐る恐る当ててみたような読後感で満足しました。ただ最後の円さんの恋人のお話は余計だったかな…と勝手に思ってしまう。せっかくの心地よさの中 そこだけ瑛子さんとの関係がなんとなく生々しく感じてしまったので ☆マイナス2。ただ、この感想は私のわがままで 実際には必要なのかも