【感想・ネタバレ】理学博士の本棚のレビュー

あらすじ

若い頃に読んだ本が、その後の人生に大きな影響を与えることがある――。テレビや雑誌、メディアで活躍する「科学の伝道師」にして、京大人気No.1教授が、青春時代に大きな感銘を受けた意外な中古典の名著12作品を紹介。あらすじ、著者紹介、本文からのピックアップ、そして「鎌田の解読」として、著者がどうその本を読み、科学者としての視座を作ってきたかを語る!


[本書の内容]

第1冊 寺田寅彦『天災と国防』
第2冊 野口晴哉『風邪の効用』
第3冊 立花 隆『青春漂流』
第4冊 畑 正憲『ムツゴロウと天然記念物の動物たち』
第5冊 サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
第6冊 ミヒャエル・エンデ『モモ』
第7冊 アラン『幸福論』
第8冊 伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』
第9冊 手塚治虫『火の鳥』
第10冊 トーマス・マン 『トーニオ・クレーガー』
第11冊 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』
第12冊 勝 海舟『氷川清話』

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Posted by ブクログ

10代の頃、自己形成に大きな影響を与えた青春読書本。京大人気教授が紹介する全12冊のセレクトは独特。

寺田寅彦「天才と国防」、野口晴哉「風の効用」、立花隆「青春漂流」、畑正憲「ムツゴロウと天然記念物の動物たち」、サリンジャー「キャッチャーインザライ」、ミヒャエル・エンデ「モモ」、アラン「幸福論」、伊丹十三「ヨーロッパ退屈日記」、手塚治虫「火の鳥」、トーマス・マン「トーニオ・クレーがー」、ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」、勝海舟「氷川清話」の12冊。それぞれ本文ピックアップ、あらすじ、解読、ポイント、次に読みたい本という構成。

理系本が意外と少なかった。10代の頃、食い入るように読んだ本が中心。本書は個々の本の魅力をその後の人生への影響そして再読した印象なども記載。下手な読書論よりも余程役に立つ。さらに興味を持った読者向けに多くの本が紹介されているのが嬉しい。

実は現在中2の子の父。本は嫌いではないようで、読むのは速いがゲームのが楽しいよう。なんとか読書沼に引き込みたいのだが、人に与えられた本は面白くない。本書に登場する本はきっと役に立つので、強制はせずさりげなくパパ棚に並べて置こうと思う。思えば自分は特にもっと小説を読むべきだったように思うので。

もっと売れても良いような掘り出し物の一冊でした。

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2020年08月01日

Posted by ブクログ

筆者の研究への情熱が、どのような言葉で培われたか。何が筆者を駆動させたか。筆者の実体験と紐付いた「中古典」の紹介で、未読のものの内容も分かり面白かった。ヘッセ「車輪の下」は、現在4歳の息子には大学生になる前までには読んでみてもらいたい。自分が22歳で手に取った時点で読む時期を逸した、と感じたぐらいだったので。

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2021年05月28日

Posted by ブクログ

理学博士の本棚といっても、その研究に関連する本とか研究に役立つような本という事ではない。理学博士に至るまでの人格形成や判断に影響した本を紹介してくれる内容なので、肩の力を抜いて読むことができる。

紹介される本は立花隆とかミャエルエンデなど。『モモ』なんて小さい頃に自分で読んだのか、読んで貰ったのかすら覚えてないし、もしかしたら読んだ事すらないのかも知れないくらい。

だが、家にその本があって背表紙が視界に入るだけで中身を薄っすら思い出すのだから、それこそ本の凄さだと改めて思う。タイトルや物理的な〝本という存在“に凝縮された世界があり、一度触れただけでも確かに記憶に刻まれ、タイトルを読めば中身が圧縮ファイルを解凍するような作用があるのだ。

ー 素直に根が切れない場合は猿を半殺しになるまで痛めつける。(中略)猿も人もほんとの真剣勝負(中略)自己嫌悪に陥るくらいに猿をいじめ抜くんです。ここが猿の調教で一番つらいところですね …「猿を殺してしまうほど真剣に猿を調教して舞台に出てきているんだ」と彼はうめく。まともに読み進められない壮絶な場面である。しかし、その日から自分の生き方が変わった、と村崎はいう。実際にその後、上京時に見せたしたたかな行動は、猿回し調教師・村崎太郎が「青春の漂流」にピリオドを打ったことを物語る。涼しい顔をした大人がまことしやかに語る人生論は退屈だ。相反する価値観や力学のなかで選択に迷う若者が、現在進行形のとまどいのさなかに語る言葉は重く、そして美しい。

ー 自分の置かれた環境が苦しくてたまらないと感じたら、それは人生を導く切符を手に入れるチャンスなのだ。こうしたいくつもの逸話が私の腹には響いた。世代を超えて読者が共感する所以ではないだろうか。

本書で紹介された本は改めて目を通してみたい。それとは別に本書の視点で紹介されるような名言にも心奪われる。全ての出会いは微かかも知れないが自身の血肉になる。本そのものでも、その伝聞でも良いのかも知れない。

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2025年10月18日

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