【感想・ネタバレ】戦始末のレビュー

あらすじ

関ヶ原の合戦後に、西軍で唯一領土を減らされなかった所以とされる「島津の退き口」。70万石を守ることにつながった義弘のその手並みとは! はたまた、織田信長最大の窮地をまさに身を挺して救った羽柴秀吉の「金ヶ崎の退き口」。後に天下取りを競い合う、明智光秀や徳川家康も共に戦ったという奇跡の真相とは!──ほかに柴田勝政、馬場信春、堀秀政、石田三成、高橋紹連ら7人の武将たちが負け戦を「始末」して、あるいは出世の糸口をつかみ、あるいは華々しく散っていった「殿軍戦」を描いた戦国小説集!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦国期のしんがりの事例(?)についてまとめた著書かと思って購入したが、様々な合戦の撤退戦を題材にした小説だった。
"退き佐久間"のように撤退戦に関する異名を持つ武将も登場しないようなので、読み始めはちょっと拍子抜けしたが読み進めるうちに面白くて全く気にならなくなった。

後衛は後方警戒だけでなく、後詰めや全体を押し上げる役割もあって優れた状況判断が要求される。部隊で2番目に強い(信頼できる)やつが最後尾を行くと言われるくらいに大事な位置だ。
特に、勢いに乗る敵を抑える殿の役目は重要であるが困難でもある。崩れれば全軍が潰走することになり追撃でとんでもない被害が出うる。殿が活躍するのは敗戦後なので敵は勢いに乗って疲れも忘れて士気が高い。対して自軍は敗戦で士気も落ち疲労も色濃い。本能から逃げ出したい気持ちも強い。これを抑えるのは至難の業だ。
そういった場面での心理をいろいろな人物で描いている。基本的に負け戦だが、そこで死に花を咲かせるために奮い立つ者、恐怖の中死んでいく者、生き残るために発奮する者、皆戦に生きる"武将"であるが、十人十色、様々な反応が描かれる。
ショートストーリーの集まりだが全体を通して秀吉の立身出世から関ヶ原までの時間軸で描かれており、各話は緩い繋がりをもっている。前の話の登場人物が後の話で出てくることもある。

高橋紹運の話を読み始めた時は「(戦死時の戦は)撤退戦ではないぞ」と思ったが、戦の“始末”ではあるので表題とは矛盾しなかった。
撤退戦ではないが「優勢に迫る敵の前で劣勢の味方(本隊)の盾となり退かぬ」という姿勢はしんがりであるとも言える。

勇ましい死に様だけでなく、情けない様子や自信が砕け散る絶望、敗戦の悲哀を上手く描けていると思ったので、著者の他の作品も読んでみたくなった。

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2024年04月14日

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