【感想・ネタバレ】タイガー理髪店心中のレビュー

あらすじ

老いた妻の発作的な豹変に戸惑う夫の緊張感をユーモアと共に描き、選考委員諸氏に絶賛された第4回林芙美子文学賞受賞作「タイガー理髪店心中」。幼少時に亡くした母親の記憶を繰り返し反芻する老女の感慨を描く表題作。独特な土着性で伸びやかな資質を感じさせる大型新人のデビュー作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

83歳理容師虎雄とそれを支える寧子の話。

虎雄は寧子の認知症を認めているくせにそれを認めず放置している。仕事と友人にしか手間暇を掛けず、身内程蔑ろにし、人を下に見る癖が抜けないあの感じ。上の世代は特にそのタイプが多いよなぁ、と苦々しく思う。何しろ私の父と非常に似ている。
子供時代にいじめていた同級生が店に訪れた時「許しに来てくれたのだ」と感じる図々しさ。そのおめでたさに苛つくが確かにその思考回路も分かる。相手を思いやる事をサボってきた人ならではの結論。

物語はそんな虎雄の異常さをうっすらと纏わせながら描かれる。傍からみた老夫婦ののんびりとした光景を浮かばせながら。これはホラーかと思った。認知症の寧子の方がよっぽどまともに思える。

もう一つの収録作の老夫婦。
満州からの引上げ組という背景があまりに重く、言葉がない。
我が子を母親が殺さねばならない。こんな狂った世界が現実に、そして手の届く世代におこっていたという事実が信じられない。

読み味もとても良い。デビュー作とは驚きです。

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2024年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編2作品とも老人から語られる物語。

●タイガー理髪店心中
できることなら向かい合いたくない、事勿れで過ぎれば、主人公の誰にも明かせない過去と今の胸の内は物語にはならないのだけれど
長年連れ添い、一緒に苦しんでこようと、波風たてないように繕って過ごす時間は、必ずしも愛情だけを育むものではないとぐずぐずと考えてしまう作品。
狂気や気味の悪さの表現が天下一品。


●残暑のゆくえ
70代の女性が幼少期の1年ほど、母と過ごした日ばかりにとらわれていることが気になるが、読むうちに納得がいき、寄り添って抱きしめたいような気持ちになった。

戦争、特に満州から帰ってきた方達の物語で苦しく想像するに耐え難い内容も、主人公が「泣いたことがない」と言うとおり明るくユーモアで日常を生きているために読み進められるのだけど、何も語らない人の強さが切なかった。

物語だけれど、世界で戦争が起こっている状況でご縁のあったこの作品は考えさせられるし、
生き残っても時間は止まり、殺されていることを忘れてはいけない。

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2022年02月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく洗練されて上品な印象すら受ける、静かな狂気。少しずつ少しずつ食い込んでくるような、削られていくような。

迫る狂気と不穏な空気、美しい風景描写が同時に、静謐に描かれる。そして当たり前の様にそこにある自然な殺意。恐ろしい…けど恐ろしくない。なんて言えばいいのかわからない。

舞台が理髪店なところもいいな。清潔感があって。

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2021年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同級生へのいじめの一環で、自分が深く掘った穴に、我が子が落ちて死ぬ。因果なことだなぁ。一見穏やかな老夫婦の辛い過去や、老老介護の場面で生じる互いへの殺意が描かれていた。

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2023年06月04日

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