あらすじ
1963年、坂本九の『上を向いて歩こう』はアメリカで『SUKIYAKI』とタイトルを付けられ、大ヒットを記録した。歌詞と関係なくスキヤキと名付けられたのは、ひとえに当時、アメリカでスキヤキが大流行中だったからだ。なぜ、スキヤキはそれほどまでにアメリカ人を夢中にさせたのか。
19世紀に最初に和食が注目されたわけや、いまやハワイ名物となったスパムむすびの発祥、スシ流行前夜の関係者の努力など、アメリカでの和食の歴史を、知られざるエピソード満載でたどる。
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Posted by ブクログ
日本での英会話学校や出版関係で勤務経験のあるハワイ生まれの筆者が、アメリカにおける日本食の歴史を愛情とユーモアを交えて語る。タイトルの「スキヤキ」は、「日本人と食生活」と言い換えることもできる。
アメリカへ出稼ぎのために移住した先人達の苦労とたくましさが圧巻。賃金こそ当時の日本よりはるかに多く与えられたが、荒野を開拓する過酷な環境の中でまず食材の調達をし、「いかにしておいしく作れるか」を仲間と協力しながら探求していく様は実にエネルギッシュだ。
時折、自虐的なまでに白人達の差別意識と行動があからさまに語られている。それだけ筆者が日本食とアメリカで日本食を広めた先人達へ敬意を表しているということだろうか。
日本人から見ればヘンテコな進化を現地で遂げた「和食」もある。しかし日本人も外国の料理をアレンジし、独特の洋食や中華料理などを創り出してきた。海外の和食も同じように現地化していった結果だ。食は多様性を受け入れながら、その土地で豊かに育っていくものだ。