あらすじ
中流という生き方はまだ死んでいない。
万人を豊かにする進歩的資本主義とは?
上流エリートか、貧困層か……。未来の選択肢は、この二つだけではない。
今こそ、分断なき世界について語ろう!
「スティグリッツはとてつもなく偉大な経済学者だ」――ポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞経済学者)
「クルーグマン、ピケティと並び、21世紀のグローバル資本主義論争をリードしてきた偉人」――アンドリュー・アンソニー(ガーディアン紙)
ノーベル経済学賞受賞経済学者が、市場原理主義に異議を唱え、経済の再生を提言する!
いまや経済や政治は、一部の富裕層や大企業だけのためのものになってしまった。
さまざまな産業を、わずかばかりの企業が独占的に支配するようになった結果、格差が急激に拡大し、成長が鈍化している。
だが、我々が直面しているこのような状況に対し、打つ手がないわけでは決してない。
スティグリッツによれば、富や生活水準の向上を真にもたらすのは、学習、科学やテクノロジーの進歩、法の支配だという。本書で示される政策改革に賛同する人が多数派を占めれば、いまからでも、豊かさが万人にいきわたる進歩的資本主義を構築することは可能だ。そしてそれは、誰もが中流階級の生活を実現できる社会である。
市場原理主義から予想される危機と、進歩的資本主義の基盤を提示する本書は、現代社会の危機的状況を明らかにすると同時に、困難な時代を乗り越えるための、正しい資本主義のあり方、すなわち「それでも資本主義にできること」を示すものである。
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Posted by ブクログ
経済学の大御所であるJ.スティグリッツ氏の著書。本書の主要なテーマは、大きな政府の必要性だろう。20世紀後半に勢力をつけた自由主義経済は現在でもその勢力を維持している訳だが、こうした社会にスティグリッツ氏は警鐘を鳴らしている。例えば、企業がタックスヘイブンと呼ばれる地域に生産拠点を移すといった、いわば法の抜け穴を利用して生産活動を行うインセンティブを持つといった現状は、自由主義経済が力を持ち過ぎたがゆえに法整備が追いていことに起因すると指摘している。
それに関連した本書のもう1つの主要テーマは、トランプ政権批判である。前述のように、法を掻い潜った企業の生産活動を是正するために政府介入の重要性が今まさに高まっているにもかかわらず、トランプ政権の暴挙によって国民の政治への信頼性が落ちてしまっていることに対する批判である。これは、次回の大統領選挙の争点にもなるリアルタイム性のある重要な指摘である。
以上のように、本書には重要な論点が詰まっているため一読の価値は十分にあるだろう。
Posted by ブクログ
ケインズ経済学の大家、スティグリッツによる経済面から見たアメリカ社会の問題と解決策の提示。政治と経済の連続性を訴え、新自由主義的な市場原理至上主義を批判している。独占に対する問題点や金融自由化の弊害に対する洞察、批判は見事。ただし、解決策として提示されている政策には(日本の国土の均衡ある発展の展開等を鑑みて)やや疑問のある部分も見られる。政策的な側面が多ければより良かったと思う。
事前準備なしでも読めるが、可能であればやや経済学の知識があると良い。経済学の論理における前提への疑念がより理解できると思う。スティグリッツは市場原理の自然な機能を否定しているが、市場が潜在的に果たすべき役割までは否定していない。概して、スタンスは明確であるが経済学的な目標に対しては常識的な主張と言うべきである。その主張は市場の限界とともに経済成長のための市場の力の解放も包摂している。さらに言えば、同著で提示される解決策には経済学的には自明な多くの前提、単に分配を求める者にとっては不都合な、がある。政治的に使われるような粗雑な再分配のデマゴーグとは一線を引いて考えるべきであろう。