あらすじ
デビュー以来連続して芥川賞候補になってきた二十代天才女性作家が、沈黙を破り放つ決定打。
作曲に天賦の才をみせる15歳の妹。母語から離れ、自らの言語表現を模索する姉。『肉骨茶』『影媛』で注目を集める高尾長良が音楽の都ウィーンを舞台に繰り広げる待望の本格芸術小説!
芸術の都、ウィーンへ音楽理論の大家である父を尋ねた姉妹。
妹・真名は外界との接触を拒み、内から湧きあがる音楽を汲みだす。翻訳家の姉・有智子はその天分を生かすべく心を砕くが、父の言葉によって絶望と嫉妬を思い知らされる。
音楽が記憶に掬いきれない価値を刻印するなら、言葉は底に穴の空いた器に等しいのか――。
音楽と言葉がぶつかり合う新鋭の傑作。
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Posted by ブクログ
本作品に登場する姉妹、そして父親の役割が意味しているものを考えると、音楽がいかに崇高なものなのか分かる。有智子は言葉の役割を持つ。妹の真名は音(音楽)の役割だ。父親は音楽理論の権威で、音と言葉の両方を表している。そんなふうに読み取った。
長く離れていた父に姉妹が会いに行くのだが、父と真名は父の気持ちを受け止められず反発する。有智子は音と言葉で対立し、真名への嫉妬心を燃やす。音楽の素晴らしさは、音と言葉の融合だと思う。どちらも重要だが、バランスよく融合させるのは難しい。
さて、本書のプロローグが謎である。有智子の手記を持ち込んだ“彼”は誰? 手記に目を通す女性の“わたし”は誰?
Posted by ブクログ
有智子と真名。ウィーン。
難しくて美しい。
翻訳された小説のような文体。
油断すると上滑りしてしまう。
だから、慎重に読み進めた。
・・・それでもわかんない所が出てきちゃう。
でも、はっきりとわからなくても、
「あたしは有智子じゃないし、まあまあわかればいっか。」
みたいな感じでわからなさを心地良いものとして読んだ。
そしてそして「有智子」ってかわいい。
頭の中で発声?するたびに「ふふっ。」て心の奥底で喜びを感じてた。
Posted by ブクログ
「デビュー以来連続して芥川賞候補になってきた二十代天才女性作家が、沈黙を破り放つ決定打。ウィーンを舞台にした愛憎のドラマ!」ということで、期待しつつページを捲る.....
芥川賞関連の作品とは相性が悪いのだと思った。
流麗な文章、音楽の都での愛憎劇を読み込んだいくのだが、私の心には残らなかった。
Posted by ブクログ
これぞ純文学という難解な小説。
芥川賞候補になったということで読んでみた初読みの作家さん。
う~ん。難しい。
翻訳文のような文体とそこはかとなく流れる音楽への深い憧憬。
やはり、音を文章にしようとするって難しいな。
『蜜蜂と遠雷』的なものを想像していたけど、まったく違った。どちらかというと主人公姉妹(さらにいうと姉)の心情風景を描いた作品なんだろうな。
やはり、芥川賞候補ってこういう作品だよね。
あの読みやすい文体の村田沙耶香の『コンビニ人間』が芥川賞を取ったのってそう考えるとすごいことだ。
まあ、この本を読んで改めて恩田陸と村田沙耶香のすごさが分かりました(笑)。