あらすじ
モノとカネがあふれる世界一の金持ち国・日本。だが一方では、環境破壊、過労死、受験競争、老後の不安など深刻な現象にこと欠かず、国民にはゆとりも豊かさの実感もない。日本は豊かさへの道を踏みまちがえた、と考える著者が、西ドイツでの在住体験と対比させながら、日本人の生活のあり方を点検し、真に豊かな社会への道をさぐる。
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Posted by ブクログ
高校生のときに読んで、自分の問題意識の根底にあったのは、これだったかと気付かされた1冊。
経済的な豊かさだけではない豊かさを考える。
日本は豊かな社会か、つねに問い続けていかねばならない問いでもある。
Posted by ブクログ
古本屋で出会った書籍のためおよそ30年前のデータや価値観で書かれたものですが、それでも現在の社会に対しても通ずる内容と感じます。
・当時のお金や物質的な豊かさばかりに囚われそれ以外の豊かさを国民が享受できる状況にないこと
・「健康で文化的な最低限度の生活」をうたいながら実際には生きるギリギリでしか支援が受けられないこと
・その他仕事や生活があまりにも豊かさを感じられないほどに厳しくなっていること
・これらに対する批判や提案とヨーロッパ(特にドイツ)での取り組みやそれによる生活の様子
これらがとても印象的に感じました。カネやモノでしか評価されない豊かさについて考え、人生や生活をどうすれば豊かで満足に生活できるかを考えるきっかけになるのではないかと思います。
Posted by ブクログ
最近書かれた本、だと思ったら「1989年」と知り驚いた。
バブル崩壊前にこの内容を書いて出版するのは凄く勇気がいったと思う。
刷も重ねられているが、恐らくバブル崩壊後に売れ出したのだと思う。
それにしてもまさに今にも当てはまる状況でもあり、この時点から一層状況が進んでいるのであれば事態は深刻
ただ、多少外国のいい所取りをして、日本と比較をしている感があった
Posted by ブクログ
20年以上前に書かれた本であり,
私は,状況はかなり変化した,ととらえた.
その変化は,いろいろあると思うが,
・この本が書かれた時代に労働者として描かれ,
成長期,バブル,不況のなかを経た,現在の壮年のトップ世代が,
(ややともすると過剰な)反省に立ち返っているようなこと
(老人優遇,ゆとり教育,男女共同参画),
・一部ではあるが,若者や中堅層が
現在進行形で押し上げ盛り上げているようなこと
(環境問題,社会企業,NPO,フレックスタイムやゼロ残業,CSRなど),
・先進国としての基準を満たしたもの,または
他の途上国のふりみてわがふりを直したところ
(トイレやごみ箱など衛生,社会資本整備,新自由主義的な利益主導の価値観の否定).
もちろん,都市部と周辺部で細部に差はあるだろうし,
労働業種によっては悪化したものもあると感じる.
問題によっては手付かずのものもあるかもしれない.
さらに新しい問題もうまれている.
その責任を負うのはだれなのか,という点は,この本では「国民」と漠然だが,
経済的問題として(社会人・企業人的視点)
政治的・地域的・社会的問題として(市民・国民的視点)
どう読むのが正しいのか.迷う一冊
Posted by ブクログ
この本を読む直前にミヒャエル・エンデの『モモ』を読んだせいか、豊かな生活を送るための必要条件としての「時間」というものを、強く意識させられました。
この本が出たのが1989年。さすがに引用されているデータは古いけど、ポイントとなるところは今の時代でも色あせていません。中でも、日本人の労働時間の長さや、通勤ラッシュを耐え忍んで狭苦しい家に寝に帰るだけの生活でいいのか、という問題提起は、いかにもこの時代ならではだなーという感じです。いまは、通勤ラッシュは変わってないけど労働時間は少しは改善されたのかな。
著者が西ドイツで過ごしたためか、西ドイツはこんなに素敵な生活だった、それに比べて日本はとにかく住環境が悪い、という論点がけっこうダラダラ続くので、そこはふんばりどころ(笑)この著者は当時の日本の住宅を「ウサギ小屋」って表現するのが好きだったみたいです。
環境問題について高い関心を寄せているのも、当時のトレンドを意識してる感じです。そして、「技術は失敗が許されるゆとりのある技術を使うこと。原発のようなギリギリの技術を使うことは、自然や人間にとって危険であるばかりでなく労働そのものを非人間的にする」という主張には、3月11日を境に世界が変わった自分たちとしては、ドキリとさせられる主張です。こんな主張が23年前にあったとは、という感じ。
データはもう使えないので、その点で☆は2つマイナス。でも、問題提起されることの多い「豊かな生活」というベタなテーマについて、23年前から噴出していた問題点を包括的に理解するには良い本だと思います。