【感想・ネタバレ】自動車の社会的費用のレビュー

あらすじ

自動車は現代機械文明の輝ける象徴である。しかし、自動車による公害の発生から、また市民の安全な歩行を守るシビル・ミニマムの立場から、その無制限な増大に対する批判が生じてきた。市民の基本的権利獲得を目指す立場から、自動車の社会的費用を具体的に算出し、その内部化の方途をさぐり、あるべき都市交通の姿を示唆する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自動車を利用するすべての人が、関係する費用を考える。

1 道路整備(高速道路,一般道)
2 交通信号機整備
3 交通事故対応、保険
4 運転免許,自動車教習

1と2は社会的費用だが、適正に受益者が負担しているかどうかは分からない。

社会的費用の視点を明確に示した良書である。

とかく経済学は政治的な論調に振り回されすぎることがあり、
高速道路の無料実験も経済学的評価の枠組みを明確にしていない点に課題があるだろう。

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2011年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たしかにそうだと思われることが多い。
日本の道路行政の現実を鑑みても、無計画で適当になされているような気がしないでもない。
確かに幹線道路沿いにも狭い歩道、申し訳程度のガードレール、至近に建てられている住宅。幹線道路でなくても、踏切があれば渋滞が起き、そういう道路には路側帯しかない。
歩道橋も車が優先されていることの、証左にほかならない。
ましてや歩道に合わせて道が造られているのではなく、車道に合わせて道が造られている。これを人権と合わせて考えると、基本的人権の侵害と言えるかも知れない。全部変えるのは非現実的ではあるだろうが、一つの考え方では確かにある。
昔は交通戦争と云って年間3万人以上交通事故(事故発生から24時間にん以内に死んだ人)が発生していたが、今では4千人前後まで減った。しかしそのうちの3分の2は、65歳以上の高齢者である。

東京という街は、若い人に合わせて全てが設計されている。再開発され、少しずつ変わってきてはいるのだろうが、どこまで進むのだろう。立体交差や信号の時間の設定など、挙げるべき点は多々ある。

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2011年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
自動車は現代機械文明の輝ける象徴である。
しかし、自動車による公害の発生から、また市民の安全な歩行を守るシビル・ミニマムの立場から、その無制限な増大に対する批判が生じてきた。
市民の基本的権利獲得を目指す立場から、自動車の社会的費用を具体的に算出し、その内部化の方途をさぐり、あるべき都市交通の姿を示唆する。

[ 目次 ]
序章 (自動車の問題性;市民的権利の侵害)
1 自動車の普及(現代文明の象徴としての自動車;自動車と資本主義;アメリカにおける自動車の普及;公共的交通機関の衰退と公害の発生;一九七三年の新交通法)
2 日本における自動車(急速な普及と道路の整備;都市と農村の変化;非人間的な日本の街路;異常な自動車通行)
3 自動車の社会的費用(社会的費用の概念;三つの計測例;新古典派の経済理論;社会的共通資本の捉え方;社会的コンセンサスと経済的安定性;市民的自由と効率性;社会的共通資本としての道路;自動車の社会的費用とその内部化)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自動車の社会的費用、というタイトルに惹かれた。自動車を運転することが歩行者の基本的人権を如何に蔑ろにしているかについて論じている。その費用は一台200万円だという。

もっとも、交通事故による障害や死亡もしくは排気ガスによる疾患などは、当事者にとっては不可逆的な事象であり、金銭に換算できない『費用』である。目が覚めるような論考であった。

そしていっそう不味いのは、そのような当事者には低所得者層が多く含まれる。富裕層は自動車の交通量の多い・排気ガスの多い地域からは、その財力を使って容易に逃走できるからである。

我々の世界は社会的費用を内部化する方向に向かっているのだろうか。それとも、深刻な外部不経済を生贄の羊として積極的に捧げるようになっていくのか。どうも昨今は、後者が勢力を強めているように感じる。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 自動車にたいする経済的・社会的価値がますます高まっていた1970年代にあって、その負の効用について警鐘を鳴らし、そのコストの取り扱いについて具体策を提起した書。この時代にあってこのテーマということで、著者の先進性は際立っています。

 第1章「自動車の普及」では自動車普及の歴史が、主にアメリカを中心にして語られます。
 ここで自動車の普及が様々な経済分野の発展に寄与したことに一定の評価を行いつつも、騒音や環境汚染などで市民生活の質を劣化させた点を指摘しています。

 個人的に興味深かったのは、フォードの「Tモデル」がアメリカにおける自動車普及を飛躍的に高めた点。1900年にはわずか4000台そこそこの自動車生産台数が、1920年には実に200万台(!)をこえるようになったのは驚異的です。
 そして、1956年に導入されたハイウェイ・トラスト・ファンド制度。これによって自動車用ガソリンに課税された税金はそのまま全額が新しい自動車道路の建設に充てられるようになったのですが、その巨額な資金が一気に道路網を拡充させたことは想像に難くないでしょう。なんとも思い切ったことをしたものです。

 第1章の後半では、自動車の急激な普及が様々な弊害を生み出し、それによって環境や市民生活に配慮した制度の導入が徐々に進んできている、そのようなストーリーが展開されるのですが、これはおそらく第2章「日本における自動車」に対する布石でしょう。要するに「世界はこのように改善の兆しがあるのに、日本ときたら・・・」といったレトリックであるように感じました。

 第2章「日本における自動車」では、日本の自動車の普及状況が批判的に語られます。数字を用いた定量的な議論がある一方で、いささか感情論的な指摘も多いのですが、このような感情的な指摘は著者の議論の ”冷静さ” を減じさせる印象しか残さないため、個人的に残念です。
 ただ、よほど著者が当時の自動車の普及状況に憤懣やるかたなかったのかを理解できます。

 第3章「自動車の社会的費用」が本書のハイライトです。まず社会的費用とはなにか?ですが、私はこの用語を全く知らなかったのですが、以下のような定義みたいです。

「ある経済活動が第三者あるいは社会全体に対して直接的あるいは間接的に悪影響を与えるとき、そのうち発生者が負担していない部分を何らかの方法で計測して集計した額を社会的費用と呼んでいる。」

 従来の社会的費用は「ホフマン方式」と呼ばれる方法が主流なのですが、これについて異を唱え、別の集計方法を提示しているところに本書の独自性があると思います。

 「ホフマン方式」を簡単に説明すると、例えばある人が交通事故で命を落としたとして、その人が命を失わなかった場合に生涯でどれくらいの所得を稼ぐことができたかをもって損失額をはじき出す手法です。この場合、無職の方が命を落としたケースを計算すると、極端な言い方をすると損失額はゼロと結論されることもあり得ます。著者はその非人間性を批判します。

 そして議論は「ホフマン方式」が前提としている新古典派の理論への批判と移っていきます。
 この「新古典派」の理論はいろいろな特徴はありますが、要するに人間を生産及び消費のイチ要素と捉え、その活動の経済的価値(つまり金額)を市場の評価と合わせて算出する、といった点が大きいとうけとりました。

 著者はこのような新古典派の考え方を批判します。自動車の生じる騒音や公害は、社会的弱者がより多くの弊害を被っていると考えられますが(金持ちが多く住むところに幹線道路は通さないし、金持ちなら住居を変えたりリフォームすることで対策を講じることができます)、彼らの生み出す経済的価値は相対的に低いため、従って社会的費用も低くなるためです。
 この辺の新古典派の理論特徴の説明や、その欠陥を分析している個所はとても面白いし、とても勉強になります。

 そのうえで著者は、人や社会に被害を与えない道路の要件を定義して、そのような道路を作ったり、既存の道路をそれに改修するための費用を見積り、これを自動車利用者に負担させる方法を提案します。
 この費用はなかなかの額になると想定されるのですが、これにより自動車の最適数が維持され、同時に人や社会において好ましい都市構造を構築できるという効果が説明されます。これも一種の持続可能な社会といえるのでしょう。


 本書は経済学の基本知識(すくなくともミクロ経済の知識)がないと少々読むのに苦労します。私は経済学の入門書(※)で経済学の知識を補いながら本書を読みました

(※)『入門 経済学』(伊藤元重/日本評論社)
  本書は主な経済理論を網羅しており、かつ内容も平易なのでおススメです。

 しかしながら、著者の新古典派への反駁はなかなか読みごたえがあります(これに対する個人的な反論もいろいろあったわけですが)。
 自動車の社会的費用という課題と対策に関する様々な考え方・捉え方に触れられ、同時に経済学のお勉強もできる良書だと思います。

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2019年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たしかに、日本の道路は歩行者に配慮在る作りになってはいないが、中国なんかに比べると、運転手が歩行者に配慮しながら走っていることが多いことを鑑みれば、まし、と言えるのではないだろうか。

作者は、一貫して車を「悪」とみなしていたが、経済がここまで発展したのは車のおかげであり、今の生活にはなくてはならないものである以上、車が優先されてもしかたがないことなのではないかなぁ。と。

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2012年05月30日

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