【感想・ネタバレ】柔らかな頬 上のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『ピクニック・アット・ハンギングロック』を読みたいなーなんて思っていたら、「そういえば、『OUT』を読もうとした時、『柔らかな頬』とどっちを読むか迷ったんだけど、あれ、確か失踪モノだったっけ」と思い出したのがきっかけ。

そんな“代わりに”読んだ本だったんですけど、これ(上巻)はよかった。
何がいいって、主要登場人物のカスミ、石山、道弘、典子、どれにも共感できちゃったのがよかったんでしょうね。
ホントそれぞれ、「あー、わかる…」って感じ。

といっても実際のところ、カスミはわからないんだろうなぁー(ていうか、実際に会ったらお互い大っ嫌い!ってタイプだと思うw)。
ただ、“ここ(今)ではないどこかへ”という思いや渇望が自分の中にもあるのは間違いないだろう(ていうか、ない人はいないかw)。
でも、その渇望を衝動として時々抑えられなくなっちゃうとまでなっちゃうとどうなんだろ?
もちろん、時にはそういう“衝動”がないと、人間、生きていてつまんないでしょうけどね(笑)
ただ、あそこまで強い思い込みで自分や周囲を追い込んでいっちゃう人って、「破滅型」としか言いようないんじゃないかと。
ていうか、カスミの場合は自分(や周囲)を破滅させることで新たな“ここ(今)ではないどこか”を得たい、みたいなところがあるのかもしれませんね。
って、思い出してみると、 (周囲には異常に思えちゃう)思い込みの強さで人間関係や自分をおかしくしちゃう人って、結構普通にいましたね。
ていうか、自分自身にもあてはまったりして!?w

“ここ(今)ではないどこかへ”という思いという意味では石山もそうなんでしょう。
ただ、石山の場合は、そもそも“ここ(今)”に少なくとも表面的には不満はないから。カスミや借金で追われる身になるという具体的な何かがないと、自分がその欲望を持っているということに気がつかなかったのかな?
そういう意味で、カスミに出遭うことで、彼女(という新しい世界?)に魅かれていく流れなんかはホント見事に描かれていると思います。
セーターを買って途方に暮れているカスミに出会うシーンとか、日常に疲れたカスミがエレベーターに飛び込んできたシーンとか。
あぁー、そりゃ落ちるわーって感じ(笑)
不倫って、要は“道ならぬ恋”じゃないですか(爆)
恋っていうのは洋の東西を問わず“落ちるもの”なわけで、人間が飛べない以上、そこに恋があったら落ちることしか出来ないんじゃないかと…www
これは、あくまで日々世の汚濁にまみれているオトナの論理として書きますけどw、例えば会社の同僚等日頃見知っていて、お互い好感をもっている男女(既婚者orどちらかが既婚)がいたとして。例えば、その女性その日常に疲れ切っていて、何かでそれが耐え切れなくなり、何かのハプニングでカスミのように男性に飛び込んできたとして、それを倫理を盾に拒否するのってどうなんだろうとも思うんです。
確かに男女の関係でいったら不倫であり不義なんだろうけど、男と女ではなく人と人の関係として見たら、相手を拒否しちゃうのは「冷たい」とも言えるわけです。
いや、別に不倫を肯定しているわけじゃなくってw
ていうか、何より自らの欲望に安直にのっているだけでは幸せや平穏な暮らしをつかめないというのは、下巻でカスミのお母さんのエピソードとして描かれていますよね。
とはいえ、現代は情報というやっかいなものがあるがゆえに、カスミのお母さんのようには生きるのは難しいという面もあるわけです。
他の異性を好きになり、離婚して再婚というのは普通にあることだし。付き合っている異性がいるのに別の異性を好きになることは、もっと普通にあると。
つまり、それはいつ誰の身にも起こっても不思議ではない事なわけです。
そういう誰に身にも起こりうる事を杓子定規(小学校の学級委員会的に?)に正解/不正解にしちゃう傾向が現代の生きづらさの原因の一つになっているんじゃないかと思うんだけどなぁー。

それはともかく、わかるという面で言うと、普通の人にとって一番理解できるのが典子と道弘なんじゃないでしょうか。
いや、石山も本来は典子や道弘と同ように理解しやすいタイプ、つまり、漠然とだけど幸せの雛型を知っていて、かつその雛型がほぼ同じという意味でカスミよりは典子や道弘の側に属していると思うんです。
そう考えると、“ケ(日常)”にウンザリして“ハレ(非日常)”を求めて故郷を捨てたカスミの危うさに石山や道弘が魅かれてしまうというのがわかるし。
逆に、カスミが“ハレ”より“ケ”を好む道弘との生活に次第に疲れていくというのもわかる。
さらに言えば、石山が安定しきった典子に“女”としての魅力(面白味)を感じなくなってしまうのもわかると。

…って、桐野夏生が書いたフィクションにわかるもわからないもないんでしょうけどね(笑)
ただ、この4人の性格や関係性というのは、つくづく「あー、わかる…」と思ってしまうところに迫力を感じちゃうんでしょうね。
支笏湖のあの雰囲気とか、道弘の印刷会社のある神田界隈とか、典子が石山にお金と時計を渡す高田馬場駅のホーム等々、個人的に馴染み深い舞台が次々と出てくることも含めて、やけに情景がリアルに浮かぶ上巻でした。

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2019年02月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あらすじも何も頭に入れないまま読んだので
行間に漂う仄暗い感覚と不倫劇から始まり
娘が行方不明になるという展開に目が離せなくなりました。

両親や周りの人の取り乱し方や諦め方、諦められなさ、接し方
テレビに出たときの世間の反応、善意の第三者や悪意の人の意見に
振り回される様子など、どれもリアルに感じます。

カスミは良いお母さんではないかもしれませんし、
愛情なのか執着なのかもわからなくなりますが
人間は一辺倒ではなく、一面だけで善悪を語れないという
一例であるとも言えます。

感情移入はできないものの、今いる場所から逃げたくて
その道を相手に見つける気持ちはわかる気がします。
その人といるときだけ息ができるというような感覚。

元警察官の内海の存在も、単なる善人ではなく
かと言って悪巧みをしているというのでもなさそうな
人間らしい描き方がリアルです。

どのような解決を見せるのか、そもそも解決できずに終わるのか
下巻が楽しみです。

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2019年02月20日

Posted by ブクログ

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(上下巻の感想)

面倒な田舎に嫌気がさして、実家を捨てるカスミ。
「夢」<「食べていくため」の仕事。
「普通でいい人」との職場結婚。
夫とは違う魅力を持ったクライアントとのW不倫。
「子どもや家庭を捨ててもいい」とお互いに思うくらいに周りが見えなくなっている2人。
それに気付いているお互いの家族。
そんなタイミングで失踪してしまうカスミの長女。
罪悪感におそわれ、狂ったように探し続けるカスミ。
長女のことしか見えていない母を傍観する次女。
離婚。
死を目前とした元刑事との長女捜索。
家族との再会。
死。

至る場面でカスミはどうしようもない人間だなって思ったけど、
その素質は誰にでもあるような気もする。
それをやるかやらないかってだけで。

読んでいてつらかったのが、2つ。

①全てを見抜いてしまったカスミの長女が、
もう私はこの世からいなくなってもいい、誰かに殺されてもいい、とまで思ってしまったところ。

②長女失踪後、長女の捜索に全てをかける母と暮らす次女の
全てを悟って諦めてしまっているところ。

桐野夏生さんの作品はどれも、
女性のエグさみたいなところを丁寧に丁寧に描いているので、
結構しんどいけど、
やめられないおもしろさがあります。

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2017年09月19日

Posted by ブクログ

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(上下巻共通)
世評ほどの大絶賛はできませんが、直木賞受賞作だけあって面白かったです。文体もストーリーも重厚な、さすがと言うべき骨太の作品でした。

ただ、主人公・カスミの性的な魅力が話を動かすキーになっているのですが、その魅力が設定倒れというか、説得力を欠いていたように感じられたのは残念です。それが話の流れに若干の強引さを生じさせていた面も否めず。
内海の登場シーンでも「おいおいこいつと主人公が男女の関係に…なんて安い展開にはしてくれるなよ」と思っていたのに割とあっさり現実になってしまいました。

謎解きでなくヒューマンドラマに重きを置いた展開は見事だったのですが、それがやりたかったならあの最終章は完全な蛇足に思えます。

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2017年02月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3.8
高校卒業を機に、故郷・北海道と両親を捨て東京に出てきたカスミ、就職先の経営者・森脇道弘と結婚し二児を授かるが、
仕事の受注先のデザイナー・石山と不倫の仲になる。石山は二人の逢瀬の為に別荘を購入するが、そこは奇しくもカスミの故郷の隣の村だった。二家族での休暇という大胆な計画を実行し禁断の夜を過ごすが、翌朝、カスミの長女・有香が忽然と姿を消す
狂ったように有香を探すカスミ、大きく歯車が狂い出し、人も環境も全てのものが変化して行く。

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2016年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶり桐野さんの本。
上下巻の長編小説。
とっても重く濃い内容になってます。

主人公のカスミの気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
自分もカスミと同じ立場だったら、きっと同じことを考え、同じように行動すると思う。
でも、反対にカスミの夫の言ってる言葉も痛いほど分かる。
でも、どっちの意見も取ることはできない歯痒さ。読んでて可哀想になり、胸が締め付けられる思いです。

それに加えて、末期の癌に侵されてる内海の素っ気なさが、またこの小説をズシンと重くしてる。

この後、下巻でどう展開するのか楽しみです。

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2015年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上下巻読破。
ぐいぐい引き込まれて読み続けたけど、下巻に入って複数の登場人物の視点(想像?)が入ってきて少々混乱。

推理小説だと思って読んでいたので、最後に犯人が曖昧なまま終わってしまったのがモヤモヤしました。

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2016年07月13日

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