あらすじ
国が推進する電子マネー。企業が覇権争いを繰り広げるキャッシュレスサービス。近年世間を騒がせた仮想通貨。浸透し始めたブロックチェーン。2019年、フィンテックという言葉のもとに、あらゆる場面の根幹にある「お金」のあり方が変わり始めた。インターネットと社会の関係を長年研究してきた著者は、この先「貨幣経済が衰退する可能性は高く、その未来にニューエコノミーが立ち上がる」と主張する。そこでは従来の貨幣文化のみならず、人類が構築してきた専門性や労働、さらに国家までも解体される対象になりうるという。お金が消えるのと同時に消滅する職業や学問とは? 「お金」が消滅した先でも変わらず価値を持つものとは? その先で私たちは何を歓びに生きるのか? この本を手に、混沌たる世界を進め!
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Posted by ブクログ
単純なキャッシュレスや、デジタル通貨という話ではない。
「お金そのものが消える」という話。
これは、2014年発行の「エクサスケールの衝撃」(齊藤元章:著)や2016年発行の「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」(著:井上智洋)で予言されていたことだ。
基本的には当時から主旨は変わっていない。
変っていないということは、確実にそちらの未来に近づいているということとも理解できる。
本当に未来はお金が消滅するのだろうか?
今現在の問題点は、エネルギーを生み出すのに、どうしてもお金が必要ということ。
この本での理屈は、エネルギーコストが限りなくゼロになると、お金の必要性がなくなってしまう、ということだ。
ここまで生活に浸透したお金が、おいそれと消えるとは、感覚的にどうしても思えない。
しかし、未来が今の社会とは相当に異なる状態になるだろうことは想像できる。
まずキャッシュレス化は進む。
これは言い換えれば「デジタル化」だ。
「01」というビットになった瞬間に、元がお金なのか何なのかは、最早関係がないと言える。
すると「日本円」であることの意味が完全に薄れるだろう。
これらによって「お金の統制は国家の税収のため」という基本概念が崩れていく。
国家が成り立たなくなり、デジタル上の仮想国家で、地球人全員が一つの通貨と一つの国家で成り立つのだろうか?
地球国民の生活を豊かにするためのインフラは誰が計画して作るのだろう。
「誰が?」は不明としても、「どうやって?」はエネルギーコストがゼロになれば大きな問題にはならない。
そもそもエネルギーがコストゼロで生み出せれば、理屈上は食料が無料となるのだ。
もちろん加工費も流通費も、すべてはエネルギーがゼロになれば、かからなくなってしまうだろう。
食べることに困らないのだから、賃金を得るための労働という意味はなくなってしまう。
人はヒマになり、学術や芸術を探求するようになるだろう。
人によっては、他人のためにボランティアなどを行う人も出るだろう。
そもそも、富の格差という考えは薄れる訳だから、社会的な格差を埋めるための人助けになるだろう。
そういう意味で、好んで人のためにインフラ構築も行う人もいるだろう。
しかしそこに「責任」を伴わせることはどうするのか?
「水道」など、生命に直結するくらい重要なインフラを、「人の善意」だけに頼って運営するのはどう考えても無理がある。
そんな事を色々と考えてしまう。
まだまだ想像できないことが多いが、今記載した未来生活の出来事のいくつかは、既に検討の俎上に上がっていることは確かだ。
少なくとも2016年に発行された話から、大きな流れはズレていない。未来は「お金の無い世界」に確実に向かっている。
(2019/12/15)