あらすじ
政府の過剰に新自由主義的な政策により、すべての世代が競争に駆り立てられている「超格差社会」韓国。その現状を徹底ルポ!
第一章 過酷な受験競争と大峙洞キッズ
第二章 厳しさを増す若者就職事情
第三章 職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代
第四章 いくつになっても引退できない老人たち
第五章 分断を深める韓国社会
◎子供
小学5年で高校1年の数学を先行学習、
1日に2、3軒の塾を回る。
幸福指数は、OECDの中で最下位クラス。
◎青年
文系の就職率56%。
厳しい経済状況のもと、
人生の全てをあきらめ「N放世代」と呼ばれる。
◎中年
子供の教育費とリストラで、
中年破綻のリスクに晒される。
平均退職年齢は男53歳、女48歳。
◎高齢者
社会保障が脆弱で、老人貧困率45%以上。
平均引退年齢の73歳まで、
退職後、20年も非正規で働き続ける。
政権が政策を誤れば、これは世界中のどこの国でも起こりうる。
新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かもしれない!
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Posted by ブクログ
韓国に関する本、いままで一度も読んだことがない。文学も読んだことがない。人生で唯一接点があったのは海外で出会った韓国人。
大学生の時に語学留学先で出会ったカップルが自分たちが付き合ってること、つまり暗に婚前交渉があることということは親には絶対に言うことができない、と話していたのが、30年でも男女の付き合いはかなり自由な社会(日本)から来た私には衝撃だった。20歳くらいだったから、韓国はお隣の国でしょ?みたいに単純に文化は近いと思ってたのだ。あの時もっと韓国の社会についていろいろ聞いておけばよかった。
と30年前の衝撃を思い出したのだが、この本もかなり衝撃だった。K-popや韓流ドラマが席巻していて、実態については考えたこともなかったのだ。実は全世代にわたって過酷な競争が強いられる無限競争社会。映画「パラサイト」って誇張じゃなかったんだ・・・と思った。
新造語がいろいろ紹介されていたが、どれも苦しい現実を揶揄するようなもので(もちろんほかにも楽しい造語があるのかもしれないが)、切ないなあと思った。
私は日本語の講師なのだが、前に教えていた生徒が韓国のインター校で働くイギリス人で、その人から、韓国では子供と母親を学業のために単身赴任(?)させる話を聞いていたけど、この本で父親は「雁パパ」っていうのを知った。本当に一般的なんだと驚いた。
社会での競争が異次元レベル。自分のスペックについて常に考えないといけないなんて(しかも20歳から60歳まで、40年間も・・・)。スペックを上げるために整形までしないといけないなんて。
老人も死ぬまで働かないといけないなんて、発展途上国よりも悪いかもしれない。家族の絆が強い社会では家族は助け合うけど、それさえもできないほど子供は勉強、大人は仕事、老人も仕事(生活)をかけて車輪を回し続けないといけない。こんなふうに生きていくのってどれだけ大変なのか想像もできない。
出生率が世界でも最低なのも理解できる。
作者は数字のデータと共にインタビューなども交えて臨場感のある筆運びで書き切ったと思う。あとがきに「イエス・クリストに感謝」みたいなことが書いてあって、クリスチャン人口の多い韓国らしいなと思った。どこまでも日本とは違う国なのであった。
こんなに競争が激しいから、信仰に生きる人も多いのかもしれない・・・。
Posted by ブクログ
この一冊で韓国国内の社会問題が大まかに分かります。韓国特有の問題もあったり、日本と似たようなものもあったり。K-POPや韓国映画・ドラマなどのメディアカルチャーから韓国に関心を持ち始めた人にもおすすめです。
Posted by ブクログ
韓国社会の最大の問題は二極分化。IMF危機以降広がった。
N放世代=恋愛、結婚、出産だけでなくさまざまなものを諦めざるを得ない世代、の意味。
大学受験の準備は小5から。小5に高校受験コースを提供する塾がある。
小学校では放課後授業で1年生から英語を教える。
小学校で生存水泳が始まると、そのための塾ができた。
アメリカの大学へ進むため、SAT塾に通う。SATはアメリカでは年7回、海外では6回行われている。
塾の人気講師は高額収入を稼ぐ。100億ウォンを超えるといわれている。
毎年、教育政策が変化し複雑になる。そのため、入試代理母という職業もあって、学習プランを組んでくれる。お金がある家庭ほど有利になる。
大学修学能力試験は一大イベント。役所は出勤時間が遅くなる。白バイが先導する。飛行機の離着陸も禁止。
総合型選抜が大きな割合を占める。ボランティアの点数のため海外ボランティアが流行した。サークルを立ち上げると点数が高いので、そのためのコンサル塾もできた。
IMF改革による競争と効率、市場原理に立った教育政策。課外教育の抑制、機会均等を図っているが、経済力による教育格差は大きくなっている。
若者の失業率の拡大で、仮想通貨に投資して一攫千金を夢見る若者が増えた=ビットコインゾンビ。
人文系就職率は56%。実感はもっと低い。就職のためのインターンシップで無給で働いている。
著書があると就職に有利。自費出版塾も生まれた。
公務員試験の倍率が高い。高卒用の枠に大学生が殺到して高卒者の雇用を奪う。
韓国企業の0.1%の大企業が経済の半分を独占している。中小企業へは就職したくない。
スプーン階級論=銀のスプーンを咥えて生まれる、の英語から。
就活用に男性も整形する。
中年になるとリストラの恐怖におびえる。大企業の役員になっても、競争が続いて、50代半ばで半数がいなくなる。ソウルの平均退職年齢は男53歳、女性48歳。再就職率は53%。
IMF危機の経験で、自己啓発にのめり込む。サラデント=サラリーマンとスチューデント。
自営業ではチキン店が人気。毎年6800店が開業、8600店が廃業。自営業者の割合は25%、日本の2倍、アメリカの4倍。ひとり当たりのGDPが低いほど自営業者の比率が高くなる。
再就職が難しい。資本主義が速い速度で導入されたため、企業化が遅れた分野に自営業者が進出した。雇用に貢献する大企業が少ない。アメリカや日本の数分の一。大企業の雇用は12%、日本やアメリカは半分程度。
最低賃金の引き上げで、アルバイトを雇えない。理想主義的な労働政策が裏目に出た。
留学する子どものために送金する雁パパ。1万人以上いる。
IT先進国になったことで高齢者が取り残された。高齢化社会のデジタル格差が激しい。タプコル公園にたむろする高齢者。
「タダ」ウーバーのようなサービス。レンタカーでも営業できる。
老人貧困率46%.OECD平均は12.6 %。自殺率もダントツ。
韓国社会は、老人嫌悪現象画起きている。急速に高齢化する未来像が老人を否定している。社会全体が高齢者を否定的に見ている。
文在寅政権が、最低賃金を1万ウォンにするという公約のため、2年間で3割近く引き上げたことが命取り担っている。急速な変化のため廃業が増えた。人件費が高騰、エスケープコリアが生まれた。
財閥改革が功を奏せず、中小企業が成長しない。