あらすじ
500円のワインより1万円のワインは、ほんとうに20倍もおいしいのか?ロマネコンティ グラン・クリュと格安ワインの差を生み出すのは、品種か? 製法か? 醸造家か? 歴史か? あるいは国家か?高級ワインを高級たらしめているのは、ただ「美味しさ」だけではない。特定の産地、特定の生産者のワインだからこそ高く売れるのである。産地名、生産者名、ヴィンテージ、ぶどうの品種名……これらの情報が、ブランドをブランドたらしめているとも言える。とりわけワイン王国フランスにて繰り広げられた、ブランドを守るための数百年にわたる戦いと、そこから生み出された法と制度すなわち「ワイン法」について、第一人者が語り尽くす!1855年格付け、1889年グリフ法、そしてEU法。苛烈な競争、疫病と害虫、税と規制などをめぐる生産者たちの戦いは、AOC(原産地呼称制度)などのブランドを守る法と制度へと結実した。そしてAOCは、GI(地理的表示)として世界に広がり、いまや日本でもヨーロッパのワイン法は大きな意味を持つ。本書で語られることは、わたしたちの生活、ビジネスにも直結する大きな問題となっている。ワインを愛する人のみならず、人々の生活が動かす歴史に興味のある人、世界の食を動かす制度はいかなるものかを知りたい人、いずれの読者にも、驚きと発見をもたらす、無二の解説書!【本書の内容】プロローグ―ワイン法はなぜ生まれ、何を守るのか/第1章 「本物」を守る戦い―原産地呼称制度の萌芽 1 フランス革命とワインの自由化 2 黄金時代の到来 3 「本物のワイン」を守る戦い/第2章 「産地」を守る戦い 1 不正ワインとの戦い 2 混迷する「産地」画定 3 原産地呼称制度の誕生 4 「コントロール」される原産地呼称へ/第3章 生き残りをかけた欧州の戦い 1 欧州統合下のワイン政策 2 ワイン共通市場制度の発足 3 本格化する生産管理/第4章 新たなプレーヤーとの戦い―畑=テロワールの思想と品種=セパージュの思想 1 新世界の「発見」 2 悩ましい新世界/第5章 「危機」から新時代へ―欧州産ワインの戦い 1 一九九九年のEUワイン改革 2 抜本的な改革をめざして―二〇〇八年の改革 3 二〇〇八年の改革は成功したか? コラム 補糖禁止のねらい コラム EUワイン法におけるラベル記載事項 コラム ボトルに関するEU法の規制 4 新時代のワイン法へ 5 ワイン法と日本
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Posted by ブクログ
ワインの地理的表示(AOP,DOCG,qba,docなど)にどういう意味があるんだろうかとか、ないワインと何が違うのだろうか、その歴史的経緯を学べる本。
他の書籍に詳しいのかもしれないが、世界的にフランスが主導的な役割を担ってきたためフランス目線。
・国内のテロワールが形成されるまでのいさかい
・輸入ワイン、模造ワイン、格安ワインの戦い
・原産地の決めから品質要件の決めに至る経緯
・新世界ワインの躍進に至る経緯
などなど、見所多数。
Posted by ブクログ
<目次>
プロローグ
第1章本物を守る戦い
第2章産地を守る戦い
第3章生き残りをかけた欧州の闘い
第4章新たなプレーヤーとの闘い
第5章危機から新時代へ
丸善で、リコメンドのコーナーにあって購入したもの。
本を開くとむつかしそうなイメージを持ったが、
実は文章は平遥で読みやすかった。
フランスのワインの法律の歴史はがワインを作ってきた
Posted by ブクログ
「ブランドとは制度である。」
本書の言いたいことはまさにこの言葉に集約しているといって良いだろう。
筆者のお題は次の通りである。
「500円のワインと1万円のワインは、ほんとうに20倍もおいしいのか?」
「ロマネコンティ グラン・クリュと格安ワインの差を生み出すのは- 種か? 製法か? 醸造家か? 歴史か? あるいは国家か?」
ワインとは不思議な飲み物である。
飲めばおいしい飲み物には違いはないのだが、本当に「飲み物」でいいのかと言われると、こと高級ワインにいたっては投資の対象とか貴金属の類といっても過言ではない。
このように「ワイン」に作られたブランドの源泉は「制度」にあるというが筆者の回答である。
ワインに対する制度構築の歴史は新しいようで実は割と年季が入っている。
評判の高いワイン、銘醸ワインというのは古くから存在したが、これにあやかりたいと思う模造ワイン業者もまた古くから存在し、本当に名声を得ているワイン製造者を悩ませてきていた。
また、フランスであればボルドーとかブルゴーニュとかシャンパーニュと言った古くから名声を勝ち得ている生産地に対し、これにあやかり勝手にその土地の名を名乗るワイン業者も少なからず存在していた。
こうした品質面での不確かさを整理し、ワインの品質を保証し秩序を与えたものが「ワイン法」とも言うべき一連の制度であったのである。
しかし、この道のりは様々な既得権益やしがらみの抵抗に遭い、なかなかスムーズにことは進まなかったようである。
19世紀から20世紀にかけて、品質の確定を行うべく原産地呼称制度が産み出され、たびたび改定を重ねながら定着してきたが、当初はそれから外されることになる生産地-本書でたびたび登場するラングドックとか-の努力は涙ぐましいものであった。
原産地呼称制度は、品種や生産地だけでなく製法や細かい生産区画、ラベル表示内容にいたるまで、こと細かに指定されていて、これをクリアするにはなかなかのハードルとなっている。
だが、制度は見直されながらも精錬化し、生産者もこれに向けて品質面で磨きをかけることにより、粗悪なワインは淘汰され、今日われわれは一定の品質を担保されたおいしい(!)ワインを飲めるという多大な恩恵を受けている。
さらにワインは産業である。
主要な産業となっている国にとっては需給バランスや輸入ワイン対策も頭の痛いところである。
需給バランスの崩れ、とくに過剰生産による価格の大幅下落は国も避けたいところであり、生産調整はたびたび行われてきた。
現在でも、ヨーロッパではEUとして各国の生産調整を行うべく現在も調整が行われているとのことである。
また、有名な1976年の「パリ試飲会」でのカリフォルニアワイン勝利以降、フランスなど古くからのワイン大国であっても品質面での優位性はかなり揺らいでいるのに加え、いわゆる第三世界(南米とか南アとかオーストラリアとか)のワイン新興国が打ち出す、原産地呼称という品質の厳格化でなく国際品種を全面に出すヴァラエタルワインの商法に押される傾向が顕著化していて、ワインの品質課題に一石を投じている。
フランスなど古くからのワイン大国では、こうしたテロワール(土地)とセパージュ(品種)を巡る主眼点の違いを放置せずに融合するという考え方も出てきており、第三世界の台頭に指を加えるだけでなく、ラフィットやムートンといったロスチャイルドやLVMHなどは第三世界の有望な生産者と結びつくことで生き残りをかけている。
さらにイタリアのスーパータスカンをはじめ、あえて原産地呼称制度から外れることで大きな名声を獲得したワインもある。
産業として制度内でのバランス調整だけでなく、いまや制度外での動きも活発になってきて、「ワインの品質」も新たな局面を迎えている。
いま日本においてもEUとのEPA締結を前提とし、EU流(フランス流)の「原産地呼称制度」が導入され、品質面での担保が消費者にわかりやすくなりつつある。(価格はまだ高いけど)
結局、ヨーロッパは今度は「品質保証」を各国へ輸出することで自国の優位性を保とうとしているのだろうか。まさに「ブランド」を作るとはどういうことか知っているからに違いない。
ワインとは不思議な飲み物である。
自分は30年来のワインファンで毎晩ワインのお世話になっている者であるが(ちなみに私の身体からはワインの芳醇な香りがするらしい。(笑))、この30年をとってみてもワイン価格の上昇は半端ない。
まあ品質も上がっているのであるが、それだけでなくブランドイメージの方が品質の何倍も上がっているのではないかと思われる。
10年、20年前に買って現在ネットの時価で4~5倍となっているワインも珍しくない。
いま自宅に時価で20万円とか30万円のワインがごろごろしていて、こんなワインもう開けられないなあ・・・。(売れ!というどこからかの圧力も半端ない・・・)