あらすじ
日本の近代建築が直面した最初の難題は「脱ぐか否か」だった。一八五七年、米国総領事ハリスは江戸城登城を許される。土足のハリスを迎えたのは畳に敷かれた錦の布と、その上で草履を履いた将軍家定。以降、公的な場は「脱がない(土足)」が原則となる――。「和」の建築は「洋」をどう受け入れてきたか。銀座煉瓦街計画、国産大理石競争、奇妙でアヤシイ洋館群、日本に溺れた英国人教授等、建築探偵・藤森教授が語る全68話。
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Posted by ブクログ
すごく面白かったが意外と評価が低い
藤森さんの研究をさっくり面白おかしく教えてもらえるよい本だと思ったが
江戸末期から日本がどのように世界の建築を取り入れたか
土足をどうする?
接客空間の和洋併置
イギリスから西回りで日本にたどり着いた下見板コロニアル建築と東回りでたどり着いたヴェランダコロニアル建築
異人館の平面が正方形なのはなぜか
鎧戸が廃れたのはなぜか
コンドルの鹿鳴館、国立博物館がインドイスラムスタイルだったのはなぜか
コンドルの4人の弟子
これを読んでからだと藤森先生の本が理解しやすい
Posted by ブクログ
とても読みやすい文章で、近代建築の流れが語られる。
コレラ菌対策で下水が発展したこと、金沢尾山神社の印象的な神門の背景、コンドルが円朝の落語を口演していたことなど、知らなかったことがわんさか出てきて大変楽しめた。ハリスが江戸城にきたときには当然靴なんか脱いでたと思っていたので、このときのハリスと幕府双方の対応にはびっくり。
Posted by ブクログ
藤森さんといえば、茶室にタンポポハウスやニラハウス。
本なら『日本の近代建築』とか、『日本建築集中講義』を読んだことがある。
だから、この人の本が書店に出ていると、つい手に取ってしまう。
買った後、岩波新書の本ともしかして内容的にかなり重なっているのでは、と不安になった。
たしかに、後半は少しそうかもしれない。
が、前半は「そもそも」話で、かなり面白い。
例えば、上下水道や防火の問題に、明治初期の行政がどう取り組んだか、スリッパという不思議な履物がいつ、どのように生まれていくか、洋館が建つ中で、新しい石材に対する職人の混乱…などなど。
やっぱり、新しい文化が入ってくる時期は面白い。
『日本の近代建築』と比べ、ざっくばらんな文体で書かれているし、いわゆる小ネタがまた面白い。
例えば、東京駅の駅舎に御影石を採用した際、東京の石工はその硬さと、加工しなければならない量の多さに並行し、反乱を起こした、とか。
その東京駅、日銀本店、そして本人の急逝で実現はしなかったけれど国会議事堂の設計を担当した辰野金吾は、実は在学中、先生のコンドルからの評価はむしろ低かった、とか。
さて、本書の著者表記に、藤森先生だけでなく、「ダイワハウス工業総合技術研究所」も記載されている。
研究所と組んで書かれた文章であるようだが、どんな風に書かれたのだろう?
「中の人」の働きは何なのか?
巻末の既刊書案内によると、シリーズ化されたもののようだ。
・平尾俊郎さんとの『改築上手』
・永江朗さんとの『いい家は「細部」で決まる』
・荒田雅之さんとの『段取りの”段”はどこの”段”?』
機会があったら、読んでみたい。
Posted by ブクログ
日本の開国から明治時代の近代建築についていろいろな角度から面白い解説をしてくれる。藤森先生ならではの軽快でユーモアのある文章が楽しい。一つ一つのテーマが短くて読みやすい。
Posted by ブクログ
日本の開国期(江戸末期)から、皆が「近代建築」と聴いて真っ先に思い浮かべるコンドルや辰野の建築に至るまでの、日本の建築史を楽しめる一冊。
ページの分量的に、コンドルや辰野の辺りは最後の「第八講」にちょろっと纏めているだけで、メインはそこに至るまでの長崎の居留地に建てられた洋館、コロニアル様式の建物や銀座煉瓦街、上下水道の整備に、日本各地に広がった擬洋風建築の成り立ちなど、まさに「そもそも」の所の話が多いので面白かったですね。