あらすじ
発酵学者の小泉武夫さんは、日本一、いやおそらく世界一「くさい食べもの」を味わいつくしてきた経験をもつ、稀有な人である。「くさい食べもの」とは、発酵食品のように、私たちの先祖が長い年月を経て生み出した究極のスーパーフードも数多く含む。著者は「くささ」とその食のもつ魅力をできるだけリアルに伝えるべく、全ての食べものに「くさい度数」を5つの星でランク付けし、あらゆる情熱と実体験とを注ぎこんで本書をまとめ上げた。「発酵仮面」との異名も持つ著者の集大成とも言える作品。読んで面白く、読んでためになる一冊。ただし「鼻に栓をして読んでください」。
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Posted by ブクログ
読書録「くさい食べもの大全」5
著者 小泉武夫
出版 東京堂出版
p64より引用
“発酵中の糠みそには、1グラム(親指の爪に
乗るぐらいの量)中に数億の微生物が活発に
活動しているが、彼らはフグの毒(テトロド
トキシン)が大好物だから、貪り食って分解
し、アンモニアと水と炭酸ガスに変えていく。
これで毒がきれいに消えるのだ。”
目次から抜粋引用
“魚類
肉類
野菜・果物
酒類
チーズ”
農学博士で発酵の専門家である著者による、
とにかく匂いの強い食べものについてまとめ
た一冊。
魚や肉などの動物性のものから酒や漬物な
ど植物性のものまで、これまでの著者の中で
紹介されてきた食べ物の中から選びぬかれて
書かれています。
上記の引用は、フグの卵巣の糠漬けについ
て書かれた項での一節。
人のような大きな動物を、ほんの数ミリグラ
ムで死に至らしめる猛毒を、モリモリと食べ
て栄養にするというのですから、微生物とい
うのは何とも凄いものです。しかし、昔の人
は、そこまでしてフグの卵を食べたかったの
でしょうか?フグの骨は、縄文時代の遺跡か
らも出てくるそうですので、実に長い年月を
かけて食べ方を工夫してきたのかも知れませ
んね。
参考文献を見ると、全ての物が著者の作品
か共同執筆となっています。著者の食に対す
る長年の探求の、クサイ食べものに関する
集大成だと思います。
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Posted by ブクログ
農学博士であり自らの事を「発酵仮面」と呼ぶ小泉武夫先生の著書。
もう長いこと読書を趣味としているが数年に一度、最初の2~3ページで心をワシづかみにされる作品に出合うことがある、本作はまさにそんな一冊だ。
冒頭で「くさいものが好きな人の方が人間力がある」と豪語する先生が、くさい食べ物を一挙に紹介するタイトルそのまんまの非常に潔い内容である。
魚類、肉類、虫類(?)など10種類のカテゴリーごとに、150アイテム以上のくさい食べ物を紹介しているのだが、その匂いの表現がどれも素晴らしい。一例をあげるなら、
いしる 「肉感的というか、ちょっと猥褻な」
タクアン漬け 「円熟した色香漂う熟女」
タガメ醤油 「耽美で怪しい香り」
ドリアン 「神秘の芳香をもったお姫様」
くさや 「枕にして寝たい」 などなど…
ただ単に食べものを紹介するだけではなく、その食材の歴史や調理方法、実際に食したときのエピソードやその時食べた量までも事細かく紹介していて、くさいものに対する執着心というか深い畏敬の念が十分に感じられた。
いつかは先生のように世界中のくさいものを食べ歩きしてみたい。いや、したくない…