あらすじ
南米のとある小国。副大統領邸では、日本企業の社長ホソカワの誕生パーティが開かれていた。特別ゲストの世界的オペラ歌手ロクサーヌが歌い終えた瞬間、武装したゲリラがなだれ込んでくる。副大統領邸は反政府組織に占拠されてしまったのだ。膠着状態が続くうち、ゲリラと人質の間には奇妙な絆が生まれ、彼らはその状況に幸せすら感じるようになる……極限状態で生まれる心の交流を描く傑作。映画『ベル・カント』原作本!
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Posted by ブクログ
映画観賞後積読。1996年に起きた在ペルー日本大使公邸占拠事件を題材にしたフィクション小説。
リマ症候の心理を覗ける一冊。
テロ事件なので、おおよその結末はわかっていたけれど、悲しい事件。
ただ、感じたのは、テロリスト=悪ではなく、育った環境の中での無知な世界観や、家族や仲間を思う気持ちから、反感を持ち行動を起こす。
価値観が違うもの同士が同じ国で同じ立場で生きられないからこそ、このような事が起きるのだなあと思った。
現在アフガニスタンでタリバンが征服してる今、私から見れば悪の組織にしか見えないが、他国から国を占拠され、色んな立場からすると一概には悪とはいえないと感じた。
Posted by ブクログ
予想外の一気読みでした。
在ペルー日本大使公邸人質事件を彷彿とさせる人物配置。
華やかなパーティーにゲリラが踏み込んでからは一転、まず女性を解放するまでの時間が、全体からするとほんの僅かな時なのに、ものすごく長く、密度も濃く、緊張感が漂います。
そして、残った男性陣と、パーティーで歌唱を披露していた有名オペラ歌手ロクサーヌが人質として生活を始めます。
彼女が解放されなかったことは幸か不幸か、音楽という美を人質、ゲリラ部隊双方に与えることに繋がるのでした。
膠着状態が続く中で、人質とゲリラの関係に少しずつ変化が生じます。
ただ、人質が死ぬか、ゲリラが死ぬか(捕まるか)どちらにしても、この話の持つ結末はどちらかしかないとも予想出来て……。
正直、先に結末をチラ見してしまったのでした。
個人的に、推しはやっぱりカルメンです。
ゲリラ部隊の少女が、心に葛藤を抱きながら、言葉を教えて欲しいと、ようやくゲンに伝えられた所から、劇的な変化をする。
彼女ほどの才女が、そしてゲンに「ここで暮らし続けること」を示唆した所からも、この結末を想像すらしていなかったとは思えません。
けれど、それならカルメンやベアトリス、イシュマエルやセサルといった少年少女兵の「解放」に何の意味があったのか。
そんなわけで、エンディングも好きではありません。そ、そこに行き着くのかい!と思わず二回読んでしまった。(カルメンがロクサーヌに擬装しているのかと思って)
美によって感化されていく人々が、結局は法と正義の名の下に、断罪される。
正義であるのにね。
「自分でも理解できないのは、なぜ伴奏者に哀れみを感じるのかということだった。アルフレードの言うように、この男だけが死んだわけではない。自分の周囲では毎日のように、知人の半数が死んでいくような気がする。ただ、その連中はさまざまな方法で命を奪われ、虐殺されていて、それが彼の眠りを妨げているのだが、こちらの男はーー伴奏者はーー静かに死んでいったにすぎない。なぜか、その二つがまったく同じだとは思えない。」