あらすじ
長期にわたって停滞を続ける日本経済。混迷から抜け出せないのはなぜなのか。本書では、その解明を歴史に求め、経済システムを支える日本人の「資本主義の精神」を探究する。強欲な金儲け主義への嫌悪感、ものづくりへの敬意や高品質の追求、個人主義ではなく集団行動の重視など、欧米はもとより、中韓など東アジア諸国とも異なる特質を明らかにする。そのうえで現代日本の経済システム改革への指針を示す。
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Posted by ブクログ
正座して熟読すべき一冊。鎌倉新仏教に端を発する易行化をキーワードに、マックスウェーバーを意識しつつ、日本における資本主義発展の仕組みが語られます。海運・鉄道といったインフラ整備や、特に近年の金融システムにも言及があるのは嬉しいところ。最後に少し出てきますが、同様の文脈で中国とかも考えてみると面白そうです。
Posted by ブクログ
Ⅿ・ウェーバーの「プロ倫」は既に100年前。中国・韓国などアジア諸国の急激な経済発展は、日本だけがその例外でなくなってきた。その社会学を見直しが必要な場面になっているのでは…。この宣言から始まるこの論文は「プロ倫」の向こうを張って新しい定式を打ち立てようとしている壮大な意気込みを感じる。著者は日本型はアジアの儒教とは異なり、鎌倉仏教にその源があり、鎌倉仏教の在家信者でも成仏(易行化)できるという現世社会における求道的職業倫理が、「プロ倫」同様に経済行動への文化的伝統、日本社会の基礎となり、それが江戸時代には日本人の行動規範として定着してたことから、既に日本独自の資本主義経済がかなりの発展段階にあったことを主張している。私たちの想像と異なって決して儒教ではなく仏教がそれを生み出したのであり、中国などの儒教型資本主義とはまた別であることを強調している中で、仏教、儒教、キリスト教(その中でもカトリック、プロテスタント)に分けた分析がⅯ・ウェーバーを意識させ、知的興奮さえ感じさせられる大作だ。英訳も決まっているらしい!タイムリーな本であり、反響が楽しみ。
Posted by ブクログ
よく考えれば、至極当然のことであるが、資本主義にも国ごとの特色がある。日本において、明治の近代化以降の資本主義の進展は事実として受け入れられているが、実はそれ以前にも、資本主義精神が根付いていたということに、目から鱗が落ちた。日本型といったときに、経営活動の基盤として語られる「日本的経営」として特徴づけられている(いた)その内容はさらなる基底として「日本型資本主義」があると考えられるのではないだろうか。今こそ表層的なファッションになりがちの経済・経営の議論をもっとコアなところから考え直す時である。5つ星としたいが、文章の読みにくさと、それ以上に注釈の長さに閉口したということから1点減点です。